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心の中で、ずっと生きてる。
自分でも訳の分からない涙が急に出てくることってあるよね。
ん?あれ、もしかして私だけ…?
突然だが、私の家庭についてお話したい。
まず、私の自己紹介。私は|佐野愛花《さの あいか》。
中学2年生だ。
そして、私の両親。
2人は私が覚えている記憶の中ではほぼ喧嘩していると
言ってもいいくらい仲の悪い両親。
私はずっと喧嘩ばかりしている親が嫌い。
内心そろそろ離婚したらいいのにと思うくらい。
それくらい血の繋がった親子でも執着しないくらい、私にとってのクズ両親。
私には友達がほとんどいないから学校に居場所がない。
そして察しているとは思うけれど家にも居場所はなく、ずっと自室に引きこもり。
だから、生きているけれど死んでいるような感覚で毎日を過ごしている。
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梅雨のある日、私が学校から家に帰ると両親は帰って来ていた。
いつもは各々の仕事をしてて家になんていないのに。
そして、2人ともいるのに喧嘩していない。
何の話をしているんだろう。
私は親にバレないように耳をすませて会話を聞いてみた。
父「俺は書き終わったから後はあんたが書け。」
母「待って。離婚した後、愛花はどっちが引き取るのよ。」
え、ついに離婚?私の引取先の話?
父「あんたが引き取れば?」
母「お金がかかるからできるならそっちに引き取って欲しいんだけど。
教育費とかのお金をそっちが半分くらい負担してくれるなら話は変わるかもね。」
父「はぁ?何でだよ。めんどくさい…」
話を聞いていると、私の存在は邪魔だったらしい。
まあ引き取られるなんてこっちから願い下げだけど。
でも、流石に酷い。
自分たちは喧嘩して私のことなんてお金がかかる邪魔者とか言って?
私がそれを聞いててどれだけ迷惑か考えたことあった?
お小遣いをほぼコンビニ弁当を買いに…食費に使ってたの気づいてた?
ああ、もう。両親のことを生理的に受け付けられない。辛い。
家出しようかな。でも家出しても行く場所がないな。
まあいいや、私のお小遣い全財産を持ってどこかに行ってしまおう。
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親に気づかれないように静かに家を出て、とりあえず目的地も何も考えずに
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて…
疲れて座ったのはある神社だった。
空はギリギリ赤とオレンジの混ざった夕焼け空が見えるくらいで、
ほとんど夜の色だった。
石の階段の上に男性が座っている。
でも気味が悪いわけでもなく、男性は神社と空に溶け込んだような
不思議な雰囲気をまとっている。
自分の顔がどうなっているか分からなくて怖くて見られたくなかったから
男性の前を静かに通り過ぎようとした、が。
「愛花。」
名前を呼ばれた。呼んだのは男性だった。
「っ!なんで名前を…!?」
しまった。話さないようにと思っていたのに反射で返してしまった。
「帰りたくない、かぁ…分からなくもないよ。」
え、名前を知ってる理由聞いたのにガン無視?そして何言ってるの。
なんで私が帰りたくないって思ってるか分かるの。
気味が悪いわけでもないって思ったの、やっぱ嘘だ、取り消し。
「無視しないでよ。僕には愛花が何を思ってるか分かってるから。
ほら、今僕のこと気味悪いなって思ってるでしょ。」
ここに来たの、間違ったな、絶対。今日は運がついてない…
「愛花には兄がいたってこと、知ってるかな。」
私には兄なんて…え?“いた“?なんで過去形?
