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令和のバリキャリ
「……終わった」金曜日の午後8時。オフィスに、マミの絶望の声が響いた。手元にあるのは、明日が提出期限の「最重要プロモーション資料」。しかし、パソコンの画面は無情にもブルーバックのままフリーズしている。データは全て消えた。「おいマミ、何死にそうな顔してんだよ」声をかけてきたのは、同期でライバルのレイカだった。いつも完璧なメイク、高いヒール、そしてマミとは昇進を争う文字通りの「敵」である。「レイカ……データが消えた。明日の朝までに作り直さないと、私、終わる……」マミが頭を抱えると、レイカはフッと鼻で笑った。「ふん、相変わらずドジね。……でも、あんたにここで潰れられたら、来期のチーフの座を奪い取る楽しみが減るわ。手伝ってあげる」「レイカ……! ありがとう、やっぱり持つべきものは友だね!」「勘違いしないで。これは、あんたを完璧に叩きのめすための前払いよ」そこからの2人の集中力は凄まじかった。マミが構成を考え、レイカが爆速でスライドに起こす。深夜2時を回る頃には、お互いメイクはドロドロ、髪はボサボサ、ヒールを脱ぎ捨てて、普段の「バリキャリ女子」の影も形もない。「マミ、このグラフ、フォントがダサいわよ!」「うるさい! 夜中の2時に明朝体かゴシック体かなんてどうでもいいでしょ!」「美意識の死んだスライドなんて、私が許さないのよ!」怒号を飛び交わせながら、2人はエナジードリンクを交互に一気飲みし、夜通しキーボードを叩き続けた。まさに、過酷なビジネス戦線を共にする、熱い女の友情だった。そして朝の7時。ついに、元のデータよりもクオリティの高い、完璧な資料が完成した。「できた……! 私たち、やったねレイカ!」「ふふ、当然よ。私たちのコンビに、作れない資料なんてないわ」2人は固いハイタッチを交わし、戦友としての絆を深めた。疲れ果てたマミは、そのままオフィスのデスクに突っ伏して、深い眠りに落ちていった。3時間後、出社してきた上司の熱い声でマミは目を覚ました。「おお、マミ! スライド見たぞ! 素晴らしい出来じゃないか! さすがだな!」「あ、部長……ありがとうございます……。実はこれ、レイカが夜通し手伝ってくれて……」マミが感謝を伝えようと、隣のレイカのデスクを見た時、マミの体は凍りついた。そこには、いつの間にかメイクを完璧に直して、涼しい顔でコーヒーを飲むレイカの姿があった。しかも、部長に向かって、これ以上ないほど可憐な笑顔を向けている。「いえ、部長。私はただ、夜中にマミが『もう無理、死んじゃう!』って泣きついてきたので、先輩として、優しくアドバイスを差し上げただけです。実務の9割は、マミが自力で頑張ったんですよぉ」「そうか! レイカは本当に後輩思いのいい先輩だな! そしてマミ、よく1人でここまで仕上げた!」「え……?」マミは、自分の服装を見た。ボサボサの髪、ヨレヨレのシャツ、そしてエナジードリンクの空き缶に囲まれた自分。一方のレイカは、シャキッとしたスーツで、まるで『徹夜なんてしていません』という風情を醸し出している。マミが寝ている間に、レイカは自分だけ会社のシャワールームを使い、メイクを完璧に施し、全ての「徹夜の証拠」を隠滅していたのだ。レイカはマミにだけ見える角度で、ニヤリと悪魔のような笑みを浮かべ、口パクでこう言った。『ビジネスは、見た目が9割よ。じゃ、来期のチーフの座、もらうわね』「あんの、裏切り女ァァァーーー!!!」オフィスにマミの咆哮が響き渡り、2人の「絶対に負けられない戦い」は、さらにヒートアップしていくのだった。