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女の子。
杉元が楓を愛おしそうに抱き締め、その額に自分の額をそっと押し当てて「……代わってやりてぇよ、楓」と、消え入りそうな声で呟いていた、その時。
「おーーーいッ!!杉元ォ!シライシ様のお帰りだぜぇッ!!」
ドカーン!と景気よく番屋の戸が蹴り開けられた。
吹き込む雪風と共に転がり込んできたのは、酒の瓶を抱え、鼻を赤くした白石由竹である。
「見てくれよ、村の連中から酒をくす……ゲフッ、譲り受けてきたんだぜ!これで景気よくパァーッと……」
白石の言葉が止まった。
焚き火の薄明かりの中、親の仇を見るような、あるいは人食い熊をも凌駕する殺気を放つ杉元の顔がそこにあったからだ。
「……あ? なんだよ杉元、その顔。……えっ、何。楓ちゃん抱っこしてんの? お熱いねぇ〜、このこのッ!」
白石がニヤニヤしながら指を差した瞬間、杉元の血管がピキリと浮き出た。
1. 杉元の「静かなる怒り」
「……白石。今すぐその口を縫い合わせて、雪の中に埋めてやろうか」
地獄の底から響くような声。杉元は楓を冷やさないよう、そっと毛布で包み直してから、立ち上がることなく白石を睨みつけた。
「楓は今、体調が悪いんだよ。静かにしろって言わなかったか?」
2. 白石の「余計な一言」
「えぇ〜? 体調悪いって、なんだよ。……あぁ、もしかしてアレか? 女の子の『アレ』の日か? だったらこの酒を飲めば血の巡りが良くなって……」
「ぶっ殺すぞ白石ッ!!!」
杉元が枕元にあった薪(まき)を全力で投げつける。白石は間一髪で避けたが、薪は背後の壁に突き刺さった。
「ヒッ……!? 冗談だよ! 冗談だってば! ほら、これ! 薬湯の材料も買ってきたんだよ、マジで!」
3. 結局、世話焼きな男たち
白石が慌てて懐から取り出したのは、村の老婆から「腹痛によく効く」と教わったハーブの束だった。
「……ったく、デリカシーのねぇ野郎だ。……おい、白石。さっさとそのお湯沸かせ。楓が寒がってるだろ」
「へいへい、仰せのままにッ! ったく、杉元は楓ちゃんのことになると余裕がねぇんだから……」
ブツブツ文句を言いながらも、白石は手際よくお湯を沸かし始める。
杉元は再び楓を腕の中に収めると、彼女の耳元で「……うるさくしてごめんな、楓」と、さっきの修羅が嘘のような優しい声で囁いた。