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ep.6 先輩と模擬戦闘と。(前半)
長くなりそうでしたので、前半と後半に分けようと思います。
無事にシアンは退院をし、元の生活が戻ってきた。
「こら!どうして、お菓子の袋をそのままにするんですか!ちゃんと封をしてここにしまってください!あと、もうすぐご飯なんですから食べないでください!夜ご飯食べれなくなりますよ。」
シアンは相変わらずお母さんのように口うるさい。凛都も凛都で面倒くさがりなところは変わっていないようだ。2人は少しばかり気を許せるようになっていた。
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「シアンに会いたい奴がいるってよ。」
今日はオフなのでシアンと凛都は明日花と一緒にカフェにいる。
明日花はオレンジジュースを、凛都はアイスコーヒーを、シアンはクリームソーダを頼む。
「で、シアンに会いたい奴って誰ですか。」
凛都は明日花に問い詰める。
一方、明日花はオレンジジュースをちまちまと飲んでいる。呑気なところは今だに健在なようだ。
「ん?あぁ、鈴代と橘だよ。悪い奴ではないから安心しろ。」
明日花はタバコを取り出して吸おうとする。
「ちょ、明日花さん。ここでタバコはダメですよ。」
シアンは別で頼んだ苺パフェで頬をいっぱいにしながら、明日花を宥める。明日花はシアンに問いかけた。
「シアン、会いたいって先輩がいるけど会ってみるか?悪い奴じゃあないぞ。あの時の、お兄さんとお姉さんだ。」
「あぁ。『あの時の』ですね。もちろんいいですよ。」
シアンは凛都にはわからないような意地悪い言い方をする。凛都はそれを聞いて、少し寂しい気持ちになる。
「おい、あの時にって何だ。また隠し事か?」
凛都がアイスコーヒー啜りながら、むくれている。
「いつか話しますよ。そんなに拗ねなくてもいいですよ。」
またもや、シアンは凛都を子供を見るような目で微笑む。最近、シアンはこの目をすることが本当に増えたと思う。
(どっちが子供だよ...)
と凛都は心の底で思う。
「んじゃ、あいつらに連絡しとく。詳しい日時はまた今度教える。」
今日はそれで一旦解散した。
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2人は保護施設の訓練場で先輩たちを待っていた。すると、糸目で豊満な胸のお姉さんと糸目で美形のお兄さんがこちらに向かってきた。
「わぁ!来てくれてありがとうねぇ。嬉しいわぁ。」
可愛らしい豊満な胸のお姉さん___鈴代穂花は頬に手を当てながら凛都たちに声をかける。そして、穂花がシアンを抱きしめ、その豊満な胸で窒息しそうになっている。
「ほの、やめたげてぇや。えらい苦しがっとーよ、シアン君。」
糸目で美形のお兄さん___橘晴日が穂花を関西弁で嗜める。
「ほんまかんにんなぁ。シアン君。こいつ自分のサイズ分かっとらんねん。」
「まぁ。そんなこと言う?今の時代はセクハラよ?セ・ク・ハ・ラ」
2人は冷ややかな目で睨み合う。仲がいいのか悪いのか。
「まぁ。今回のセクハラは私の寛大な心に免じて水に流してあげるわ。リンちゃんも久しぶりやねぇ。元気にしとった?中学生の頃が懐かしいわぁ。」
穂花は凛都の手をつかみ、ぎゅっと恋人繋ぎをする。それを見たシアンは少し怪訝な目を向ける。凛都は恋人繋ぎを素早く柔らかい手つきで振り払い、穂花に問いかけた。
「久しぶりですね。って、用事って何ですか?それで呼んだんですよね?」
穂花と晴日は目を合わせ、くすくすと笑い合う。
「リン君、せっかちさんはモテへんでぇ。」
晴日が凛都をニヤニヤと笑い、そう揶揄う。
「もぉ。そんなことないよー、ハル。リンちゃんはちょっと愛想が悪いだけよ?」
穂花がフォローになってないフォローを入れる。
うふふ、あはは、と会うといつも話が脱線し、凛都の頭の痛みが最高潮に達する。
