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#1 鬼の目覚め。
「…鬼ってまじでいるんだ…厨二病の考えかと思ったけどこんなもん見たらモノホンかぁ…私もこの鬼を滅ぼす事になるんだよね…」
帰り道、歴史書と睨めっこしてそう呟くのは成瀬中高一貫校の通う普通の女子高校生の豊臣神楽。
昔から父親に鬼の話をされていたがその度に嘘だと思っていた。
だが授業で習い、少しの興味で歴史書を借り中を覗けば鬼の存在がしっかりと記されていた。
ここまで記されているともう信じる事しか選択肢はなく、仕方なく信じる事にした。
歴史書を閉じ、スクールバッグに仕舞ってはスマホを取り出して通知欄を見る。
鬼に襲われた友人の桜舞がここに入院しているため何かあってはいけないので特別にスマホの持ち込みが許可されており、定期的に確認している。
「は~…桜舞早く退院してよね、あの病院苦手なんだから…」
神楽にとって近所にある大型病院、成瀬病院は苦い思い出があり近寄り難い場所である。
だが大事な友がいるので仕方なく近寄っているのだ。
気分が落ち込んでいる中、街に悲鳴が響いた。
声が聞こえた方向を見ると微かに炎が見えた。
病院だ。病院の方から火が上がっている。
嫌な予感が脳を刺激して気がつけば走り出していた。
無我夢中で走り続け着いた頃には病院はほぼ全焼に近しい状態だった。
「はぁ…っ、あ"………ッ…さくま‼︎、…」
友人の名前を呼ぶ。
だが普段返ってくるはずの落ち着いた声は聞こえない。
目の前の光景も相まって神楽は絶句していた。
しかしそんな彼女の隣にいた中年男性は焦った笑顔を浮かべ声をあげて笑っていた。
この街に住む人の大事な人が沢山いるのに何故この人は笑っていられるのだ。
どれだけの人の命が人の手によって奪われたのか。
考えが渦巻けば渦巻くほど神楽の心は黒く怒りに染まっていった。
「ねぇ…おっさん………なんでテメェは笑ってられるんだ?なんで?大事な人がいなくなってんだよ!?なんとも思わないわけ⁉︎冗談でも不謹慎だよ、常識の範囲外なんだよお前は‼︎へらへら笑って……この病院の先生や患者さん、看護師さんに謝れよ!患者さんのご親族に謝れよ…」
怒りをぶつけ、泣き崩れる。
もう周りを見れば犯人は一目瞭然だった。
神楽の声を聞いた住人は一斉にその中年男性を見つめた。
そんな中神楽の中にはただ一つ、「絶対殺す」。
その信念があった。
頭からはツノが生え、爪は尖り犬歯も鋭く尖った。
今の神楽の姿は歴史上に載る鬼そのものだった。
そこらに落ちていた石を拾えば大麻(おおぬさ)に変え、巫女そのものの姿に成り果てた。
街とか関係なく、上にあげた大麻を振り下ろす直前誰かに殴られたような感覚に襲われた。
鬼の力の制御が効かなかったせいかすぐに姿は元に戻り気を失った。
「……ここじゃ人目につく、…ど…しよ………れ、玲央奈ぁ~…」
「その子連れて早く戻るよ、私達はもう既にバレてるから学校に預けたらすぐ拠点変えるよ。いいね、明羅」
「は、はぁーい…」
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目を覚ませば見覚えのない天井。
意識が少し曖昧な中、体を起こし周囲を見渡す。
中は病室のようだが微かに不気味な雰囲気を纏っており、体が強張る。
ガチャ
乾いた木の音が気持ちを和らげる。音の方向を向けば神楽とはまた違う垂れたツノを生やした気怠そうな男性が入ってきた。
起きている神楽に気付けば落ち着いた低い声が少し漏れる。
「あぁ…起きたのか…回復早ぇなぁ…まぁ、血のおかげだろ…よかったなぁ、命が尽きなくて。下手したらお前死にかけてやがったからなぁ?鬼の血に感謝しとけぇ…」
「鬼の血…?命が尽きる…?何の話?あとここどこ!?あんた誰なの、そのツノ…」
「順を追うから落ち着けぇ…俺は話すのは得じゃねぇんだ、こいつらに任せるけどよぉ…」
ギシ、と軋んだ音のする椅子に腰を掛けカルテの様な物を見つめる。
無言で数分見つめれば机の方を向きペン立てにあるペンを取って何かを書き込む。
