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心音(こころね)は、君だけに甘く響く ⑤
赤都 乃愛羽
最終話:君に捧ぐ、最後の鼓動
「るぅとくん……起きて。私の、この音を……あげるから」
病院の特別室。機械の無機質な音が響く中、るぅとくんは静かに眠っていた。
ちぐを救うために無理なドナー適格検査を繰り返し、精神と肉体を削りすぎた彼は、皮肉にもちぐより先に、その命の灯を消そうとしていた。
「ちぐ! 何を言ってるんだよ! ダメだよ、そんなの……っ!」
ななもり。くんが叫び、莉犬くんが君の腕を掴んで止める。
けれど、国宝級の美貌を持つ君は、今まで見たこともないような、澄み切った、それでいて絶望的な微笑みを浮かべた。
「私、恋愛音痴だから……みんながどうして私をこんなに大事にするのか、わからなかった。でもね、るぅとくんが死んじゃうって思ったら、胸がこんなに痛いの。これが『好き』ってことなら……私、いらない」
君の手が、自分の弱った胸の上に置かれる。
「私の心臓は、もうすぐ止まっちゃうかもしれない。でも、るぅとくんの体の中なら、もっと長く生きられるでしょ? ……私を、るぅとくんの一部にして」
それは、究極の「寵愛」への、君なりの答え。
数時間後。
メンバーたちが泣き崩れる中、禁断の手術が行われた。
恋愛音痴だった少女は、自分の命を、愛する人の胸へと閉じ込めることを選んだ。
……一ヶ月後。
目を覚ましたるぅとくんの胸では、ちぐの、あの小さくて優しい鼓動が時を刻んでいた。
「……ちぐ? どこ……? なんで、君の声が……僕の中から聞こえるの……?」
さとみくん、ジェルくん、ころんくん。
残された5人の瞳には、もう光はない。
彼らが溺愛し、守り抜きたかった「国宝」は、もうどこにもいない。
ただ、るぅとの胸の中でだけ、ちぐは生きている。
彼は一生、その胸の音を聴くたびに、自分を救って消えた君への、狂おしいほどの愛と後悔に焼き尽くされる。
「ちぐ……。君は最後まで、僕を独り占めにするんだね……」
るぅとくんの手が、自分の胸を強く、壊れそうなほど抱きしめる。
君の心臓は、彼の中で、ただ一度きりの激しい恋のように、ドクンと熱く跳ねた。