「兄が“いた“って…?」
「ああ、やっぱり知らなかったんだ。
母親のお腹の中で心臓が止まって死んでしまったんだよ。」
「嘘、嘘だそんなの。だってそんな話聞いたことない。嘘でしょ?」
「いいや、簡単だよ。それは、親が言わなかっただけ。」
地味に会話が成り立たない。なんだこれ。
「辛いと思っていること、全部教えて。僕が全部聞いてあげるから。」
怪しい人だとは分かっているのに、なぜか私の足は男性の方に進んでいた。
気づけば私は心の中でモヤモヤしていることを全て男性…いや、
|蓮斗《るび》さんという人に話していた。
クズ両親が離婚届を書いていて、どちらも私を引き取ろうとしないこと。
それに対し私は引き取られるなんて願い下げだと思ったこと。
学校に友達が居なくて居場所がないこと。
そして、生きた心地がしないこと…
私のこんな沈んだ話を、蓮斗さんは相槌をしながらずっと聞いてくれた。
空が少しずつ夜の藍色に近づいていく。
「勝手に喋り続けちゃってすみません。私、そろそろ帰らないと…」
「帰りたくないならさ、帰らなくていいじゃん。」
「え?」
「今まで我慢してきたならさ、それくらい反抗していいじゃん。」
「でも、ご飯とか…」
「愛花が持ってるそのかばんさ、お金入ってるでしょ?
コンビニかスーパーにでも行ってお弁当買っちゃえば?」
「確かに…?あ、でも寝る場所ないし…」
「寝床ならここにあるよ、ここは神社だ。」
「えぇ、でも神社って神聖な場所だし私みたいな汚れが入ったら…」
「愛花はどこも汚れて何回ないじゃん。
神社に入るのをお断りするのは愛花の両親みたいな…クズだよ。」
うぅ、言い返せないな。
でも帰るための言い訳がもう思いつかないな。
いや、もう考えようとしていないだけだ。
ふと、思った。蓮斗さんはどこに住んでいるのだろう。
「蓮斗さんは帰らないんですか?」
「えー?愛花が帰るまで帰らないかな。」
「何それ、w」
「あ、僕に会ってから今初めて笑ったね。」
「ふふ、ふ…」
何故か分からないが、頬が緩んだからか急に涙が出てきた。
「おぉ、今度は泣いちゃった。僕が泣かせたみたいだからやめてよ、w」
「蓮斗さんが、泣かせたんですよ、私の頰を緩ませたせいで…w」
「ごめんごめん。あ、そうだ、高台に行こう。高台から夜景を見下ろしてやろうよ。
愛花の言うクズ両親も、友達になってくれないクラスメイト全員も。」
そう言って蓮斗さんは私の手を握り、高台まで連れて行ってくれた。
もう、会ったばかりとは違って、蓮斗さんは全く怖くないや。
高台に着くと空には梅雨の時期なのに綺麗な星空と、
見下ろせば私が住んでいる街はどこか分からないけれど建物の光が見えた。
「綺麗、」
私がそう呟くと、蓮斗さんは
「綺麗でしょ?僕も疲れたときはよくここにくるんだ。」
と言った。
家は帰りたくないけど、なんだか少し眠くなってきた。
「おーい、愛花?起きてる?ちょ、ここで寝ないd…」
知らないうちに私は眠りに落ちていた。
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起きると、見慣れた天井が視界に入った。
「あれ、ここ、家…?」
昨日は確か神社の高台で知らない間に寝てしまったはずなのに。
なぜか分からないけど部屋の窓が開いている。
「寒っ…」
今日は雨、降ってないや。
って、そんなことはさておき。
「いつ、私は家に帰って来たんだろう…?」
今日は休日だし、昨日行った神社までもう一回行ってみよう。
自分の部屋から出ると、両親に話しかけられた。
父「昨日の夜、ご飯出来ても食べてなかったじゃねぇか。体調悪かったのか?」
母「ご飯、ちゃんと食べなさい。」
「大丈夫。ちょっと、外行って来る。」
父「おい、まだ話は終わってな…」
親に話をされる前に家を出ていく。
きっと離婚の話が決まったんだろう。話が長そうだ。
とにかく、あの神社に行こう。
「…あった…」
神社は、家から2、3駅分くらいくらい先にあった。
私、昨日無心でここまで来てたんだ…!
