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魔法使いの冒険(長編)
魔法使いの「アース」は、友達の魔法使いの「スカイ」にパーティに招待される。しかし、アースの家はスカイの家からかなり遠く、パーティに行くかどうかを迷っていた。だが、飼い猫の「ランド」に背中を押されて、パーティへ参加しに行く。10日以上の長旅に、魔法を使って出発する。
これは、ある魔法使いの物語。
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ある日、森の奥深くに住んでいる魔法使いの家に手紙が届いた。
魔法使いの名をアースと言う。
ア「こんなところに手紙?いったい誰が…」
《偉大なる魔法使いアースへ
アース、久しぶり!元気だった?
今月、満月が空に昇るとき、私の家でパーティーを開きます。是非、お越しください。昔みたいに、みんなで楽しもう!待ってるよ!
あなたの大親友スカイより 》
ア「スカイからパーティーの招待状か…。『偉大なる』って…w行きたいけど…うーん。どうしよう。__でもせっかくこんなところまで来たのに今更みんなのところに行けないよ。怖いなあ。あーでも、パーティー、楽しそう。行きたいけどな。どうしよう__」
魔法使いのアースはとても悩んでいます。ブツブツブツブツ独り言を言っている。
悩みの理由は、森の奥深くに住んでいることに関係があるのだろうか。
?「にゃーににゃやんでるんだ?」
アースが一人でブツブツ言ってると、どこからか声が聞こえてきた。
だがここに人は一人しかいない。一体、誰が話したのだろうか。
ア「なによランド。私は今真剣に考えてるんだから話しかけてこないで」
ラ「だから何をそんにゃに悩んでるんだ?俺様に言ってみろ!」
これは驚いた。アースは飼い猫と話をしているようだ。猫の毛色は黒色で、艶があった。目は美しくきらめくエメラルドで、シャープな体つきをしている。
飼い猫はアースの肩に飛び乗り「ニャー」と一声鳴き、話しだしまた。
ラ「もしかしたら、この偉大にゃ俺様が力ににゃれるかもだぜ」
この猫は自分に自信があるよう。いいことだ。
ア「分かったよ。あのね、~~~」
ラ「にゃるほど~。つまりアースは怖がりで大の意気地なしってことだにゃ」
ア「どういう事よそれ!」
ラ「だって友達にでさえ会うのが怖いんだろ?俺様にはにゃにが起こったのか知んにゃいけど、過ぎたことをぐずぐず引きずってる奴はただの意気地なしだ」
ア「ランド~」
アースは泣きそうになっている。
ラ「ま、俺様はアースの過去なんか知らにゃいから。あとは自分で考えるんだにゃ。俺様は昼寝の続きでもするかにゃっと」
ア「もう、ランド!助けになってくれるって言うから話したのに」
ラ「俺様は助けににゃるにゃんて一言も言ってない。__助けににゃれるかもにゃんてのは言ったけど。__アースはパーティーに行きたくにゃいのか?」
ア「それは…」
アースはだまりこんだ。
ア(パーティーには行きたい。行きたいよ。だけど…。私にはみんなのところに行く資格がないんだよ。みんなのところにいられるなら、今頃こんなところに住んでないよ)
ラ「その顔は、行きたい、って顔だにゃ」
ア「そんなことない!」
ラ「そんなことあるから言ってるんだ!分かった!俺様も付いて行ってやるから、一度パーティーに行ってみたらどうだ?__俺様はご馳走食べたいし__」
ア「それ、ただランドがパーティーでご馳走食べたいってだけでしょ」
ラ「にゃ!?ば、ばれたか…」
アースはもう一度考えこみ、ひとりでに頷くと言った。
ア「よし!ランド準備して。これから長旅が始まるけど、大丈夫だよね?」
ラ「大丈夫だにゃ!」
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1時間後、1人と1匹は家から出てきた。
1時間、何をしていたかというと…大掃除だ。なぜなら、いつ戻ってくるのか分からないから。魔法使いスカイの家は一体どこにあるのだろうか。「森の中にはない」ということは確かだが。
