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prologue
--- こっち ---
「えっ……?」
呼ばれた、気がした。
誰か知ってる人に。
「どうした?翠?」
友達の一言で、私、皆川 翠は現実に引き戻された。
「えっ、あっ、なんでもないよ……!」
「そう?そういえばさぁ、昨日のテレビでねぇ~。」
--- こっち ---
また聞こえた。
懐かしい声だった。
翠は声の主を捜すべく、辺りを見渡す。
特に、見つからない。
ふと、窓の外に目を向けると、真っ赤な鳥居が目に飛び込んできた。
それを見た途端に翠は思った。
「行かなきゃ……。」
「ちょ!?翠!?」
気がついたら友達の注意も無視して学校を飛び出して、神社へ向かっていた。
---
神代神社。
この町にある唯一の神社。
その歴史は古く、何度かテレビで取り上げられたこともある。
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
学校から神社まで全力で走ってきたから汗だくだ。
翠は上を見上げる。
長い石階段。
その先には真っ赤な鳥居。
呼ばれてる。
翠は石階段を駆け上る。
何度か苔で滑りそうになりながらも、階段を登りきった。
--- こっち。裏。待ってる。呼んでる。早く ---
急かされて、神社の裏へ行く。
そこにあったのは細長い木の箱だった。
「なにこれ………?」
大分古い物なのか、触ったら蓋がバキッと壊れてしまった。
中には、一振りの刀。
「どういう、こと………?この刀、なに?」
困惑する翠。
その時、翠の耳に人の悲鳴と、なにかの雄叫びが聞こえた。
翠は中3でっせ?