「んで、用事って何ですか?話が色々だ脱線しすぎてるんですよ!」
穂花はのほほんと笑い、晴日はケラケラと笑う。
「リンちゃんごめんねぇ。さ、みんなで向こう行こ。」
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「これから、模擬戦闘を始めますぅー!」
ぱちぱちと穂花が拍手をする。
「理由としては、シアン君。あなた死にかけたってね。あなたが不死に等しい身体ってわかっててもこっちは流石に驚くわよ。だからね、盾になる以外にも学んだ方がいいと思うの。」
そう、穂花は穏やかな声ながらも真剣な目つきでシアンを諭す。
「だからね、私とハルvsリンちゃんとシアン君で模擬戦闘を行います。ルールは簡単。それぞれの持ち武器を模した簡易麻酔銃を使って敵チームに当てる。武器によるけど、何発か当たったら身体が痺れて動けなくなるの。敵チーム全員が動けない状態になったら勝ちね。他に何かあるかしら?」
シアンがおずおずと手を挙げる。
「あの、持ち武器がわからないんですが...どうしたらいいですか?」
穂花は考えるポーズをし、思いついたかのようにポンと手を打つ。
「好きなの使いなさい。何でもいいわよ。これがいいって思うのを選べばいいと思うわ。」
シアンはこくりと頷く。
「それじゃあ、各更衣室に移動して、着替えて、所定の位置についてね」
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「凛都さんは穂花さんのようなお姉さんが好きなんですか?」
更衣室でシアンにそう問いかけられ、凛都は危うく咳き込みそうになった。凛都は落ち着き払った声で答える。
「そんなことはない。」
「そんなことはないって。恋人繋ぎされた時、嬉しそうにしてたじゃないですか。」
シアンはそうぷくりとむくれる。凛都はその姿が少し愛らしいと思った。凛都はシアンの頭をくしゃりと撫で、リボルバー型のハンドガンを手に取る。
「シアン。お前はどれにするんだ?」
シアンは悩みに悩んだ結果、半自動型のアサルトライフルを手に取る。
2人は銃を手に、訓練場へと足を運ぶ。
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「これから模擬戦闘を始めます。被験者は所定の位置についてください。」
2人は所定の位置に着き、最終確認を行う。
「それでは両者揃ったようなので、始めます。よーい、始め!」
ピーっとホイッスルが会場に鳴り響き、2人は一斉に駆け出す。
パァン____
どこからか銃弾が飛んでくる。すんでのところで凛都は銃弾を避ける。
「あら、外しちゃったかしら。惜しかったわぁ。」
そう呟いたのは、近くの高台にいる穂花だった。穂花の持ち武器はそう|狙撃銃《スナイパーライフル》だ。
「最近、任務がなくて腕が鈍ってるんじゃないですか?」
凛都は不敵に微笑み、穂花を挑発する。
「リンちゃん。生意気になったものねぇ。そんな防戦だけじゃあ体力が削れていくんじゃなくって?」
パン、パァン____
明日花の放つ弾が凛都を襲う。穂花は意外と脳筋のようで数撃ちゃ当たる戦法をとってくる。しかし、どの弾も緻密に計算されたように精密で正確で凛都には避けるのが精一杯だった。
すると、つまらないのか一緒にいたシアンに標的を変える。
パァン____
一発の銃弾がシアンに飛んでくる。それを凛都が庇おうとすると、穂花の怒声が響く。
「そんなことしてたら、シアン君のためになりません。そんなことさせるために呼んだわけではないのですよ。そこのとこをきちんと理解してください。」
その言葉を聞き、咄嗟にシアンから離れる。
それを見たシアンは銃弾を避けようとするが、髪に掠り、穴があいた。
「初めてにしては上出来なんじゃないの。」
そう微笑んで、どこかへ飛び去ってしまった。
まさかの新キャラですね!
後半に続きますので、しばしばお待ちください!