ラ「で、どのくらいでそのスカイって魔法使いの家に着くんだ?」
ア「早くて10日くらいかな。旅の途中何があるか分かんないし」
ラ「10日!?俺様体力持たにゃいぜ?どうやって行くんだよ!」
ア「ランド…。私の事馬鹿にしてる?」
アースは怒りと呆れを帯びたオーラをそこら中に発した。
鳥は空へ、動物たちは巣穴へ逃げ出した。ランドも震えている。
ラ「ごめん!ごめんってば!アース!やめてくれ!」
ア「よろしい」
アースはオーラをしまい込み、両手を前に突き出した。
ア「あらゆる生命を司る大神よ。大地の精霊、森の精霊たちよ。今我に力を貸したまえ」
「|ship《船》」
呪文を唱えると、辺り一帯シンと静まり返る。
**ゴゴゴゴゴゴゴゴ**
大きな音がした。
森全体が淡い光で包まれていき、数秒後、アース達の目の前には大きな木造の船が出来ていた。
ラ「アース、すげー!アースはやっぱすごいんだにゃ!」
ア「ふふっ。さぁ乗って!出発するよ!」
1人と1匹は荷物を持って乗り込んだ。
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1人と1匹が荷物を置いて船の甲板のところに行った。
※甲板はデッキともいう。船の上部にある平らな床のこと。
柵になっているところから身を乗り出した。
ラ「ん~!高い所ににゃるだけで空気がおいしく感じられる!景色もきれいだにゃ」
ア「まだまだ、これからだよ」
「|Flotation《浮け》」
アースが呪文を唱えると船が浮いた。空高く、ぐんぐんと昇っていく。
ラ「うわー!家がどんどん小さくなってるぞ!」
ア「あたりまえでしょー!ライド、よーく見てて」」
「|Move《動け》」
今度は前進しだす。
船は、空を飛んだ。鳥に並び、森が小さくなり、雲を突っ切った。
ラ「うぉぉぉぉぉお!すっげー!!」
ア「びっくりしすぎ」
ラ「お前天才だにゃ!」
ア「今頃ぉ?」
ラ「再確認した。てかこれ快適すぎだろぉぉぉぉぉ!」
1人と1匹は快適に移動していく。空高いところで、船から景色を眺めながら。
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3日後
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ラ「アース!俺様にゃんか退屈ににゃってきた。なんか面白いことにゃいかー?」
ア「面白いことって言われても…」
アースは部屋の中を見渡した。
部屋の中は遊ぶものでいっぱいだった。トランプ、オセロ、将棋、囲碁、人生ゲーム、折り紙…etc
小説もあったし、スケッチブックもあった。
しかし、ライドは重度の飽き性だった。何をやってもすぐに飽きてしまうのだ。
アースはため息をついた。
ア(ライドはこれだから長旅に向いてないんだよ…。遊びにはすぐ飽きるし。だから大丈夫か聞いたのに…)
ア「まだ3日しか経ってないのに。じゃあ今度はトランプで七並べして遊ぼう」
ラ「嫌だ!あんにゃ遊び面倒くさいだけだにゃ!」
ア「じゃあ将棋崩しでもしよう!」
ラ「俺様のこの可愛らしい手じゃ、そんにゃ遊び出来ないにゃ!」
「退屈だー!にゃんかにゃいのか?」
「そうだ、アース!この船を宙返りさせてくれよ!ジェットコースターみたいにゃスリルが楽しみたいぜ!それが終わったらいつもとは違うご馳走を出してくれよ!3日間パンとチーズだけの食事を我慢したんだからさ__」
その時船が大きく揺れた。左右に大きく揺れる。
ラ「おー!アースやるじゃにゃいか!楽しい!」
ア「私じゃない」
ザーッという壁に何かが当たっているような音がする。だんだん音が大きくなってきた。
船も左右に大きく揺れ、棚から物が落ちてきている。
ア「私、違う。こんなことしない」
ラ「へ?」
1人と1匹は顔が真っ青になった。
アースが外へ出る。
**ゴォォォォォォ!**
ア「うわ~」
アースの体が浮いた。
ラ「アースッ!」
