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気まぐれ小説 ~母を母と呼ぶまで~
私は孤児院で暮らしていた|心海《ここみ》。一応、6年生。5歳ぐらいまではお母さんに育てられてたんだけど、急にこの孤児院に預けられた。そこからお母さんは見てない。だから顔もあまり覚えてない。
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ある時、私を引き取りたいという人が現れた。その人は、30代前半って感じの女性で優しい雰囲気の人だった。その人は元々夫とおなかの中に赤ちゃんががいたがその夫は夜逃げをし、赤ちゃんは流産してしまったそう。なんてかわいそうな、、、。その人の名前は|碧衣《あおい》というから「碧衣さん」と呼んだ。その人も、私のことを「心海ちゃん」と呼んでくれた。その人との暮らしはとても楽しかった。だって、家族が出来たみたいだったからね。でも、私はその人のことを「お母さん」と呼ぶ気はなかった。きっと呼んでほしかっただろう。でも、その人は本当のお母さんではない。本当のお母さんにしか「お母さん」と呼びたくなかったんだ。ある日、「お母さんと呼んでほしい」という話し合いをした。
「どうして心海ちゃんは私のことを「お母さん」と呼びたくないの?」
「だ、だって本当のお母さんじゃないから。本当のお母さんを待ってるか、ら、、、」
「心海ちゃん。本当のことを言うね。心海ちゃんのお母さんとお父さんと心海ちゃんでドライブに行ってたんだって。でもその帰り道で、、事故にあったの。その時、心海ちゃんは後ろの席にいたから助かったんだけどね、そのお母さんとお父さんは緊急搬送された病院で死亡が確認されたの。だから、心海ちゃんのお母さんとお父さんは天国にいるのよ、、、」
「っ、、、!」
「だからね、もしよかったらね、、、。本当のお母さんだと思わなくていい。代わりのお母さんだと思ってくれたらいいんだけどね、1回でいいの。「お母さん」と呼んでくれないかな?」
う、うそだ。やっぱり家族以外の人間は嘘つきだ!!
「碧衣さんって、そんなひどい人だったんですね。まだいるって信じてるのに!!今日はもう、顔を見たくありません。じゃあ、寝ますんで。おやすみなさい!!」
**ドン**
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う、う~ん。もう朝か。早いな。そういえば今日は碧衣さ、さんの誕生日だ。昨日、言いすぎちゃったかもな、、、。謝ろう。あれ?なんか手紙が置いてある。
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心海ちゃんへ。
昨日はごめんね。ダメだってわかってたんだけど言った方がいいと思っちゃったんだ。本当にごめんなさい。今日も仕事に行ってきます。ちょっと早めに帰ってくるね。しっかりと謝りたいから。朝ごはん、昼ご飯は冷蔵庫においてるから食べてね。
碧衣より
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碧衣さん。悪いのは私なのに、、、。ごめんね。碧衣さん、、、。
**ガチャ**
「ただいま~。今日は仕事なかった。ごめんn」
**「ごめんなさいは私です。昨日は言いすぎました。ごめんなさい!!」**
「いいよ。お母さんとお父さんの生存を信じてたんだもんね。急に言われたらびっくりするよ」
よし、準備は整った。息を整えて、、、。
「あ、あの。誕生日おめでとうございます!今日は誕生日だったね。お、お母さん?」
「っ!!言ってくれたの?ありがとう!今までで一番うれしいプレゼントよ!!!!!」
そんなに思ってくれたなんて。やっぱり、お母さんって呼ぼう。
おしまい。