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〖無数のお札〗
コメディというか、バトルというか………
語り手:橘一護
何故か残業することになり、目が醒めれば、そこには世界一の絶世の美女なんてものはおらず、
挙動の可笑しい同人作家と、挙動の可笑しい同人作家と、挙動の可笑しい同人作家と、挙動の可笑しい同人作家......。
これは夢?そうなら、絶対覚めてくれ、今すぐでかまわない。さぁ、覚めろ。
●橘一護
19歳、男性、大学生。
最近になって誕生日を迎えたらしいが、
祝ってくれるのはよく猫缶をあげにいく野良猫と従兄しかいなかったそうな。
(午後に家族や友人、バイト先の先輩も祝ったらしい)
最近の趣味だった神社巡りはやめた。
嫌いになったわけではないが、所謂ところの視えるタイプだったらしい。
怖いね。
▶幽霊が見えるか否か
一護:ガッツリ視える
柳田:全く視えない
空知:黒い霧のようにして視える
上原:ガッツリ視える
日村:全く視えない
松林:全く視えない
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爆発音が連続して響いていた。自分が映る鏡から、そっと離れてトイレを出ると、瓦礫の山と数々の動物の四肢が爆散した死体が転がっていた。
血の匂いが鼻を抜けて肉が焼けたような匂いと共に嗅ぎ慣れた火薬の匂いが漂っていた。
背中に背負われたFN P90のようなサブマシンガンを両手でしっかりと持ち、爆発音を辿って歩みを進めた。
「......どうだ...?」
いやに死を連想させる光景に目を伏せて、遠くで辺りを見渡している元気そうな女性を発見し肩を叩いて、振り向かせた。
「お”ぁ”っ......」
「その声、やめて下さい。松林さん」
「ぇ、何で...?...というか大丈夫でした?」
「...何がですか?」
「顔。良い顔してるのに、真っ青ですよ」
「...どうも...。周りがこうなってますけど、平気なんですか?」
「ああ、グロは創作じゃよくあることなので。死ネタとか、奇病とか色々ありますよ」
「...雑食?」
「そうとも言いますね。奥、見て下さいよ、翔…空知さん。バトル漫画みたいなことになってますよ」
「...もしかして、飽きてます...?」
「まさか!ただ...ほんのちょっと...もういいかなって...」
「それを飽きって言うんですよ」
そんな飽きつつある松林との話を切って、遠くの《《バトル漫画》》な光景に目を通した。
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顔を横に動かした隣で風を切る音がした。
白狐の面を被った青年の手に握られた札がなんとなく、嫌な予感がした。
避けた拍子に体制を崩して瓦礫の散らばった床に手をつきそうな横で、少年の札が近づくような気配が何か棒状の物に奪い取るようにして消え去った感じがあった。
轟音と、轟音に似つかわしくない桜の花弁。
やりやがったな、と思った。
「さっさと立って下さい、先輩なんでしょ」
言葉の節々から嫌味を感じる女性なんて一人しか聞かない。
立花心寧。彼女だけだ。ひしひしと感じる軽蔑の眼差しにため息をつきつつ、ゆっくりと立ち上がる。
後ろで毒操がいやに独特で甘い匂いのする液体を放っているのを見た。
青年を見やると、全身が液体に浸かっていて思うように動けないようだった。
しかし、何かが乗っかっているような違和感があった。
「よく避けたね、あれ」
「…どうも」
毒操の言葉に嫌味は感じなかった。
霊歌の方はこちらも手に拳を作って何やら力んでいる。
そういえば、能力は霊を操るようなものだったか。
目を擦って霞めて見てみると、確かに青年に身体を預け、頭が捻れたり、手が取れていたりする男女の姿があった。視えているというのはつくづく不運のように思える。
「…それ、乗っ取られたりしないんですか?」
「あなたと初めて会った時に乗っ取られてましたよ?」
「……嘘だぁ…」
うっすらと声を漏らして戯れていると、後ろから爆発音が響いた。
目を凝らすと男女が四肢を欠損しているような状態で達磨のようになっている。
毒操が撒いた毒は付近に飛び散っていて動きを制限されていない。
青年が札を手にとって、こちらへ貼ろうとした瞬間に何かが突き抜けるように札がバラバラになる。
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「わ…結構遠かったのに、撃てるんですね」
後ろで耳にファーをつけた松林が褒めるように呟いた。
「…まぁ…仕事なんで…」
「じゃあ、空知さん。一護君を撃てって言われたら、撃ちます?」
「いや…これ弾、消費者にしか聞かないので…」
「なんだ、つまらないの」
茶化すような質問に少し苛立ちながらも、遠くの白狐の仮面をした青年に標準を合わせる。
再度、トリガーに指をかけた時、聞き覚えのある声が頭上から聞こえた。
「|白札《しろふだ》|蘭世《らんせ》…能力は|四肢死懐陣《ししかいじん》…まぁ、なんていうか、恐ろしいね」
「善…柳田さん…」
「翔、数だけ言うから当てれる?」
「良いですけど、あれって陣貼れそうじゃないですか?」
「あー…撃てる?」
「まぁ、ギリ…?」
そんな人外めいた射撃の話をする柳田と空知の横で、松林が、
「これ、作品のネタにしても良いですか?」
仕事の話をしていました。
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バラバラになった札に舌打ちして、数枚の札を地面に置いた二秒後に結界が出来上がる。
桜の花弁が舞い、弾かれた音が横で鳴った。
どちゃりとした音が頭上で聞こえた。また、見えない何かだろう。
盾になった結界の中には毒も入れないし、刀が貫通することも、視えない何かが入ることもない。そう、たかを括っていた。
それがどうしたことかと言わんばかりに、結界を成した札の一つがまたバラバラになった。
「…は?」
その札がバラバラになった原因を探ろうと目線を合わせると黒髪や金髪が交えた足元には銃器を持った白髪の男性。
その男性に向かって歩みを進めようとした瞬間に、頭にカチリと銃器のトリガーに触れたような音がした。
横目で見たその音から先程まで行けると思っていた黒髪の青年がしっかりと狙いを定めていた。
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「まぁ、至近距離なら一護君も外さないか」
暖かみの残ったハンドガンを持ちながら柳田が笑っている。
サブマシンガンというのは基本的に連続して射出する為、単体の撃破だけを目的にするなら向かない。
そんな一つの目標を狙う状況的に速さを求められたため、しょうがなく柳田も腰から銃器を抜いていた。
「…あ、店長も撃てるんですね」
松林が感心したように言った。僕も柳田が撃てるとは知らなかった。
「こんな仕事してるんだから、粗方扱えるよ。銃器は反動がキツイからあんまりしたくないけど」
その答えに感嘆の声をあげる松林。
そんな松林を無視して、柳田に声をかける。
「お疲れ様です。白札さんは一護君達に任せるとして…なんか、奇妙じゃないですか?」
「…何が?消費者の量?頻度?能力?」
「頻度です。やけに増えたと思いません?」
「それは…まぁ、確かに。大体二週間に一回のペースできてるね。
一ヶ月に一回が今ままでだったはずだけど…流石にこれだけの頻度だと施設が完全に治ることが難しいかもしれないね」
「修理ですか?」
「そう。お金も動くし、人も動く。そこそこ迷惑被っててね…だから、まぁ…調べてみるよ。あと_」
「あと?」
「…後で話すよ。今はとりあえず、後片付けをしようか」
熱を帯びた銃器はもう、金属らしい冷たさを取り戻していた。
床に落ちた空薬莢の一つがからんと空虚な音を立てた。