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#11
--- ある日の夜 ---
「あ、おかえりなさい琥珀」
「ただいま那由多さん、今日のご飯何?」
そう聞くと那由多は
「琥珀の大好きなオムライスだよ」
「ファァほんまにおおきに那由多さん!」
「全く琥珀は那由多にべったりだな」
さっき仕事から帰ってきた零だった
「…………詐欺師が」
「詐欺師じゃねえただの研究者だ!」
「…あまり変わらないじゃん」
と近くで聞いていた那由多は
「そのくだらない喧嘩ずっとしてたら今夜の晩御飯は抜きです」
そう言うと2人は
「「そ、それだけは」」
「だったら喧嘩しないでね」
「「は、はい」」
那由多は満足そうに微笑み琥珀はリビングに行き、一瞬だけ視線を交わしすぐにそっぽを向いた
とはいえ、那由多の「ご飯抜き」宣言は二人にとって絶対的な脅威だった
「……何、気持ち悪い顔してんの」
「うるせえな、別にいいだろ」
零は慌てて真顔に戻り、資料に視線を落とす。しかし、すぐにまた琥珀に話しかけた。
「なあ、琥珀。今日養成所はどうだったんだ?」
琥珀はため息をつき零の方に体を向けた。
「別にいつも通り」
「はは、正直だな」
零はからからと笑う
その時、キッチンから美味しそうな匂いが漂ってきた。バターとケチャップの混ざった香りがリビングを満たし、二人の空腹を刺激する。
「……那由多さん、ほんまに料理上手いよな」
琥珀が少しだけ表情を和らげて呟く。
「ああ、まったくだ。俺たちがこうして不自由なく暮らせてるのも、那由多のおかげだな」
零がしみじみと同意すると、琥珀は何も言わずに頷いた。この奇妙な共同生活も、那由多という太陽のような存在がいるからこそ成り立っている。
「ご飯できたよー!」
那由多の明るい声がリビングに響き渡った。その声に、張り詰めていた二人の間の空気がふっと緩む。
「よっしゃ、行くか、__詐欺__………研究者」
琥珀が慌てて言い直す。
「最初からそう言やあいいんだよ」
零は笑いながら立ち上がり、琥珀と共にダイニングテーブルへと向かった。そこには、ふっくらとした卵にケチャップで可愛らしく顔が描かれたオムライスが、湯気を立てて並んでいた。
「わあ、那由多さん、すごい!」
「ありがとう、那由多」
那由多は二人の喜ぶ顔を見て、嬉しそうに目を細めた。
「どういたしまして。さあ、冷めないうちに食べよっか」
三人で囲む食卓は、いつも暖かくて賑やかだった
🔚