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第3章:月夜の咆哮《ループスの記憶》
森は、月の光に照らされていた。 葉の隙間から差し込む銀の光が、地面に模様を描いていた。 風は止み、空気は張り詰めていた。 夜の静けさは、安らぎではなく、緊張に満ちていた。
ルミナは、森の奥へと進んでいた。 ペガスス座の解放から数日。 星霊の声は、次なる記憶を指し示していた。
「月夜に吠える者。忠義に生き、怒りに死んだ者。 彼の記憶は、牙のように鋭く、心を試すだろう」
森の中心には、石の祭壇があった。 そこには、爪痕のような裂け目が刻まれていた。 ルミナが手をかざすと、冷たい気配が彼女を包む。
「私は王に仕えた。忠義を誓い、命を捧げた。 だが、王は私を裏切った。 私の群れは滅び、私は怒りに染まった。 星霊となった私は、月夜に吠え続けた。 だが今、私の記憶は封印されている。 あなたは、私の怒りを受け止められるか?」
ルミナの心に、痛みが走る。 彼女にも、信じていた者に裏切られた記憶があった。 星霊の声は、彼女の傷をえぐる。
「私は…怒りを知っている。 でも、それだけでは星は輝かない。 あなたの忠義は、まだ空に残っている」
その言葉に、森が震えた。 月が輝き、祭壇が光に包まれる。 ループス座が、夜空に戻る。
ルミナの周囲に、氷の狼が現れる。 咆哮が響き、敵の魔力を凍てつかせる。
ループス・ハウリング:敵全体に氷属性ダメージ+沈黙効果。
星霊の声が、静かに語る。
「あなたの言葉が、私の怒りを鎮めた。 忠義は、裏切られても消えない。 次に待つ星霊は、炎と毒を纏う者。 彼女は、復讐の刃となった。 その記憶は、あなたの心を試すだろう」
ルミナは、月夜の森を後にした。 空には三つの星座が輝いていた。 だが、次に向かうのは――砂の谷。 そこには、封印された星霊《スコーピオ(さそり座)》が眠っている。