公開中
第四話「買い物」
「なるほど。やっぱりまずは、中三範囲の復習からかな……」
パソコンのブルーライトが、痛々しく脳と目を刺激してくる。孤独感の主張も相まって、少し薄暗くも思える部屋の中で、私は調べ物をしていた。
「うーん……。勉強の参考書を調べたはいいけど、種類が多すぎて分からないや……」
私は、勉強のための参考書だったりを調べていた。
今まで、なんだかんだで本腰を入れて勉強をした事が無かった。少しずつはやっていたが、そこまで必死に、とはしていなかったのだ。周りに追いついてやるとか、むしろ抜かしてやろうとか、そういう志は、今まで持った事が無い。
でも、私もそろそろ変わりたい。あの稲荷崎のバレーのプレイみたいに、キラキラと輝いてみたい。スポーツと勉強は全く違うが、それでも、努力をして成果を出す、という点では、この二つの分野は、全く同じだと思う。だから、私もあんな風に、必死でキラキラしたい。変わりたい。そう感じた。
「どうしようかな……。とりあえず、復習できるやつから買ってみようかな」
高校一年生の時からほとんど学校に行っていない私は、とりあえず、中学三年生の復習から始めようと思った。近所の書店で買える参考書を調べて、リストにメモする。お買い物以外でほぼ外に出ていない私だが、図書カードもあるし、文房具も揃えたいしなので、今回は書店まで買いに行く事にする。
「よし。早速明日にでも、買いに行こうかな」
ちょっと浮かれ気味になりながら、私はパソコンを閉じて、今日の晩御飯を作りに台所まで歩いた。
--- *** ---
それから翌日。私は予定通り、夕方辺りに書店と文房具店に赴いて、買い物をしていた。
「えーと、数学はこれで、社会は歴史と地理と経済……多いな」
書店では社会と公民に圧倒されたり、文房具店ではニオイ付き消しゴムなんて懐かしい存在にびっくりしたり、外でお買い物をして良かった、と思う事ができた。通販だったら、この気分はおそらく味わえていない。いつかまたここらに来たいな、と思いながら、私はまた夕焼け空の帰路を歩いていた。
「やっぱり、参考書は重いなー……」
もうずっと運動をしていない貧弱者の体には、こんなにずっしりとした本達は、中々に堪える。途中途中で、思わずよろめいたりしながら、私は淡々と、単純作業のように歩き続けた。少し前に怪我した右足の傷が、少しだけ痛みながらだった。
「はぁー、もう疲れたよ……」
なんとか自宅前に辿り着いた時には、私の全身は悲鳴を上げていた。腕も足も、もう休ませてくれと号泣しているようだ。一刻も早く、ソファに座るかベッドに横たわるかをして、体を休めなければ。そう感じた。
同時に、妙なデジャブ感を覚えた。何かが以前と同じ景色だ、と思った。
「――#苗字#さん?」
「……あ、北さん……!」
前と同じ、信介さんに合うような、そんな景色。夕焼けの色も、まるでセッティングをしたかのように、前と全く同じな、綺麗な朱色に染められていた。