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#7 お花見に行こう!
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
https://tanpen.net/novel/series/dbc4b7a3-d5a6-4927-bd3f-8e75383d3519/
ルイスside
桜舞い散る、ある春の日のこと。
僕は近くの公園に花見に来ていた。
多くの花見客がそれぞれ楽しんでいる。
食事に、飲酒に、子供は鬼ごっこ。
《《花より団子》》という言葉があるが、殆どは宴会を楽しんでいることだろう。
「あー! 何で花見の場所が|探偵社《コイツら》の隣なんだよ!」
「確かに由々しき事態じゃがなぁ」
聞き覚えのある声が聞こえてくる。
随分イラついているな、中也君。
「楽しそうな鏡花も見えるしのぅ♡ |私《わっち》の鏡花は愛らしいのぅ♡」
「おい、姐さん飲ませ過ぎるなよ」
「紅葉出来上がってるねぇ」
「ルイスさん!」
探偵社とマフィアの仲が良く見えるけど、そんなことないだろうな。
太宰君と中也君は相変わらず言い争ってるし。
このままだと戦争が始まりそうだな。
「せっかくのお花見日和ですし…探偵社と合同のお花見にしてもいいのでは?」
なーんて、と言った樋口さん。
芥川君が嬉しそうだな。
でも中也君がすぐに否定したので、露骨にがっかりしている。
少し可哀想に思える。
「よぉし移動だ─いど…」
「中也さんが酔い潰れた!?」
「お花見、意外と楽しかったんですかね?」
「五月蝿いのがやっと静かになったねぇ。今日ぐらい桜に免じて、皆で宴を楽しもうか」
太宰君はここまで計算して中也君に飲ませていたな。
明日が大変になりそうだ。
「うぅ、|私《わっち》らは何時になったら会えるんじゃのぅ…」
「酔いすぎだよ、紅葉。メタ発言じゃん」
「良かったらコレ」
鏡花ちゃんにおにぎりを渡され、与謝野さんにはワインを押し付け─いや、頂いた。
早々に立ち去るつもりだったのに、おじゃましようかな。
本編ではあり得ない探偵社とマフィアが仲良くしている様子。
敵対組織とはいえ、桜の下では同じく花見を楽しむ人間か。
僕も今、この瞬間は一人の人間としてここに居られる。
「…昔ではあり得なかった」
「お花見なのにしんみりしないでくださいよ、ルイスさん」
「それもそうだね」
ワインを飲み干すと、太宰君が日本酒を渡してきた。
丁度、桜が舞い降りて酒に浮かぶ。
「乾杯しませんか?」
「…何にする?」
そうですね、と太宰君は珍しく頭を悩ませているようだった。
「─|迷ヰ犬《ストレイドッグ》に」
「…|迷ヰ犬《ストレイドッグ》に」
乾杯、とお猪口の当たる音がとても綺麗だ。
僕らは迷い、抗って生きてきた。
そしてこれからもそうやって生きていく。
探偵社もマフィアも、皆同じく|迷ヰ犬《ストレイドッグ》か。
--- 『ルイス』 ---
ふと、懐かしい声が聞こえたような気がした。
桜吹雪の先に見えた、軍服を身につけた沢山の人影。
「…僕はまだ其方へ行けそうにないよ」
君達の分も、生きないといけないから。
そして罪を犯した分、生きて償わないといけないから。
『まだ26歳なのに|あの世《こっち》に来たらぶん殴るから覚悟しとけよ!』
『一人で抱え込むなよ、ガキ』
『僕達のことは忘れて幸せになってね』
『元気にやれよー!』
あぁ、と笑った僕の目から涙が落ちる。
桜の見せた幻覚か、酒を飲み過ぎたのか。
あまり酔わない筈だが、と考えていると一人の男が仲間達の中に混ざっていた。
赤い髪が特徴的な男だ。
砂色の外套は、何処か彼を彷彿とさせる。
「太宰君に用かい?」
『…何でもお見通し、か。お前ならこの会話が夢か現実かも予想ついているのだろう?』
「まぁね」
グイッ、と酒を一気飲みした僕はその男に笑いかける。
「自殺は程々に、とでも伝えておくか?」
『太宰が早く来たら完成した小説を見せられない、とも言っておいてくれ』
「覚えていたらね」
『そんな冷たいこと言うなよ』
色々と話したいことはある。
しかし、こういう場合は大抵長話は不可能だ。
「また会おうね、織田作さん」
織田作ぅぅぅぅぅぅぅぅ!