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情緒の崩落
ぐりさん
僕の名前は栗山大晴。何の変哲もない、全てにおいて可も不可もないような、平凡な中学生だ。日々僕は、少しずつ、少しずつ崩れ落ちる情緒と戦っている。実らないとわかっていても恋をして、そして全然うまくいかなくて、葛藤するばかりだ。ありきたりすぎるかもしれないが、これが僕の日々なのだ。
小学生の頃だったか。片想い中、毎回のように邪魔が入ってきていた。超モテモテでイケメンのライバルとか、そんなんじゃない。友人が不特定多数に好きな人をバラしたりとか、せっかく話してるのに悪気のない親友にその時間を潰されたりとか...辛いことの連続であるが、それでもなお僕は恋を続ける。いや、"続けてしまう"のかもしれない。恋を続けていくうちに、僕の情緒は少しずつ崩れ落ちてくる。すなわち情緒不安定になっていっているのである。そんな状況で誰かに優しくされたり、話を聞いてもらったらどうだろう。一途だったはずの恋が、何股にも広がっていってしまう。そしてまた、情緒が崩れ落ちてくる。その繰り返しだ。苦しみとともに日々を生きていくうちに、さらに苦しくなっていく。四六時中好きな人のことしか考えられなくなる。そんなときに限って邪魔が入る。全然うまく行かなくなってくる。情緒が完全に崩れ落ちる一歩手前まで来てしまう。そこで告白しても、答えは"NO"である。完全に情緒が崩れ落ちる。何も残ってない、すっからかんの人間になってしまう。時の流れに身をまかせて次の恋に向かっていけ?...そんなことが簡単にできたら苦労はしないだろう。こっちは本気で恋してたんだ。情緒も、過去の努力も、全て失った僕に、そんなことはできまい。
そんな僕は、柳下さんという人に恋をしてしまった。おそらく人生4,5回目くらいであろう。しかし、いくら僕でも学習能力がないわけではない。相手を褒めて、自分の評価を上げる。そのことに必死であった。でもやはり、そんなときライバルが現れるのである。しかも今回は、超モテモテイケメンクラスメイト、安田亮人という余計すぎるおまけまで付いてきた。亮人は決して僕の恋を妨害したりはしない。ただ残念なことに、亮人と関わるとやはり、情緒が崩れ落ちてきてしまうのである。彼から感じるのは、劣等感、あるいは悔しさとかだ。もう、僕の情緒は半分以上崩れてしまった。しかし、それだけにとどまらないのが、残念ながら僕の人生なのである。僕のクラスの大馬鹿学級委員松上が、僕が誰が好きかをクラスの十数名にバラしてしまったのである。それだけではなく、悪気はないのであろうが、女子の友達の森山さんが次々と柳下さんの名前を言い始める。おまけに彼女と話し始める始末。どれだけ僕の情緒は崩れ落ちるのであろうか。こんなんじゃ情緒がいくらあっても足りないぞ!"もう頼むからやめてくれ!"そんな僕の思いとは裏腹に、また不幸なことが起こってしまう。
それも、僕が一番恐れていたこと、"学校で会うこと"だ。クラスが変わってからは、普段LINEでしか
話さないような柳下さんの目を、しっかり見つめられるか。答えはもちろん、"NO"だ。もちろん会えたらすごく嬉しいし、"今日はいい日だー!"と思えるようになる。しかし、どれだけ頑張っても、目を合わすことはできない。せっかく会えたんだから目を合わせたい。でも、合わせられない。こんな葛藤を抱いてるうちに、またまた情緒が崩れ落ちる。"一体何回情緒崩れ落ちんだよ!もういやだ!!"そう思ってても、情緒が崩れ落ちてくる。しかし、いくら情緒不安定だからといって、これ以上関わるのをやめてしまったら、もっと辛い展開が待っている。だから、柳下さんを徹底的に褒めたのだ。この時の、"いい感じだったなー"なんていう甘い考えが、フラグだったのかもしれない。
彼女の誕生日まで2週間を切った頃、僕は告白の準備を着々と進めていた。彼女の誕生日に、LINEギフトを添えて告白するのだ。もちろん、今のままの自分じゃ、告白が成功する確率は限りなく0%に近いだろう。だからこそ僕は、彼女をどんどん褒めたのだ。でも結局、学校で不自然なことばっかりしてしまい、彼女からの評価は一向に上がらなかった。それでも僕は諦めない。こういうことは、はっきり言ってもらわないとやめられない性格なのだが、これは果たして吉と凶どっちに転ぶのであろうか。まあ、そんなことも気にせず僕は、彼女からの評価を上げる工夫をしていた。たとえ成功確率が0%であろうと......
