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キスで私を狂わせて
「じゃあ取り敢えずお前離れろ」
そう言って彼は私を強引に引き離す
もう一度彼の顔をじっと見る
「何だよ…もしかして俺に惚れたか?」
そんなはずない、さっき最愛の人に振られたばかりで誰かを好きになれるはずがない
それなのに
この人の顔を見ているとこんなに胸が痛くなるのは何故だろう
「じゃあ綾、一旦お前の家戻るか?」
「…綾瀬成美です」
「ん?」
「|綾瀬成美《あやせなるみ》です」
「お前ぜんぜん名前違うじゃねーか、何で綾なんだよ」
「分かんないです」
「はぁー」
この人、龍之助さん?はよくため息をつく人なのだろうか
「あの、貴方の事は何とお呼びすれば…?」
「龍之助でいいよ」
「分かりました、龍之助さん」
「ん」
私がそう言うと龍之助さんは満足そうに笑い私の頭に手を置いた
「そんな事より、俺はお前の未来を保証する。だからお前もある程度俺の言う事は聞いてもらわなくちゃいけないってワケね」
「覚悟は出来てます」
見ず知らずの私を助けてくれた人だ、少し可笑しな事を言われてもこの人の為に出来る事があるなら私は何でもしたい
「覚悟を決めるほどの物ってワケじゃないけど…まず1つ目ね、俺の家に今日からお前も住む事」
「え」
そんな事でいいのだろうか?むしろ私にとってはありがたい事だ
「2つ目、何かあったらすぐに俺に知らせる事。そして最後3つ目だけど、俺を癒す事。どう?悪くない?」
悪くないどころか…私には有り難すぎる条件でしかなくて
最後の龍之助さんを癒すって事だけはどうしても理解できなかったのだけど
「全然有り難いのですが…龍之助さんを癒やすとはどう言う事でしょうか」
「あぁー…俺さ?この外見のせいで色んな女が寄ってくるんだよ」
普通の男がこれを言ったら「うわっ」とドン引きするだけだが…顔のいい男って言うのは得だ
それに寄ってくるのはその外見のせいだけでは無いと思うが…
「でもさ俺自分の好みの女以外興味ないワケ、つまり興味ないヤツの相手すんのは嫌なんだよ、分かる?」
そうやってしれっとクズ発言する龍之助さん。それでも翔琉よりマシだと思った
「どんな女の人がタイプなんですか?」
「タレ目で目と乳がデカい女」
えっとつまりそれは私がそれに該当すると言う事だろうか…?
「それに私が当てはまると思いませんが」
「いやいやここまでドンピシャな人逆にいないでしょ、俺初めて見たよ。こんな俺好みの女」
自分の容姿を気にして生きてきた事なんて無いがどうやらイケメンに外見を褒められる事は気分がいいらしい
私が機嫌良さそうに微笑むと彼はまた口を開く
「取り敢えず今からお前を俺の家に連れて行くワケだけど…その前に取りに行きたいもんある?」
そう聞かれて私は鞄の中身を確認した
ちょうど職場に持って行ったまま中身を放置していたので鞄の中には色んな物が入っていた
財布、スマホ、ヘアアイロン、コスメ、ヘアゴム、アクセ、日傘、日焼け止めと女子として最低限持ち合わせて置きたい物は全て入っている様だった
「特に無いです」
「なら俺の家直行だな。足りねぇもんは俺が全部買ってやるし、さっきも言ったけどお前の未来は俺が保証する。だからお前も頑張って俺を癒やせ」
「はい」
そう言われて即答してしまう私はもう彼の虜なのかもしれない