鳥居をくぐって、敷地内に入る、と。
「あ、」
昨日私と蓮斗さんが話していた場所に、石で抑えられた紙がある。
紙を手に取ると、それは手紙だった。
蓮斗さんが書いたものだった。
読んでみよう。
『 愛花へ
昨日は、初めて会った僕に色々話してくれてありがとう。
でも、高台で寝ちゃったのは許さないよ。
あれから愛花の家まで運ぶの、大変だったんだからさ(笑)
あの夕方は、僕にとっていい思い出になったよ。
言っていなかったけれど、僕のフルネームは|佐野蓮斗《さの れんと》っていうんだ。
愛花の、兄になるはずだった存在しないもの。
もう愛花に会えることはないけれど、僕は兄としてずっと愛花を見守ってる。
僕も知っているけれど、あの両親はクズだと思う。
あんな奴らのことなんて蹴散らしちゃえ!
愛花は1人で生きていける強さを持ってる。
自分らしくあることを続ける強さを持ってる。
だから、自分を信じて“生きて“ね。愛花なら大丈夫。
会えなくても、僕はずっと愛花の心の中で生きてるから。
また、いつか会える日を願っています。
佐野蓮斗 』
読み終わったとき、自然と涙が出ていた。
蓮斗さんは、私のお兄ちゃんだったんだね。
蓮斗さんは、私を助けにきてくれたんだね。
「蓮斗さんとは、もう、会えないんだね…」
心がギュッと締め付けられたように苦しい。
私は、私が幸せに、そして周りを傷つけずに生きるために何ができるだろう。
蓮斗さん、いや、お兄ちゃん。どうすればいい?
「自分を信じて、何ができる?どうしたら生きれる?
ねぇ、お兄ちゃん…教えてよ…」
会ったのはたったの1日…昨日だけなのに、今の私の中で一番大切な存在が
お兄ちゃんな気がするのは何で?
もう一度手紙に視線を落とす。
「“会えなくても、僕はずっと愛花の心の中で生きてる”…!」
その言葉で、私の心はすっと軽くなった。
不思議な力か何かは分からないけれど、今ならいろんなことがうまくいく気がする。
「…話すか、親と。」
家に向かって私は歩き出した。
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手紙を読んだ日から3ヶ月が経った。
帰った後、私の予想通り両親には離婚の話をされた。
意外だったのは、引取先について私に意見を求めてきたこと。
話し合って意見がまとまらなかったのか、私の意見を聞きたかったのか…
どっちだったのかは分からないけれど、それが驚きだった。
そして、私はこう答えた。
「私は…私には、兄がいたって知ってる。」
両親は、2人揃って驚いていた。
母「なんで、それを…?お酒で酔っても言ってなかったはずなのに…」
お母さんが聞いてきた。
「会ったんだよ、お兄ちゃんに。」
父「会ったって…そんな、馬鹿なこと言うな。」
お父さんに否定されるが、それでも私は続ける。
「ねぇ、2人が仲悪いのって、そのことも原因にあるんじゃないの?」
両親は黙り込んだ。
「私が、家でどんな思いをして過ごしてたか知ってる?
喧嘩の声のせいで眠れないことだって何度もあるし、
熱も咳も出ないのに私が体調不良になってたこと、知ってる?
仲直りするなら、仲直りして。
離婚するなら、私はどっちの親とも一緒に暮らしたくない。」
言い切った。心の中で思ってたこと。
1分くらいの沈黙。体感では果てしなく長い時間が過ぎているように感じる。
母「仲直り、する?」
父「あぁ…するか。周りが見えてないって痛感した。
自分の娘にこんなこと言われるなんてな。」
母「そう…ね。悪かったわ、愛花。兄がいたこと、隠しててごめんなさい。」
そうして両親は仲直りし、今も仲がいいとは言えないが喧嘩はしなくなった。
学校でのことは、どうにもならなかった。
でも、なぜか辛くなかった。
結局は私の考え方の問題で、1人でいることに楽しみを見つけてしまえば、
マイナスな感情なんて、もう感じなかった。
居場所が狭くたって私には心の支えになってくれる人がいる。
お兄ちゃん…いや、今だけ、蓮斗さん。
蓮斗さんと会えたから今、私は私でいることができる。
私は、生きて、生きて、生きるよ。
そして|息《生き》絶えたら、また会えることを楽しみにしてるね。
うぇいうぇいうぇい(?)
4000文字余裕で超えたぜうぇい(?)
まえがきとあとがきを別日に書いたせいでテンションの温度差が激しめ
風邪ひくわ