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考え中4
野生のごりら
町に入れたのはいい物のお金がない…。村には金目の物は無いし売れるとしても乗ってきたこの馬だけだ。ただそんな都合良く馬を買ってくれるだろうか…。途方に暮れても仕方ない。俺は早速馬を買ってくれる人を必死に探した。
「すまんが、馬は必要ないんだ。」
中年男性に申し訳なさそうに丁寧に断られる。
「またダメだったか…。」
「ごめんなアヤ。今日は路地裏で眠る事になりそうだ。」
こればかりはどんなに頑張っても仕方がない。今の時間丁度馬が欲しい人なんている方が珍しい。
その時、後ろで物音と笑い声が聞こえた。徐々にこちらに近づいて来ている。
振り返ると男性が2人おり。がたいが俺より良い。パーロ程ではないが勝ち目はないだろう。指をポキポキと鳴らす仕草をしており明らかに敵意剥き出しだ。それでも俺は会話を持ちかける。
「まずは話し合いませんk」
強烈な右ストレートが俺の左頬に飛んでくる。衝撃で3mほど吹き飛び痛みで頬を抑える。
話が通じないのは分かってたけど出会い頭殴ってくるのは頭おかしいだろ。
痛みで立てず座り込んでいると男2人組はこちらに向かってくる。
「お前さ、あちこち回って馬売り付けてくるとか迷惑なんだよ。田舎もんが村に帰してやる」
男はそう言うと腕をぶんぶんと回し戦闘体勢に入る。もう1人は片手に瓶を持ってへらへら笑っている。
理不尽な理由で殴られ何も出来ない状況。痛みと恐怖で身体が震える。
それでもなんとか、なんとかアヤだけは助けなければ。
俺はボロボロの体で荷台に立ち塞がり両手をパッと広げて守りの意思を見せる。
すると男は不愉快に思ったのか怒ったような表情でこちらに殴りかかる。
「やめといた方がいいんじゃない?死んじゃうよ」
突如として男の声が聞こえる。チンピラ男は拳は寸止めし声の方へ顔を向ける。路地裏の入り口に1人の男が立っていた。
お洒落で上品な洋服を着ており炎のような真っ赤な赤髪。上から見下ろすような冷たい瞳をしており、ポケットに手を突っ込んでいる。
「俺、この辺の領主の1人息子なんだけど、君たち牢獄行きたい?」
少し面白おかしくにやにやと笑いながら言う。
すると男達は次第に冷や汗をかき尻尾を巻いて逃げていった。
「やっぱ権力は使ってなんぼだよね〜」
赤髪の男はそう言うとこちらに向かって手を!差し伸ばしてくれた。
「ありがとうございます。」
身分が上な事もあり自然と敬語が出た。
「タメ口で良いよ。名前は?」
「レイです。そう呼ばれていま、いる。」
タメ口でいいって言われたけど急には難しいな。
「ふーん。俺はアルス。アルス・ラングレーだ。よろしくねレイ」
アルスはそう言うと微笑んだ。
その後路地裏を出て歩きながらアルスは色々聞いてくれた。
俺はパーロの事からアヤの事まで全てを話した。話して良いと思った。アルスはうんうんとたまに頷いてくれるだけでそれが心地良かった。
俺は孤独で抱え込んでたから人に苦しみを聞いて貰えると救われた。
「随分と辛いことがあったんだね…」
アルスは優しい目でこちらを見る。俺はその優しさに不思議と涙が出た。
「レイ。俺と一緒に来ないか?」
アルスが突然突拍子もない事を言い出す。
「君の困ってる事を助ける代わりに俺の野望を共に叶えてくれないか?」
急な展開に戸惑いを隠せない。こんなに良い話があるのか?それにアルスの野望ってなんだ?
「俺の野望は国を作る事だ。小さな領主の息子から王になってみせる。その為に力を貸してくれるか?」
「急に言われても…どうすればいいか分からないよ」
「俺はレイの人柄と辛い経験が好きなんだ。会って間もないけど興味を持ったんだ。まさに“運命”」
アルスは楽しそうに語りだす。
「共に来てくれるか?」
まだ理解できないがこれ以上にないまでの誘い。断る選択肢が無い。アルスの手助けがあればアヤを救えるかもしれない。パーロが見つかるかもしれない…村や村長のことが何か分かるかもしれない。俺は引き受けることにした。
「分かった。」
こうして俺はラングレー領の本邸がある。ライネンスからツリュックの町まで向かう事になった。
これが避けられない“運命”だとは知らずに。
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私はセバス・チャン。ラングレー家のアルス様に仕える執事だ。
仕え始めてはや10年…そんな私が少し気になる事がある。
ライネンスの10年ぶりの豊作を祝う宴から帰ってきた坊ちゃんがこれまでにないくらい上機嫌だからです。
歳が近い男の子を1人連れて帰ってきて笑顔を絶やさずにいる。珍しい事だ。
いつもの坊ちゃんは何にも興味を示さずのうのうと生きてるようなお方。でも帰ってきてからは生気が宿っている。
私セバス感動で涙が出そうです。うぅ…
そして気になったので聞いてみる事にしました。
「上機嫌ですがどのような事がありました?」
「ちょっとね…。所でセバス。運命って信じるかい?」
椅子に座った坊ちゃんはこちらへ振り返り少し笑いながら聞いてくる
「運命ですか…。私はそのような迷信は信じておりません。無論神も」
「そうか。俺は最近信じている。レイと出会ったのは運命そのものだ。」
「ほう。なぜにそう思われて?」
「宴がつまらないから抜け出して散歩をしてたんだ。すると路地裏に恐ろしい気配を感じてね。命の危険で体が震えたよ。」
「その路地裏にいたのが彼って訳だ。僕の好奇心を満たせるのは彼だけ。あのおぞましい雰囲気は本当なのか気になって仕方がないよ。」
「それにレイなら俺の夢を叶えてくれるはず」
そう言うと坊ちゃんは楽しそうに笑った。