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サイコパス…?
プロローグ
「なんでだよ…」
彼女から送られてきたメールを既読スルーして、僕はケータイをベッドに叩きつけた。
「これが、人生で最初の恋だったのか…」
1.日常→非日常
駅を出ると、明るい声が聞こえてきた。
「あ、玲くん!おはよー!」
俺に声をかけてきたヤツ…じゃなくて人、は会社の同期の小野さんだった。
「おはようございます。小野さんは相変わらず元気ですね。」
「そうかなー。昨日まで私有給休暇とってたじゃん、だから実家に帰ってたんよ。そしたらね、犬が前まではおらんかったのにいて、飼ってんの?って聞いたら、拾ってそのまま可哀想やから連れて帰ってきたってゆうてん。ホンマに怒ったわ!」
関西出身の小野さん、怒って関西弁がすごく出ている。
俺は犬を飼ったことがないけれど、確かに狂犬病…?とかあったような気がする…
「でも、病院には行って、なんとか注射…とかはしていたんでしょう?」
「いや、それがな、してなかってん!!飼って一週間経ってたねんで!?びっくりするやろ!」
「ははは…」
「ホンマにさー…」
なんだかんだ小野さんと話していると、会社についた。
小野さんとは部署が違うから、そこでお別れした。
「おはようございまー…」
「部長!!」
ドアを開けると凄まじい怒号が聞こえた。
「これ、どういうことですかっ!会社から駅まで5分なのに、わざわざなんで車一台使ってるんですか!」
「あ、あぁ…」
「あ、あぁ…。じゃないですよっ!」
とりあえず挨拶はしよう…。
「おはようございまーす…」
「あ、あ、桐谷くん!おはよーう!」
部長にはどうやら俺の挨拶が助け船だと思ったようだった。
「桐谷さん、おはようございます。」
さっきまで怒っていた入江さんは今は俺に笑顔を見せている…。
少し…怖い笑顔だ…。
「よっ桐谷ー」
かるーい挨拶をしてきたのは、高校時代からの友人、松島だ。
「おはようございます…。」
小さい声で挨拶をしてきたのは、新人の井上さん。
ふぅ、とりあえず部署全員の紹介(?)はできたかな。
まぁつまり、男性は部長と松島と俺の三人、女性は入江さんと井上さんって感じだ。
ちなみに、部署は経理ってな訳で、経理の仕事とは何か軽く説明しておこう。
経理とは、会社で使われた、重要なお金を管理するところだ。
しかし、ここの経理は一味ちがうのだ。
ここでの経理は、会社に特別に来場した人たちが使ったお金を計算する決まりなのだ。
さて、ここであれっ?と思ったはずだ。
そう、部長は来場者ではなく社員。
不正、なのか…?
「ちょっと、入江くん、待ってくれ。それは誤解があってだな、…神川賢一さんが来場されたんだ…。」
「えっ!?あの、神川賢一ですか!?」
「部長ー!そんな重大なことを隠してたんですか?」
「お、お、お、落ち着け!大声を出すな!外に聞こえるだろう…入江くんと松島くん、今から説明するから!」
「俺も知らないんですけど、その話。」
そう、俺も知らない、今知った。
井上さんも目を丸くして、部長を見ている。
読者の皆は神川賢一って誰っ!?となっていると思う。
神川賢一とは、有名なトップアイドルで、演技も上手いと今最も注目を浴びている人だ。
「その、まぁ、神川くんを私が案内っていうか、送迎の付き添い役みたいなのになってしまってだな…。それで、神川くんのことを会社中に知られたら大騒ぎになる。そこで、名前を付き添い役の私にしたんだ。」
「な、な、な、な、なんで神川賢一はここへ!?」
入江さんが壊れた。
「それが、付き添い役であった私でもわからないんだよ…」
「神川賢一かぁ…。」
松島、よくわかるぞ、その気持ち。(←わかってない)
…………ん?井上さん…?
「え、だ、大丈夫ですか…?」
俺はブルブルと震えている井上さんが心配になって声をかけた。
「い、あ、…。」
そう言って、井上さんは机に倒れた。