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きっとそれは何かの間違いでした。
「正直いってさ、ちょっとめんどくさいって思い始めてる。」
脳を直接ハンマーで殴られた気がした。ぐらぐらぐらと、自分の信じて積み上げていた大切なものが崩れる予感がした。
「どうしてそこまで束縛しようとするの?別に私はあなたのものでもなんでもない、しかも私は対等に付き合いたいって思ってたのに、そっちは……なんだか私を崇めるみたいでさ。
私、そういうの嫌だから。
別れてもいいかな。」
衝撃で言葉も出なかった。僕はただその場を走り去った。
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家に帰って息を落ち着けると、真っ先に彼女のあの言葉が頭の中で何回も反芻された。
その度に涙が溢れそうになって仕方なかった。どうして。彼女に良かれと思ったのに。絶対喜んでくれると思ってたのに。
(落ち着け落ち着け……大丈夫、彼女が僕を嫌う訳なんてない!)
きっとこれは僕のミスリードだ。彼女の発言を、僕が恐れているあまりに変な風に解釈してしまったのだ。そうだ。
(彼女は別れてもいいかな、って言っただけ、まだ確定させる言い方はしていない……つまり本心では引き止めてほしい、そうだ。全然やり直せるじゃないか。)
ただ勘違いで走り去った事を彼女に謝ればいい。それだけだ。
(よし、メールだと気持ちが伝わらないかもしれないから明日直接会って言おう。)
そう考えると自然と前向きになれた。
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「昨日はいきなり帰っちゃってごめん!その、僕は君の発言をちょっと勘違いしてた!」
「……勘違いって、何?」
「だから、僕とこれからも付き合いたいって事を、僕から言ってほしいっていう……」
「そんなの一言も言ってない!……だからもう関わらないで!気持ち悪いから!」
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「気持ち悪い」
そう、はっきり彼女に言われてしまった。
(間違いだ、これは絶対何かの間違いだ)
僕の頭の中でぐるぐるとこの言葉だけが巡る。思考停止にも近いこの状態は、僕にとって最も都合のいい結論を導き出した。
(彼女は彼女じゃなかった……本人じゃなかったんだ。僕の友達が僕を驚かせようとして……いや、もしかしたら生理中とかでイライラしてつい言っちゃったとか……?だとしたらきっと今頃彼女はすごく後悔してるはず……ああ、泣いてたらどうしよう。僕が慰めてあげないと!大丈夫だよ、気にしてないからねって言って、不安を早く取り除いてあげないと、彼女が落ち込んじゃう…直接話すのもいいけど、今話したいしとりあえず電話かけよう!)
そう思って彼女の番号をプッシュするも、まったく繋がらない。
プルルル、プルルル、プルルル。
虚しく部屋にコール音が響く中、その数が増えていくたび僕は焦燥感に駆られていた。
(まさか、まさか事故に遭ったりしてたら……?)
居てもたってもいられなくなり、僕は自宅を飛び出した。
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彼女の家のチャイムを鳴らした。
「はーい」と言いながら、なんと彼女がドアを開けた。事故に遭った訳ではなさそうだ、と安堵すると共に、何故か僕を見た途端恐怖に顔を引き攣らせてドアを閉めようとした彼女の行動が不可解だった。
ドアを閉められると話せない(僕の声はドア越しで届くほど大きくない)ので一旦ドアを力一杯引いて玄関にお邪魔させてもらう。
座り込む彼女に、「事故じゃなくて本当よかった……心配したんだよ」を伝える前に、靴べらで殴られそうになって僕は違和感を覚えた。
なんでだろう、えらく僕を拒むのは、どうしてなんだろうか……
「来ないで!!ねえ!!帰って!!」
彼女が悲鳴を上げながら奥の方へと後ずさるのだけれど、
「僕はただ……」
「出てって!!」
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僕は考えた。
あれは間違いなく普段の彼女じゃない。何があそこまで彼女の気持ちを乱しているんだろうか……?
そういえば。僕の中で何かがつながった。彼女は僕を奥の部屋に入らせまいとするかのように後ずさっていた。もし、奥の部屋に危険が潜んでいたら?
実は、僕が気づかなかっただけで彼女は事件に遭っていた。そう、電話に出なかったのは、家に強盗が入ったからで、奥の部屋には強盗がいた。彼女は命を握られ脅されているのだ。どうしよう、このままでは彼女が危ない!
そう思った僕は迷わず警察に電話した。僕の彼女の家に強盗が入ったんです!僕の彼女を脅しています!助けてください!!
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結果、なぜか僕がストーカーとして連れて行かれた。
どうして?僕にはわからない。
ながくなってしまった!
一応解説〜
↓
主人公はヤンデレ的な何かです。常に彼女を監視して何もかも先回りしたり制限したりで、彼女は別れようと切り出します。
しかし主人公は持ち前の想像力で彼女の発言や行動を自分に都合のいいように解釈し続け、明らかに彼女が嫌がっていても脳内で自分以外が原因であるシナリオを作って自分を納得させています。
それで、彼女の家に強盗がいると思い込みます。(急)
ですがいるはずもなく、到着した警察は彼女から話を聞き、主人公がストーカーとして捕まりました。
そんな話です。
わかりづらかったらごめんなさい!
よかったらコメント……いや、読んでくださっただけで感激です!
長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました!ばいびる〜