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    Project Executioner (tentative title) prologue
    
    
    
     大通りを煌々と照らすガス灯の光も路地裏の奥までは届かない、そこには百年前と変わらぬ暗闇が横たわる。
 そんな暗黒の細道を息を切らしながら少年は駆ける、少年は追われていた、噂話でしか聞いたことのない異形の怪人、|不死者《イモータル》に。
 少年の必死の逃走も虚しく、路地裏の石畳に鮮血が迸った。
 昆虫と人間が混ざった様な姿の怪人は血の付いた鈎爪をペロリと舐める。
 痛い、怖い、叫びたい。
 けれど、声は喉の奥で固まったみたいに空気を震わす事を放棄した。
「ぁ……あぁ……嫌だ……」
 死ぬのは嫌だ、夢が叶わなく事が嫌だ。涙が少年の頬を伝う。
 世界中を旅する小説家になりたかったのに、こんな所で死にたくない……。
 少年の息の根を止めるべく、怪人がゆっくりと歩み寄る。
「助……けて、誰か」
 
 弱々しく呟いた言葉は誰の耳にも届かない。
 だからこれは只の偶然だ、怪人の前進を遮るように純白に煌めく翼を広げた騎士が舞い降りたのは、只の偶然なのだ。
 それでも、その神秘的な光景に少年は痛みさえ忘れて見蕩れていた。
 
 白騎士は少年を一瞥すると、凛々しい女性の声で眼前の怪人に告げた。
 
「|不死殺し《エクセキューショナー》の名に於いて死刑を執行する!」