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新月の夜に時を刻む
時間があったらでいいんです、本当に、時間がある時でいいので、shiro様のホラーが読んでみたいです……!
どんなものでも構わないので(そう言われると逆に困るかもしれませんが)、一番書きやすい小説を書いていただけたら嬉しいです!
初めてのリクエストだったから舞い上がって早めに書いてしまった。設定により一部が当て字です。クオリティも保証しません。これでも誠心誠意書いたつもりです。
コツ、コツ、と。足跡だけが響く夜に。
明かりはなく、先は見えない新月の暗闇の中、その音は一定のリズムで刻み続ける。まるで、
--- 終わりを告げるタイマーのように。 ---
いつだって、変化は突然である。
「従兄の|直里《すぐり》くんよ。学校が実家から遠いらしくて、うちに居候することになったの。ほら、挨拶」
「・・・|有珠《うず》」
ニコニコと、張り付けたような笑みを浮かべるソイツ。何を考えているのかがわからなくて、生理的に苦手になった。
見ているだけで、ぞわぞわするんだ。塾帰りの暗い道で感じるような、神経が逆なでされるような、そんな視線。恐怖が煮詰まったような真っ黒な瞳の奥で、何を考えているんだか。
ソイツに与えられた部屋は隣室の物置。あらかじめ掃除された部屋は十分に広かった。
「隣の部屋は有珠だから、仲良くしてね」
「勿論です。ね、有珠くん」
返事は返さなかった。いや、返せなかった。顔を見ることもしなかった。見れなかったから。
真っ黒な瞳が二つ、徐々に迫って来て。俺に触れる前に目が覚める。そんな夢を見るようになったのも、全部アイツのせい。
朝起きて部屋を出るときから、学校へ行って、家へ帰って来て、塾へ向かって。そしてまた帰って来て、食事をして風呂に入って、寝る。一日の初めから終わりまで、全身の毛が逆立つような、そんな不快感が拭えない。
・・・ほら、今だって。
--- コツ、コツ ---
どこかで聞いたことのあるような、そんな音。何だっけ。いつも、聞いていたはずだ。
--- 、コツ、コツ、 ---
午後9時を過ぎた、真冬の夜。いくら都会でも、住宅街の奥まったところで、この時間には車も人も通らない。寒さに身をすくめて、暖房を求めて足を速める。
--- コツ、コツ、 ---
あれ、
--- コツ、 ---
・・・ああ、そうだ、そうだった。その音は、
お前の履くローファーの音だ。
お前の顔なんか、真っ暗で何も見えなかった。
一定間隔で、秒針が刻まれていく、この世界。
たった少しの綻びも糊で張り付けて、表面上は何も変わらずに動いていく。
きっと、中身はぐちゃぐちゃになっていくのに。
「あれ、直里くん?この靴、誰のだったかしら」
「さあ?俺が処分しときますよ」
「あら、ありがとう」
「・・・これで、僕も君も、シアワセ?」
酸塊・・・スグリ。「私は貴方を喜ばせる」
「あなたの不機嫌が私を苦しめる」
鳥兜、|烏頭《うず》・・・トリカブト。「あなたは私に死を与えた」