ライドの声が聞こえたのを最後に、アースの意識は途絶えた。
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ア「うぅ…」
アースはゆっくりと起き上がった。
ア「ここは…」
アースは周りをゆっくりと見渡した。
薄暗く不気味な森の中。壊れた船の残骸とみられるものがそこら中に落ちている。湿った地面。ライドは、いない。
気に覆われていて空が見えない。
ア(夜ではなさそう。まだそんなに暗くない。明け方?とれとも夕方?どちらにせよ、早くライドを探さなくちゃ)
アースは歩き出した。自分が今どこへ向かっているのかさっぱりわからなかったが、ライドを探しに行かなくてはならなかった。
ア(独りぼっちになるのはなんだか久しぶり。1人は怖い。1人は寂しい。ライド…)
アースは険しい森の中を何時間も何時間も歩き続けた。それなのに、何かがおかしい。ライドが見つからないどころか、森から出られないのだ。殺風景すぎる森だからか同じところをぐるぐる、行ったり来たりしている気がする。
辺りはどんどん暗くなってくる。何時間も歩き続けたせいか、足が痛い。
アースはもう限界だった。その場に座り込む。
そのままアースは寝てしまった。
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ラ「アース!アース!」
ライドは大きな木の上にいた。猫だが高い所が苦手なライドは、なかなか降りることが出来ずにいた。周りは丘のようになっていて、大きな木以外何もなかった。
ラ「アース!なんでこうにゃったのかにゃ。俺がいろいろ言うから、天の神様が怒っちゃったのかにゃ。アース…」
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ア「ライド!」
アースは飛び起きた。夢にライドが出て来たのだ。
ア「ライド…!ああライド!きっと寂しがっている。怖がっているはずだわ。私が助けてあげなくちゃ!」
(ライドは猫なのに高いところ苦手だもの。今頃あの木の上で…)
アースは歩き出した。ライドがいる木を目指して。
その時はまだ気づいていなかった。暗闇に不気味に光る眼をしたバケモノが後ろにいることに…。
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バ(グへへヘ、人間ミ-ツケタ。アイツノ心ヲ読ンデヤロウ)
『ライド…!ああライド!きっと寂しがっている。怖がっているはずだわ。私が助けてあげなくちゃ!ライドは猫なのに高いところ苦手だもの。今頃あの木の上で…』
バ(ライド…。ナルホド、アイツハライドトイウ猫ヲ探シテルンダナ。ソレナラコッチハコウダ)
バケモノは一瞬消え、猫になって現れた。ライドとは程遠いボサボサしている茶色の毛、不気味に光る黄色の目、大きな体。まるで化け猫のよう。
バ「ニャー」
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バ「ニャー」
ア「ライド…?」
後ろを振り返るアース。そこにライドはいなかった。
ア「あれ?確かにライドの鳴き声がしたんだけど」
バ「ニャー」
今度は前から鳴き声が聞こえた。見ると前の方に不気味に光る黄色い目をした猫がいた。
ア「ライドじゃない…。でも、こんな森の中に1匹だけでかわいそう」
心の優しいアースは、バケモノ猫と一緒にライドを探そうと思った。それなら自分も心細くないし、猫も安心するんじゃないかと思ったからだ。
ア「猫ちゃん、こっちにおいで。私と一緒に探し物してくれるかな?」
猫は素直にこっちに来た。
自然と顔がほころぶ。
バ(コノ人間バカダナ。ソレモイイ。コレデイツデモ喰ウコトガデキル)
ア「探し物って言うのはね、実は猫なの。ライドって名前なんだけどね。黒い毛色の猫なんだよ。大きな木の上にいるはずなんだけど、知らない?」
猫は黙って歩き出した。アースを置いてずんずんずんずん歩いて行く。
