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episode 2 寄り添って欲しい客
カランカラン
そんな音がして、店に入ってきた少女。
「……。誰かいらっしゃいませんか?」
そうして、店の奥から顔を出したカヲル。
「いらっしゃい。お嬢ちゃんの悩みはなに?お人形さんで解決するよ」
「……。お父さんが厳しいの。それで寄り添ってくれるような人形が欲しい!」
「…!そうかい。それなら、お金はいくら持ってるのかい?」
「えっと……。500万…?」
そう。この少女は大手学習塾の社長の娘なのだ。
「WAO……。なら、5000円のビスクドールかな?」
カヲルが差し出した人形は
ビスクドール。
アンティークのようだが違う。
アンティークに《《見せている》》人形なのだ。結構手でやると時間がかかるらしい。
「おじさん!これ買うわ!」
「ブッフ( ̄∑ ̄;) おじさんじゃなくてお兄さんだよ~?んでお買い上げありがとよ」
カヲルが|珈琲《コーヒー》を吹き出しながらもお会計を済ませ少女は家へ帰った。
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「ふんふ~ん♪」
家に帰ってから少女は上機嫌だった。なぜならば、|寄り添ってくれるような人形《希望のドール》
を手に入れたからだ。
「あっ!そうだ!クミちゃん人形の服で着せ替えよう!」
そうして少女はビスクドールの着替えを始めた。
「―出来た!」
「あっ!名前決めてない…!この子の名前は―」
その時少女はこう思った。
(寄り添ってくれるようなビスクドールだから、ヨビ…!ヨビ!)
「よろしくね。ヨビ!」
ヨビと少女は一晩を過ごした。
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ある日、ヨビと遊んでいると父が部屋に入ってきた。
「おい!菜名!何故お前は勉強せず遊んでいる!?その人形は没収だ」
「えっ…?!父上!お待ちください。私は飾って―」
「もういい!!!こんな人形捨ててやるっ」
そして、少女の父は人形を捨てた
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その晩。
少女の父は目が覚めた。ふと、娘を想い、寝ようとした。
《《その時だった》》。突然ドアが開いた。誰だろうと見てみると `《《あのビスクドール》》`だったのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁあ!!助けてくれ助けてくれ!」
そう言ったときにはもう遅かった。
翌日、少女の父は遺体として発見され、ニュースにも取り上げられた。
でも、犯人はまだ逃走中とのことだ。
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水晶をみるカヲル。
「あ~ぁ。駄目でしたか。残念です。次は成功できる|呪法《まじない》かけときましょう。」
コロン
何かが落ちる音。
「今日は閉店。また開店までお待ちくださいね」
その言葉のみで店は跡形もなく消えてしまったのであった。