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地震の中、君達と出会った③
翌朝。
地震の余波も落ち着き、朝日が差し込むスワロウテイルの拠点。
不慣れな場所での緊張からか、ちぐはが目を覚ますと、そこには異様な光景が広がっていた。
「……あ、起きた? おはよう、僕の宝物」ベッドに潜り込んでちぐはの顔をじっと覗き込んでいたのは、まどかだった。
その瞳は眠たげだが、獲物を逃さない肉食獣のような鋭さを孕んでいる。
「……ま、まどか? なんでここに……」
「君の寝顔、1秒ごとに完璧な造形だったよ。全部記憶(ログ)したから安心して」
「安心できない……っ」顔を真っ赤にして飛び起きようとすると、背後から低い声が響く。
「……まどかさん、あまり彼女を驚かせないでください。……ほら、これに着替えてください。
私が厳選した、あなたに『唯一』似合う服です」健三が無表情のまま、シルクのような肌触りの服を差し出してきた。
その指先が、わざとらしくもちぐはの鎖骨をかすめる。
「……っ、自分で着替えます!」
「いえ、私が。まどかさんのお世話のついでです。光栄に思ってください」
健三の過剰すぎる「お世話」という名の独占欲に、ちぐはが身をすくませていると、部屋のドアが勢いよく開いた。
「おい! いつまで寝てんねん、メシやぞ! ……って、お前ら何してんねん!」
エプロン姿の誠一が、ちぐはを取り囲む二人を見て激昂する。
「……誠一くん。君の作った朝食、ちぐはには刺激が強すぎるんじゃないですか?」
「あぁ!? 栄養バランス考えて作ってやってんだよ! ほら、ちぐは、さっさと来い。……ったく、変な男たちに捕まるなよ」誠一は乱暴にちぐはの手首を掴むが、その力加減は驚くほど優しい。
不器用なちぐはは、「嫌われている」と思い込み、ぎこちなく彼に従う。
「(……みんな、やっぱり私を監視してるんだ。……怖いけど、どうしてこんなに胸が騒ぐの?)」ダイニングテーブルに着けば、右にはまどか、左には健三、正面には誠一。
逃げ場のない「寵愛」の檻が、じわじわと彼女を追い詰めていく。
「ちぐは、あーんして。僕が食べさせてあげる」
「……結構です!」
「断るなんて、100年早いですよ。……さあ、口を開けて」
「おい健三! 俺の作ったメシを汚い手で運ぶな!」
朝食の時間は、ちぐはを巡る静かな、しかし熾烈な戦争へと変わっていく——。