ア「ちょっと待ってよ~!」
バ(シメシメ。ツイテクル、ツイテクル。コノママ俺ノ住ミ家ニ連レテイコウ)
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アース達は先ほどよりも険しい道を歩いていた。顔には泥が付き、服もボロボロだった。
アースの息はだんだん荒くなってくる。上り道だからか、空気が薄い。猫は相変わらず、ずんずん進んでゆく。時々こっちを見るが、どれだけ遠くにいても見えるところにいたら、そのまま進んでいく。とにかく早い。異様に早い。
ズルッ
ア「あぁ!」
足環滑らせて下に転げ落ちた。幸い木にぶつかって止まることが出来たが、アースは下まで落ちてしまった時の事を考えて顔を真っ青にした。
ア「いてて...」
どうやら足をひねってしまったようだ。なかなか立つことが出来ない。
見かねた猫がこちらまで下って来た。
どうやら猫の様子がおかしい。さっきよりも大きくなっているように見える。口が開き、鋭い牙が見えていた。
バ「ドウヤラ、モウ、限界ノヨウダナ」
しゃがれた声だった。
猫はむくむくと大きくなっていき、しまいにはアースの身長を優に超えると思われる高さになっていた。
一瞬猫は消え、バケモノになって現れた。
アースが見たことのない種族のバケモノであった。
全身振るえる。顔は真っ青。足は動かすことが出来ない。すなわち、逃げることが出来ないという事。
バ「オマエニハ死ンデモラウ。ジャアナ」」
大きく口を開いた。真っ赤な舌。鋭くとがった歯。
食われる、そう思った。
ア「ライド…ごめんね。見つけられなくて。スカイも、ごめん。みんな、ごめ__」
死ぬ覚悟をしたその時だった。
?「あぶない!」
シャキンッ!
バ「**ギェェェェェ!**
何かが着れるような音と、バケモノの叫び語が聞こえた。
目の前にあった大口がなくなり、安心していた。
ア「あ、あの!あなたの名前は?」
ヒ「ヒートヘイズと申します。あなたは何をしているのですか?」
ア「私は、飼い猫を探していて...。あの...~~~~」
ヒ「あー、そこなら私が案内しましょう。付いて来てください」
ア「ちょっと待って!」
ヒ「何でしょう」
ア「ごめんなさい。ただちょっと問題が発生してまして…」
ヒ「なんですか?」
ア「足が…」
ヒ「足?」
ア「ひねったみたいで。立てないんです」
ヒ「ちょっと見せて下さい」
ズボンをめくって、靴下を下げた。ライトを当てると、赤く腫れあがっているのが分かった。
ヒ「うーん…。私にはよくわからないのですが、歩けないなら、おんぶしますね」
ア「はい。よろしくおねが...へ?あ、ちょ、まっ」
あっという間におんぶされた。そのまま険しい山道を下っていく。
アースはただただ感心することしかできない。
少しばかり平坦な道に出ると、目的地まではすぐだった。
ア「あ、ライド!」
ラ「アース!来てくれると思ってたにゃ!ん?そいつは誰だ?」」
ア「この人はヒートヘイズさん。私をバケモノから守ってくれたのよ」
ヒ「どうも」
ラ「それはそれは、それはよく守ってくれました。俺様からもお礼を言わせてください!」
ヒ「どういたしまして」
2人と1匹はすっかり仲良くなった。
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ア「これでよし!」
船を作り直したアース。
2人と1匹は船に乗り込み、大空へ飛び立った。
無事満月の夜に着くことが出来、皆でわいわいパーティーを楽しんだ。
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--- 完 ---
(原文:あめじすと💎)
主人公:アース(ア)
飼い猫:ランド(ラ)
友だち:スカイ(ス)
「相手の心を読み幻覚を見せる」という特別能力を持ったバケモノ:バ
勇者 :ヒートヘイズ(ヒ)
今回はあめじすとが執筆しました。
一話完結はやっぱり難しい…。
時間がなくて無理やり終わらせる形になってしまいましたが、ご了承ください。