告白まで残り1週間もなくなった。その頃僕は、学校で、"栗山が◯月◯日にフラレる"という噂が少しずつ広がり始めていた。次第にその噂は広まり、安田は僕が誰を好いているのか、特定まで始めた。安田は瞬く間に僕が柳下さんが好きなことを見透かしてしまった。なんということだろうか...僕が柳下さんを好いていることは、あっという間もなく広まってしまった。どうして毎回こうなるのであろうか...もはや絶望する気力さえ失ってしまった。情緒などどこかへ消え去ってしまった。次第に自分が壊れ始めてきているのを実感する。不安、劣等感、悔しさ、歯がゆさ...様々な感情とともに、どんどんもがき苦しむようになってきた。"学校行くのが怖い..."そうとさえ思ってしまう自分が嫌だったけど、どうにもできなかった。
覚悟を決めて向かった学校で待っていたのは、バカにしてくる奴らの冷たい視線ではなかった。煽ってるようにも聞こえるが、しかしみんな優しく応援してくれた。僕は何も怖くなくなり、そして、もう一つのことにもう一度覚悟を決めた。すなわち、告白である。LINEでしか告白する勇気がなかったが、それでもありったけの勇気を振り絞った。何も恐れるな。とにかく頑張れ、自分。残り数日、やれること全部やってやる。
告白の日が来てしまった。学校に行くと、いつもと違う雰囲気がそこにはあった。僕が廊下を歩いていると、応援する声や、誰が好きかを聞いてくる声が聞こえてきた。休み時間も、給食中も、ときには授業中でさえ柳下さんのことを考えていた。そして放課後。友人の成山、そして森山さんと会話をした。今日一日のことを振り返ってみる。沢山の友達に、沢山の言葉をもらった。"当たって砕けろ!" "頑張れ栗山!" "まあ頑張りたまえ"......いろんな声が、何故か嬉しかった。ここまで来たら、もう逃げられない。さあ、覚悟を決めるんだ。
家に帰ったら真っ先にLINEを開き、柳下さんにギフトを送信する。40分後くらいに既読がつき、お礼のメッセージが来た。"18:45くらいに話せる?"と質問し、"いいよ"と返事をもらう。塾の前のコンビニに向かい、Wi-Fiを捕まえる。18:45になり、前置きのメッセージを送る。しかし、一向に既読がつかない。もう涙腺崩壊寸前に来てしまった。20分ほど経ったころか。返信遅れを謝るメッセージが届いた。"全然いいよ!"と、平気なふりをする。とにかく返信が来て一安心だ。さあ、いよいよその時が来たぞ。
スマホに文字を打ち込む。ただそれだけなのに、怖い。指が震えてうまく動かせない。必死に文字を打ち込む。やっと打ち終わった。"僕は柳下さんのことが好きです。"この程度の文面しか思いつかなかったが、もうこれで行こう。送信ボタンを押す。既読がつくと同時に、僕はスマホを閉じてしまった。帰ってきた返信は、"ありがとう"そして、"ちょっと考えさせて"というものだった。"いいよ"と送り、自習を始めた。"絶対脈なしだ..."そう思いつつ問題を解き進める。しかしながら、まともに字が書けない。"とにかく、今は勉強に集中しよう。"そう思いながら、シャーペンを走らせた。
1件の返信が帰ってきた。内容を恐る恐る、しかしものすごいスピードで読み始める。内容は、"まずありがとう。今はまだ恋愛とかよくわからないから、友達としていてほしい。"というものであった。僕の中で、なにか大きなものが崩れ落ちた。いつもと同じような結末に、でもやはり悔しさや絶望感、悲しみを抱いた。柳下さんと話し終わってから、安田に柳下さんとのLINEのスクショを送る。"切り替えていこう"と返ってきた。味方がいることに感動する。でもやはり、心の穴は埋まらない。泣きそうになるのをただただ抑えることしか、自分にはできなかった。悔しい。悲しい。虚しい。嫌だ。こんなの嘘だ!感情が束になって襲いかかってくる。ゆっくりと自転車を漕ぎながら、僕は家へと帰っていった。
新しい恋に切り替えれるまで、どのくらいかかるかわからない中、僕は今日も、日々を過ごしていくのである。
Fin
これ、ほぼ実話なんですよね...(泣)まあでも、大晴みたいに4,5回も恋してませんしね(3回してんだろ)。
今思うと、小説の中で言う柳下さん、めっちゃ可愛かったですね(笑)。優しくて、いい感じに話を
聞いてくれるし、真面目でひたむき、笑顔が特に可愛い。現実で実らなかったので、物語では
現実逃避も兼ねて実らせたかったけど、無理でしたね......さて、現実でも物語でも、
この先どんな恋が繰り広げられるか。それは、まだ僕もわかりませんが、まあ、毎日頑張ります!
では皆様、また会う日まで!