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12.聖女ミアの帰還
あぁ~づがれだぁ~。
王都に帰るのに5日かかった。
本当は私はさっさと帰ってもよかったんだけど。
なんか見捨てられなくて、つい同行しちゃった。
こういう性格だから損していることは十分に分かっている。
だって、実際損しちゃったから。
なんかさ、周りは全部護衛の皆さんとかで、男の人なのに、私だけ女の子。
私の護衛とカミラはいるんだけど、それでもよくカミラは喋りに行っている。
こうなって初めて、護衛が彼らで良かったと思った。実力以外のことで。
ベノン達はベノンたちだけで何かを話している。
それを見ていてしばらくして気づいたのだ。そう言えば、彼らは嫌われ者だった、と。
道中は特に問題はなく。私は乗馬の練習を兼ねてできるだけ一人で乗りながら移動している。今までは一緒に乗せてもらうことになっていたし、それも申し訳なかったから。
こんなふうに少しでも動いていくことで、申し訳なさが減っていっているのが嬉しい。
けれど、疲れた。
神殿に帰ったらしばらくはゆっくりしたいなぁ。
あ、けどこの奪還騒ぎで飛ばしていたけど、私の地位の話もあるなぁ。……忙しそう。
「「「聖女様! 聖女様!」」」
なんだろう? と思えば私達が門に入るのを国民が出迎えていてくれていた。
現実逃避していいかな?
のびのびしようと考えていたところにこの騒ぎだよ? 呪われているのかも。
「一体何事?」
自分の勘違いかもしれないという可能性を信じたくて、念の為にベノンに聞いてみる。
「さあ……? 我々にも完全には分かりかねます……が、みなさんがユミ様を楽しみにしていたことだけは確実かと」
「だからどうしてそうなるの?」
「聖女を救い、騎士を救いましたからね」
なんだそりゃ。はた迷惑な。
「みんな嬉しいんですよ。聖女は希望ですからね」
「……そっかぁ」
完全に納得したわけではないが、そういうことにしておこう。
そして、この歓待は、神殿に着くまで続いた。
◇◆◇
「よくぞ帰られました。他の騎士の方もいらっしゃるようで……本当にありがとうございます」
いつものことながら、サムエルに迎えられた。サムエルって枢機卿だよね? ……もういいや。
「ところで、早速なのですが、明日には国王陛下に報告をすることは出来ませんか?」
「構いませんが……」
「では早速明日、お願いします」
都合が悪いとかそういうわけではないけど、そんな簡単に陛下に会うことってできるものなの?
それに、全然ゆっくりできなさそう。
「忙しくなりますね」
「そうですね」
自室でエリーゼと二人語り合う。
「報告……なにをすればいいのかな?
……あ、ごめんなさい。聞かれても分からないわよね。とりあえずあるがままを報告するのがいいと思うんだけど……」
「私もそんな感じでいいと思います。ですが、事前に内容を整理していた方がいいかもしれません」
「確かにそうね」
◇◆◇
次の日になった。
あれからは護衛のみんなにも聞いたりして、報告を一通りまとめた。
みんなにも協力をお願いしたおかげか、すぐに終わった。
それは、ちょっと簡易的とは言え、報告書的なものだった。
いっそ、これを提出したらどうなるんだろう?
案外悪くないアイデアな気がする。
「陛下のもとへお連れします」
今回もまたサムエルがやってきた。
「サムエル様」
「何ですか?」
「あなたは枢機卿なのでしょう? もっと仕事とか無いの?」
「今は聖女様に関わることも仕事ですよ?」
「そう」
なかなか心を開いてくれない。
その後、陛下に謁見した。
報告はスムーズにできた……と思う。
特に文句は言われなかった。
「いやー、陛下は完全にユウナ様に騙されていますね」
昨日、無事に私の護衛になってくれたカミラが言った。
「あなたは私を信じてくれるんですね」
「もちろんですよ。だからこそ、あの偏見に満ちた陛下の顔を見ると悲しくなりますね。ユウナ様よりユミ様の方が聖女らしいのに」
「ありがとう」
やっぱなぁ。あまり陛下から好感のある風に見られていないよね。
「お疲れさまでした」
サムエルがやってきた。
「疲れましたよ」
「いやーそれにしても紙でまとめたものを提出した上に説明までしたんですね。その行動力は真似できませんなぁ」
「エリーゼのおかげです」
「ちゃんと政治の方まで造詣が深いのは非常に喜ばしいことですよ。このような聖女様がきてくださって嬉しいです」
「はぁ……」
なんか嘘くさいんだよなぁ。
だけど、昔感じた不気味さは今はない。あれはいったい何だったのか……
「ところで、ミア様に地位に関してですが……」
「あ、はい。どうなりましたか?」
急に話が重要なものに切り替わる。
「この度の活躍も踏まえまして、大教区長レベルの聖女の職についてもらうということになりました。構いませんか?」
「大教区長……ですか?」
何それ?
「枢機卿の1個下の地位ですね。ちなみに今いる聖女としては最高の地位です」
うん、何ていうんだろう。目眩がするね。
「はぁ……ありがとうございます?」
「役職名は大聖女となっています。力に関しては、王族の外戚、くらいの地位となります」
佐藤察よりは高そう……だな。
これで妬みとかそういう言葉を佐藤さんが言うとあっちが妬んでることになる。それは、少しせいせいするかも。
「わかりました。わざわざありがとうございました。」
「どういたしまして。特に授与式とかはありません。ただ、このバッジはつけてもらいます。これが地位を表す証明書となるので、なくさないようにしてください」
「ところでどうですか? こんど、教皇様にお会いしません?」
「いえ、遠慮します」
「そうですか……それでは、他の聖女様を一度連れてきてもいいでしょうか?」
それくらいだったら。
「構いません」
「ではそのようにします」
「それにしても……ちゃんと聖女様は今もいるんですね」
「もちろんですよ。でなければこの世界は人口がかなり減っていたでしょう。感染症をすぐさま抑えられたりできるのも、優秀な妻女様のおかげなんですよ」
「そうなんですね」
楽しみだ。
聖女様がくるまでには20日ほどかかるそう。
準備に移動も丁寧にしないといけない。
私のこの前の移動の方が例外だそうだ。
例外……例外ね。やっぱ私差別されているんじゃないのかなぁ。
そう考えるのも仕方ないと思う。