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蒼空に謳う
ふわふわしたセミロングで色素の薄い髪、大きな鼈甲飴色の瞳。
そこらのアイドルなど比にならないほどの整った顔立ち。
それに加えて、成績優秀、性格も良いとくればそれなりに目立つものである。
何らかの才能があるなら尚更__
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風が吹いて視界の隅の髪の毛がなびく。
空は蒼く澄んでいた。
まだ吐き出した息は白くない。
「ありがとう」
静かな裏庭に今すぐ消えそうな、けれども凛とした声が響く。
「だけど__ごめんなさい」
憂いを含んだその声は草の影に身を隠している少年の耳にも届いていた。
そっか、ごめんね。ありがとう
そう言って向き合った2つの影の1つが動く。
こちらに来る気配がして少年は息を顰めた。
「|玖利主《くりす》、いつまで隠れてるの」
少女は草の影に目を向ける。玖利主は首をすくめて姿を見せた。
「バレてた?」
「バレてた」
少女がふっと微笑む。玖利主は彼女が怒っていないようで、まず安心した。
しかしなんとなく居心地が悪い。
「いや、、だって、|莉子《りこ》は上級生に目ぇつけられてるじゃんよ。もし__もしまた彼奴等になんかされたらっ」
焦った口調の玖利主に莉子は彼の手を握った。
「大丈夫怒ってないから。あんなこともきっともう起こらない」