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第2話「私の仲間?」
森の奥へ進むほど、光は淡く、空気はひんやりしていった。
ミオの隣では、例のもちもち生物――ポヨが、相変わらずぽよぽよと跳ねている。
「ねえポヨ。ほんとに道わかってる?迷ってない?」
「ポヨッ!」
自信満々な声だけど、どこからどう見てもただ跳ねてるだけにしか見えない。
「まあ、ついてくだけなんだけど……」
ミオがぼそっと呟いたその時。
バサァッ!!
頭上で木が揺れ、何かが落ちてきた。
「わっ!?なに!?」
落ちてきたのは――人間だった。
いや、人間“っぽい”と言うべきか。
長い耳、淡い緑色の髪、そして顔には眠そうな表情。
地面に落ちてもなお、むにゃむにゃと寝言を言っている。
「……誰?」
「ポヨ~……」
ポヨも首をかしげる。
ミオはそっと近づいて揺さぶった。
「ねえ、生きてる?大丈夫?」
すると、ぱちりと目を開けた。
「あ、やっと見つけた……転生者さん……」
「へ?」
突然の指さし。突然の指名。
「ぼくは ルナ。“風の民”っていう種族の見習い守護士なんだ。ミオさんを探すようにって言われてて……」
「探すように?誰に?」
ルナはぺたんと座り込み、木の葉を払う。
「この世界の管理者《アーク》っていう存在だよ。転生者にはガイド役が必要だからって。」
「……ガイド役?」
「うん。ぼく、今日からきみのサポートをする“仲間”…のつもりなんだけど……」
ルナはそわそわとミオの目を見た。
ミオは一瞬言葉に詰まった。
「仲間」なんて、そんな簡単に名乗られても――。
助けを求めるのなんて、ずっと苦手だったし。
人を頼れば裏切られる気がして、誰も信じられなかった。
胸の奥が少し重くなる。
するとルナは、ふっと柔らかく笑った。
「仲間って言っても、急に信じてくれなくていいよ。ぼくもそんな実力ないし……寝てばっかりだし……」
「いや自覚あるんだ」
「でも、困ったら呼んで。ぼくは“味方”でいたいから」
その言葉が、ミオの心を軽くつついた。
“味方”
そんなふうに誰かに言われるのは、いつ以来だろう。
ミオは目をそらしたまま、ぼそっと言う。
「……別に、嫌じゃないけど。仲間って言うなら……その……ちゃんと役に立ってよ?」
「まかせて!たぶん!」
「“たぶん”つけるな!」
ぽよん、とポヨが跳ねた。
「ポヨッ!」
「あ、ポヨも仲間だよ。三人で行こ!」
ミオは吹き出した。
「いつからポヨが仲間枠なの?」
「最初から。ぼくよりしっかりしてるし」
「ポヨッ!」
誇らしげに胸(?)を張るポヨ。
ミオは思わず笑ってしまう。
こんなに自然に笑えるのが不思議だった。
「……まあ、悪くないか。仲間がいるのも」
森の奥から、やわらかい光が揺れた。
“記憶の欠片”らしき輝きが見える。
ルナが身を乗り出した。
「ミオ、あれが最初の欠片だよ!」
「よし……行こっか、みんな!」
ミオは初めて、自分から一歩踏み出した。
知らない世界。知らない運命。
でも、ひとりじゃないなら――
少しだけ進むのが怖くなくなる。
こうして、ミオの旅は本当の意味で始まった。
次回第話「アルデニア町」
12月13日18時投稿!