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第一話:奈落の底の英雄
今回、新シリーズです。
一応1400文字くらい。
久々の投稿になりました。
カツン、カツン…と冷たい床をを叩く足音が地下牢に響く。
鉄格子の向こうから見下ろしてくるのは、“かつて“俺が命を懸けて守った王国の兵士たちだ。
「おい、生きているか。“元・勇者レイン・アルクス“」
少し笑い声を含んだ声に、俺はピクリとも動かない。
薄暗い牢屋の真ん中。重い鎖に繋がれた俺の体は、汚れ、傷つき、かつて魔王を討伐した面影などどこにもなかった。
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三年前ーー
俺は、世界を滅ぼそうとした魔王を討ち倒した。
長く続く戦いが終われば、平和な日々が続く…と俺は思っていた。
だが、待ち受けていたのは「喝采」ではなく、人々の冷酷な裏切りであった。
「勇者アルクスは、魔王の力を我が物にし、新たな支配者になろうとしているぞッ!!!」
王族と貴族たちが仕組んだ、あまりにもお粗末な濡れ衣。
しかし、俺が魔王を倒して平和に暮らせるようになった人々は、平和を取り戻した英雄を崇めるよりも、新たな恐怖の対象を引きずり下ろす…単なる「娯楽」を選んだ。
石を投げられ、「怖い」「人間として終わってる」などを言われ、俺は光の届かない最下層の地下牢に閉じ込められた。
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「ふぅ……」
守った者たちに裏切られ…全てを奪われた。
アルクスの心は、絶望、怒り。
それ以上に「自分の信じた正義はなんだったのか」という深い悲しみで満たされていた。
それからただ、ため息をするだけの「死人」のような日々が過ぎていった。
ーー地響きが起きたのは、そんなある日のことであった。
ズゥゥゥン……!!!!!
地下牢全体が激しく揺れた。
これまでにない、異常な振動にアルクスは俯いていた顔を上げた。
その瞬間、上の方から悲鳴が聞こえてきた。
それは、かつてアルクスが魔王軍の襲撃の際に何度も耳にした、人間たちの絶望の声だった。
「何が……起きている」
その時、バタバタと慌ただしい足音がこの地下牢に響き、一人の看守が駆け込んできた。
その顔は真っ青に染まり、腰がブルブルと震えている。
「嘘だろ、魔王は消えたはずなのに!?あの怪物は一体どこから…うわああああぁ!!!!」
看守の言葉は、背後から現れた黒い影によって遮られた。
岩壁を粉砕して現れたのは、巨大な漆黒の爪。
一突きで看守の体を貫いたそれは、かつての魔王軍の幹部すら凌ぐ、プレッシャーで立っていられないほどの魔力を持つ『特級魔物』であった。
特級魔物は看守を放り出し、紅く光る眼球が地下牢にいる俺を捉えた。
「グオオォォォォォォオオッッ!!!!!!!!」
特級魔物の咆哮の風圧だけで、鉄格子の扉が、紙切れのように吹き飛んだ。
あまりのプレッシャーに通常の人間なら、精神が崩壊しかねない殺気。
だが、勇者アルクスはピクリとも動かない。
特級魔物は俺に巨大な漆黒な爪を振り下ろした。
まともに食らえば一溜まりもない。
「終わりか……」
俺は「死」を受け入れようとした。
しかしーーアルクスの胸の奥で、残っていた火が爆発的な炎となって燃え上がった。
(俺を裏切り、俺の人生を大きく変えた奴らのために、戦う気など微塵もない)
(だが、ここで死んだら俺は「大罪人」として泥を塗られることになる)
俺は背けていた目を、しっかりと…特級魔物へ向けた。
(失われた信頼、汚された名誉、そして何より己の誇りを取り戻すためにーー)
--- ***俺は、レイン・アルクスだ。*** ---
俺は数年間、ずっと俺の体にしまっていた強大な魔力を静かに体に巡らせた。
その魔力が覚醒し、俺の体を縛っていた鎖を木っ端微塵に砕いた。
「…!?」
特級魔物は、俺がいきなり鎖を木っ端微塵にしたことで、すごく驚いている。
混乱している今がチャンスだ。
俺は、看守が持っていた鉄剣を拾い上げ、特級魔物へ鋭い刃を向けた。
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