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#20
--- 数日後の非番 ---
下界の喧騒は相変わらずだが、今日の「アクタ」の面々はどこか緩やかな空気を纏っていた。
「あ、見てザンカ! あのガラクタ、何かのパーツちゃう?」
レイラは弾んだ声で言うなり、当たり前のようにザンカの右腕をぎゅっと抱え込んだ。
「あ?……ただの鉄屑じゃ」
ザンカはぶっきらぼうに毒づくが、腕を振り払うどころか、レイラが転ばないよう自然に歩調を合わせている。
その後ろを歩くルドが、不思議そうに隣のエンジンへ小声で尋ねた。
「……なぁ。あいつら、付き合ってんのか?」
「んー? いや、付き合ってないはずだけどなぁ」
エンジンが後頭部を掻きながら笑った、その時だった。
「「――全くじゃ/や!!」」
一分の狂いもない、完璧なシンクロ。
二人は弾かれたように離れると、レイラは顔を真っ赤にして髪を弄り、ザンカはあさっての方向を向いて鼻を鳴らした。
「な、なしたのさ、ルド! 僕とザンカは、その、掃除屋の仲間だべさ……!」
「ほうじゃ! こいつが勝手にひっついてくるだけじゃ。……変なこと聞きんさんな!」
その必死すぎる様子を、リヨウがニヤニヤと眺めていた。彼女は人差し指を立てると、二人の間に割って入る。
「もー、見てらんない。お互い好きなら、さっさと言っちゃえば楽じゃん?」
「「っ……!?!?」」
心臓が跳ねる音が聞こえてきそうな沈黙。だが、リヨウの舌鋒は止まらない。
「だってさ、レイラ? わざわざザンカと同じ髪型にして、向きまで対にしてセットしてるんでしょ? それってさー、もう『私はザンカの片割れです』って遠回しに告白してるようなもんじゃん。ねー、ザンカもそう思うでしょ?」
リヨウの言葉は、逃げ場のない真実を鋭く射抜いた。
レイラは顔から火が出そうなほど赤くなり、自分の襟足を必死に押さえる。ザンカもまた、耳の先まで真っ赤に染め、握った拳を震わせていた。
「な……っ、これは、その……! セットの仕方が、たまたま、そうなっただけで……!」
「……リヨウ、テメェ……ッ!!」
「あはは! 図星すぎて怖い? 掃除屋の連携もいいけど、恋の連携も進展させなよー」
ケラケラと笑うリヨウの後ろで、ルドだけが「……髪型、確かに逆だな」と今更のように納得している。
レイラは「刻風」の柄をぎゅっと握りしめた。
(……心臓の音が、うるさすぎや。風の音なんて、全然聞こえへんじゃろ……!)
叔父に言われた「完成」が何を指すのか、今はまだ分からない。けれど、隣で同じように茹で上がっているザンカの体温だけが、嫌になるほど鮮明に伝わってきていた。
🔚