公開中
晴れるころには
3月という月は暦の上ではもう春らしい。
春だというのに風が冷たい。夜は寒い。朝も寒い。
いまだにブレザーの上からジャンバーを着ないと家から出られないでいる。
3月3日。今日は火曜日だというのに学校はお休みであった。
一般入試の日だからである。
朝から冷たい風がビュウビュウ吹いていた。北風さんはお怒りであるご様子。
強風と共に雨が降っており、入試当日の気合とは合わないほどに天候が悪かった。
|姉川若菜《あねがわわかな》は窓の外を見て気分を落としていた。
「どうして入試の日って天気が悪いんだろう」
若菜自身、1年前の入試は天気が悪かった記憶がある。
というより、若菜の場合は大吹雪であった。
---
不安と自信と緊張の混じった気持ちを胸に吹雪の中上った坂道。
暖房のない教室の中で他校の制服を身にまとった受験生の中に紛れ込む。
自分より少し遅れて教室に入ってきた名前の知らない女の子の頭に雪が積もっているのを見て自然と笑みがこぼれる。
教室の窓際の前から2番目の席。受験番号301番。
時々ガタガタ揺れる窓。
休み時間、廊下に出ると窓から見える雪景色。
次の試験科目の勉強よりも、窓の外の雪を見つめながら試験中寝ないことを祈るばかりだった。
面接では試験管の質問の途中に盛大にくしゃみをしてしまったり、退出するときに出口を間違えて慌てて走ってしまったり、ドアがなかなか閉まらなくて思いっきりバタンッと閉めてしまったり。
幸い個人面接だったからそのような恥をこれから同じ高校に通うことになるであろう受験生に知られなかった。だが個人面接だったからこそ大失態を犯してしまったのである。
---
天気の悪い日はなぜか自分の黒歴史を思い出してしまうものである。
どうせならぽかぽか陽気で梅の香るさわやかな風が吹く日に入試があればよかったのに、と思うばかりだ。
しかし、梅が冬のイメージが強いのは自分だけであろうか。
親に聞こうにも笑われそうで聞けない。
「わかなー!」
いきなり呼ばれてビクッとする。
「あんた暇そうやけん、ちょうど雨やんどるうちに外に転がっとるボールば上の家に届けてきて」
「えー、やだ寒い」
「ほら今お母さんあんたたちのために昼ごはん作りよるけん。頼んだよ」
料理を中断されては困るのでしぶしぶ重いお尻を持ち上げた。
とりあえずジャンバーを着ないで外に出る。どうせ5分もかからんし。
「うわさっぶ!てかまぶし!風つよ!」
雨が上がって太陽が出ていた。
風が強いわりに少し曇った空から出てくる太陽はすごくまぶしい。
太陽が出てき始めると春を感じる。
そういえば1年前の入試終わりも雪は止んで晴れてたなと思い出す。
台風みたいな風に吹かれながら、1年前を思い出す。
晴れてりゃなんでも結果オーライ。
そんな3月の春の日でした。