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私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
ここなっつ
第3話:遭遇、接近、絶体絶命!?
「ねえここな、ここのパンケーキ、ずっと食べたかったんだよね!」
土曜日。私は学校の親友・りんかと一緒に、原宿のオシャレなカフェに来ていた。
焼き立てのパンケーキを前に目を輝かせるマイを見て、私も「美味しいね!」と笑顔になる。
……が、実はこのカフェ。
JO1とINIの所属事務所からめちゃくちゃ近いのだ。
(大丈夫、今日はお兄ちゃんたち、みんな仕事か練習のはず……)
そう自分に言い聞かせていた、その時だった。
カランカラン、とお店のドアが開く。
入ってきたのは、黒いバケットハットを深く被り、マスクをしたスタイルの良い2人組。……嫌な予感がして視線を向けると、一瞬で背中に冷や汗が流れた。
(嘘でしょ……拓実にぃと京介にぃじゃん!!!)
オーラで一発でわかった。川西拓実と藤牧京介だ。
2人はテイクアウトの列に並びながら、小声でボソボソと話している。
「あ、ねえここな! 見て、あの並んでる人たち、スタイル良くない!? モデルかな……」
りんかが小声で興奮し始めた。心臓が跳ね上がる。
「え、あはは、そうかな? よくある服だよ!」
必死にりんかの視線を逸らそうとした瞬間、京介にぃが店内のこちらに気づいた。マスク越しでも分かるほど、彼の目が「あ」と大きく見開かれる。
そして、隣の拓実にぃの腕を小突いた。拓実にぃもこっちを見て、嬉しそうに目を細める。
(こっち来ちゃダメ!! 手を振らないで!!)
私は目線で必死に「あっち行って」とビームを送る。幸い、2人は察してくれて、小さく親指を立て(グッジョブのポーズ)、コーヒーを受け取ると急いで店を出て行ってくれた。
「ふぅ……」
大きな危機を脱し、心底ホッとして紅茶を一口すすった、その直後。
「すみませーん、ここ、お皿下げちゃって大丈夫ですか?」
聞き覚えのありすぎる、低くてハスキーな超絶イケボが頭上から降ってきた。
「え……?」
顔を上げると、そこには店員の制服(エプロン姿)を着た、池﨑理人が立っていた。
(えええええ!? 理人にぃ!? なんでここにいるの!?)
パニックになる私をよそに、りんかは理人の顔(マスクなし!)を見た瞬間、借りてきた猫のように硬直している。
「あ、はい、大丈夫です……!」
りんかが蚊の鳴くような声で答えると、理人にぃは私に向かって、片目をカシャッとウインクしてみせた。
「ごゆっくりどうぞ、お嬢さん」
そう言って、爽やかに去っていく理人にぃ。
(後でメールしたら『今日からここのカフェでバイトの役作りの撮影なんだよね〜』と呑気な返信が返ってくることになる)。
「ちょっと……ここな……今の店員さん、ヤバない……? 芸能人じゃん、もうINIの理人くんに声そっくりなんだけど……!」
りんかが私の腕を掴んでガタガタ震えている。
「そ、そうだね! 似てる人っているんだねぇ……!」
乾いた笑いしか出ない。一刻も早くこの店を出なければ命が足りない。
「りんか、そろそろ出よっか!」
「うん、お会計しよ……あ、待って、外すごい雨降ってきたよ?」
ガラス窓の外を見ると、いつの間にかゲリラ豪雨のような大雨。
傘を持っていない私たちは足止めを食らってしまった。
「うわぁ、どうしよう……」とりんかが困り果てた、その時。
私のスマホが震えた。
『蓮にぃ:ここな、いま大雨だけど傘持ってる? 近くにいるから車で迎えに行こうか?』
(絶対にダメ!!! 蓮にぃが来たら今度こそ一発でバレる!!!)
『私:大丈夫! 友達と一緒だし、すぐ止みそうだから来ないで!』
と猛スピードで返信を打つ。
しかし、そのわずか3分後。
カフェの前に、スモークガラスの黒い高級ワンボックスカーが静かに停車した。
「あれ、あの車……」
りんかが指差す。
その車の助手席の窓が、ほんの数センチだけウィーンと開いた。
隙間から覗いたのは、綺麗なハイトーンヘアと、圧倒的な美貌の目元。
白岩瑠姫である。
瑠姫にぃは私と目が合うと、ちょいちょい、と「乗れ」と手招きをした。
(瑠姫にぃまで来ちゃったよ……!!!)
「……ここな? あの車の人の髪型、JO1の瑠姫くんにそっくりなんだけど……気のせい、だよね……?」
りんかの目が、いよいよ疑惑の目へと変わっていく。
「あ、あはは! ほら、最近インフルエンサーとかで真似してる人多いじゃん!? ……あ! あの車、私の親戚のおじさんの車だ! 迎えに来てくれたみたい!」
「え? おじさん……?」
「りんかも乗ってく!? ほら、送るよ!!」
私はりんかの手を引っ張り、半ば強制的に車へとダッシュした。
スライドドアが開くと、中には川尻蓮、白岩瑠姫、そしてなぜか後部座席で小さくなっている木村柾哉と佐野雄大の姿が。
「ここな、お疲れ〜!」
「シーーーッ!!!!!(友達いる!!!)」
私が血相を変えて人差し指を口に当てると、お兄ちゃんたちは一瞬で「あ、やべっ」という顔になり、サッと全員がマスクと帽子を深く被り直した。
「初めまして、ここなの友達のりんかです……」
緊張でガチガチのりんかを乗せて、車は走り出す。
バックミラー越しに、蓮にぃが「おじさん」になりきって、わざと低い声で話しかけた。
「あ、どうも〜。ここなの、親戚の……おじさんです。駅まで送るね〜」
「(声が良すぎるおじさんだな……)」と怪訝な顔をするりんか。
後ろの席では、雄大にぃが声を出さないように口を両手で押さえて必死に笑いを堪えており、柾哉にぃがそれを必死にホールドして静止している。
学校の友達にバレるまで、あと残りライフ1。
お兄ちゃんたちの過保護さは嬉しいけれど、私の心臓は毎日、持ちそうにありません――!
(第4話 へ続く)