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誘惑
少し長めです。
「…え。」
目の前には私のペアリング制度の相手、一ノ瀬夏恋が立っていた。一瞬少し不機嫌そうな顔をしていたような気がするが、すぐ笑顔に戻していた。
--- 気のせいか ---
「やっほ。百瀬さん。」
「い、一ノ瀬さん…?なんでここに…」
「なんでって、あたしの部屋隣だし。」
あ、そっか。そういえばそうだった…けど違う!そういうことじゃなくて!なんで私の部屋の前にいるのってことを聞いたのにっ!
「あ、まあそうだけど…。私に何か用ですか…?」
「あー、えっと。まずお邪魔してもいい?立ち話もなんだし。」
「お邪魔しまーす。」と言いながら一ノ瀬さんは靴を脱ぎ始めた。
何だろう、何か話があるのかな。
私は先陣を切って歩き始めた。
---
ソファに腰掛けると、一ノ瀬さんも少し間隔を開けて座る。
シーン
まるで時が止まったように静かな時間が流れていく。
すると、
「…ねえ。」
横から声がした。振り返ると、そこには少し上目遣いをした一ノ瀬さんの姿があった。
「な、なんでしょう?」
「…。」
彼女は少し黙ってから再び口を開いた。
「その、あたし達今日からペアになったじゃん…?だからその、**お互い名字じゃなくて名前で呼ばない?**」
「…あ、なるほど…。」
名前で呼ぶ、か。なかなかハードなクエストだなぁ。
「いいですよ。」
「へ!?ま、マジ!?」
あれ思ったより嬉しいそう?
「じゃ、じゃあ『ほのか』って呼んでもいい?」
「あ、えと、はい。」
「あたしのことはなんて呼んでも構わないから。」
「えっとじゃあ、『夏恋さん』?」
「なんで疑問形。てか、呼び捨てじゃないの〜?」
むぅと頬をぷくっと膨らませた夏恋さんに、思わず胸がドキッとした。てかドキッとか、私ったら何考えて…!?
「いや、ちょっとまだ呼び捨てはいいかなって…」
「てかてかてかぁ〜!なんで敬語なのっ!あたしだけ馴れ馴れしく話してるみたいじゃん!」
可愛い、という言葉が頭の片隅に現れた。
--- !?またなに考えてるの私っ! ---
私はその言葉の取り消しに取り掛かる。そのせいで目の前で起こっていることに気づけなかった。
「ねえ、敬語じゃなくしてくれる…?」
「!?」
急に大きいような小さいような声が聞こえたと思ったら、目の前に夏恋さんが、いた。猫のような形で。(伝われ)すると、私の顔がだんだんと熱くなっていくのが自分でも分かった。
上目遣いで私を見てくる彼女の姿を見て思わず、
「…っ、はいっ。」
返事をしてしまった。
「…?」
そしたら、夏恋さんの身体が固まっているのが分かった。どうしたんだろう、もしかして具合でも悪
「あ、あのさ。」
ふと、夏恋さんの声がした。少し俯いている顔には頬が赤く染まっているような気がした。
「?」
「あたし達ペアになった、じゃん。だからこれからどうしよっかっていうか。」
これから…?
「その、ペアリング制度ってさ。目的は恋愛教育ってことでしょ。だからその…」
夏恋さんが近づいてくる。動揺した私は一歩下がる。ソファがギシときしむような音が聞こえた。
「…ほのかは、このことについて、真剣に考えてたり、してる?あたしのこと、とか…」
すると、夏恋さんは私の制服のブラウスを少し控えめに引っ張る。
夏恋さんのことを…考える…!?
それって一体どういう…!?
頭が混乱してきたので、一旦、もう少し下がって距離を少し取ろうとしたそのとき
「あ。」
「わ。」
私の右手にソファの生地の感覚がないと思うと、知らない間に倒れていたのだ。
ー夏恋さんと一緒に。
---
---
その瞬間、何が起こっていたか理解出来なかった。
お互いの心臓の音が聞こえる、その距離まで私達は密着していたからだ。
「「!!??」」
私達がようやく理解したときにはもう、二人の唇が重なり合っていた_。
お読み頂きありがとうございます!寧依です!
いやぁ、結構進展がありましたね〜!まさかラストであんなことになるなんて!これは今後が楽しみな展開になってきましたね!
応援コメントも下さると嬉しいです!一言でもいいので!コメント来ないと読んでくれている人いるのかな〜って不安になるのでね。お願い致します!
それではまた次回お会いしましょう!