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旅人。
クラクサナリデビ様が私の家に訪れて、数日が過ぎた。
ドアを優しくノックする音がして、私はそれに対応し、ドアを開けた。
そこには、クラクサナリデビ様と1人の少女が立ち、1人の幼女が飛んでいた。
「パイモン、旅人、この人が#名前#よ。仲良くしてあげて頂戴ね」
「それじゃあ仲良くお願いね。旅人、パイモン、#名前#」
と言って、クラクサナリデビ様は旅人とパイモンという人物たちを強引に私の家に押し込んで、ドアを閉めた。すると金髪の少女は私の服装をまじまじと見つめて
「その服しかないの?モラがないの?貸そうか?」
と言った。
私のこの服は綺麗とは言えない、というか|草臥《くたび》れていて汚いからだろう。
「……モラはあるから大丈夫」
ポケットの中からモラを取り出そうとする金髪の少女。初対面の相手にそう聞くのは失礼に値するのではないか、と思ったが、なぜ初対面の相手にそこまでするのか、とその考え以上に不思議になるが私は断った。
「お邪魔します〜!」
「お邪魔します」
二人の声が重なった。そして、二人はリビングに向かっていった。
二人より先行していた私はリビングへとつながるドアを開いた。
そして、金髪の少女を椅子に座るよう指示をして、私は紅茶の入ったティーポットと、カップを2つ持っていった。
「オイラの分はないのか?」
空を飛ぶ幼女は不思議そうに首を傾げて、そう尋ねた。
「子供向けの味ではないから」
私は、ポットからカップへ紅茶注ぎながら、静かにそう発した。
その幼女は一般的に見たら、年齢的には子供じゃないのだろうが、私の方が遥かに年上である。そして、その顔で幼女と名乗るべきであろう。金髪の少女も同じことである。
「パイモンは少し私のを分けてあげるよ」
「おう!ありがとな!」
空を飛ぶ幼女はそんなことで機嫌が治ったようで、金髪の少女に向けて笑顔を作った。
「こっちだけで話してて、ごめんね」
「ナヒーダから聞いたんだけど、貴方が#名前#であってる?」
金髪の少女は空を飛ぶ幼女から目線を逸らし、私に目線を向けた。
そして、金髪の少女は私に向かって首を傾げた。
「私は、#名前#」
クラクサナリデビ様のことをナヒーダと呼んでいるのに少し困惑しているが、スメールを救った英雄さんである、当然か。
「貴方たちの名前は?」
私は紅茶を口に運びながらそう発した。やはり、この紅茶は最高だ。
「私は蛍。私たちは様々な国を旅してる旅人なんだ。好きに呼んでね」
「こっちはパイモン」
そして、空を飛ぶ幼女を手で指して私に向かってそう言った。蛍は笑いかけていた。
「ナヒーダから#名前#と仲良くしてあげて欲しい、って言われてるんだけど花神誕祭までここに泊まって行っても良いかな」
「どちらでも」
私は、紅茶を飲み込んだ後、蛍に向かってそう言った。
「うふふっ、ありがとう」
彼女は愛想よく、そう返事をした。
「………話は変わるんだけど#名前#はエルフなの?」
数分後、過ごした沈黙が流れた後、その空気を切るように蛍は話し始めた。蛍は恐らく、私の耳を見て判断したのだろう。
「そうだよ」
私は再度、紅茶を口まで運んで飲み込んだ。
「はえー!お前エルフなのか!」
「なぁなぁ!何年生きたんだ?エルフって長生きするんだろ?」
パイモンが急に興奮し出した様子で、私に向かってそう言った。気になる話だけ、突っかかってくるのはやめてほしい。
「もう何年生きたか覚えてない」
私は嫌だったが、その質問に答えた。
「………そうか…」
そう答えると、パイモンは露骨に残念がりながら下を向いた。
蛍とパイモンとこれからやっていける気がしない。あぁ、これからどうなってしまうのだろうか。