疲れているのか、書き込みが終われば机に突っ伏してしまい「あ"ー…」と低い唸り声を出す。
老人の様な動きを見つめていれば丸い木の音が数回聞こえる。来客が来た様だ。
「彗月崖せんせー、入っていい?あ、玲央奈だよ。明羅も連れてきたよ~!」
「彗月崖でいいって何回言ったら分んだぁ…?まぁ…入れ、豊臣に話しとけ…俺はまとめておくからよぉ…あと豊臣ぃ…説明が終わればお前に質問があるからよぉ…?」
ドアが勢いよく開けば悪魔の様にピンと立ったツノを生やし少女と怯えてヤギの様なツノを生やした少女?少年?が立っていた。
部屋に入れば神楽の座っているベッドの近くに椅子を引いて座り込む。
彗月崖と呼ばれた男と数回話せば目線はすぐにこちらを向きまじまじと見つめられる。
ゆっくり見つめればまた彗月崖と話し、目線を戻す。
「えーっと、君が『鬼斬滅委員会』会長の豊臣尽央の娘さん、豊臣神楽ちゃんであってるかな?まぁあってるんだけど、鬼の話するね。私は鬼の力に詳しいだけだから明羅、任せたよ。大丈夫、緊張しないしない」
「ふぇぇ…玲央奈いきなりすぎるよぉ…あ、ぁ…えっと明羅…です…。
お、鬼の話…って言っても授業で習ったよね…?暴走をきっかけに存在しちゃいけないって言われてるんだけど…ここはその鬼達の隠れ家みたいな場所…過去を乗り越えた人、望みが低い人…すごく大きく分ければこの二つの人に昔存在した鬼は血に取り憑くんだ…君もその1人だよ…家系も何も関係ないんだ、武士の家系でもなるからね…」
「は、話がよくわからなさすぎてやばみ…とりあえず私は鬼の子なんだよね?そこはわかった…でも何でここに運ばれたの?」
「あ、それは私が話すよ。その前に私は玲央奈、鬼の確保と育成、保護を中心にしているよ。
さっそく運ばれた理由から話すけど、神楽ちゃんの住んでいた街の病院。あの近くにいたおじさんが原因で燃えたんだよね。人の怒りや大事な人を失った恨みで中に取り憑いた鬼の血が暴走を始めたの。個体にも寄るんだけど生まれてすぐ発動する人もいれば死ぬ直前までわからない人もいる。神楽ちゃんはさっき明羅が言っていた過去を乗り越えた人に分類されるの。
そして鬼にはそれぞれ自能力と言って自分だけの能力を持ってる。神楽ちゃんの場合は多分祓いの巫女だろうね。それか変化自在。まぁ…前者だと思うよ、見た限りね。
力を使うには息を殺して手に力を込めて念じないといけない場合がほとんどでね、例外もあるんだよ。部隊にいる人がそう。あとそこの彗月崖先生も。
暴走状態は恨みの念が強すぎて自我が保てなくなった。だから人々を巻き込み掛けたんだよ。…明羅が幻痛を感じさせたからよかったけどさ」
「長いな…とりあえず能力ね…にしてあのおっさん…」
説明を受け、頭がパンクし掛けている神楽。
もう夢なのか現実なのかわからなくなっていた。
今いる場所は鬼の隠れ家。そしてそれぞれ個体によって能力を持ち念じる量で暴走状態に入る事ができる。
そこまでは神楽の頭の中でまとめられた。
それ以上は順を追って理解していくしかない。国語どころか勉強が苦手な神楽にとって聞き取ってまとめ、その日のうちに全て記憶するのは至難の業であり感覚で覚え火をかけて理解していく体質だった。
明羅、と名乗った中性的な子が「…追記、なんだけど…」と声をあげた。
「鬼…には鬼祖って言う特殊な血を引く子もいるんだ…鬼祖の血はあまりにも強くて、寿命が少ないの…長生きするのは難しいんだ。長くて4年、短くて1週間も持たない。しかも鬼祖の血を引くのは1人しかいない、引いている子が死んでしまえばまた別の子に取り憑いて寿命を失う代わりに強力なものが手に入る…」
目を見開き、唖然とした。
寿命が短くて1週間も持たない鬼祖の血。
誰が継いでいるのかもわからないがもしかしたら自分なのかもしれないと言う恐怖に苛まれていた。
これからの生活、何があるのかもわからないのに別の恐怖を植え付けられるこの世界に神楽は今にでも逃げ出したかった。
でも今逃げ出せばあの時近くにいた人は神楽を殺しにかかるだろう。「鬼斬滅委員会」にでも通報されたら父親に殺される、それだけは勘弁だった。