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交差点で会いましょう
「おはよう」
この季節の朝の5時は極寒だ。彼女へ向けた言葉は白くなって空に消えていく。
心なしか彼女が揺らいだように見えて、慌てて僕は言葉を続けた。
「寒い……?これいる?」
彼女の細い首に、自分の付けているマフラーをかけてあげようとするけれど、
マフラーを彼女は受け取ってはくれなかった。
「そっか、優しいね!」
僕の首が冷える心配なんてしなくてもさ……
彼女は少しだけ、笑った。
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彼女とお話しするのは楽しくて、こんな寒い中でも時間を忘れてしまう程だった。
遅い日の出ももう過ぎる頃、通りかかる学生が、サラリーマンが、お婆さんが、僕らを変な目で見る。
「きっとリア充爆発しろー、とか思ってるのかな?」
彼女に小声でそう言って、二人で小さく微笑む。また、皆んなは怪訝な顔をする。
彼女とずっと居たいのだけれど、そう言うわけにもいかない。
僕らがちょっと交差点を独占し過ぎたせいかもしれないな。一回警察を呼ばれてしまった時は本当に慌てた。
だから、話がひと段落したところで、彼女にハグをして僕は交差点を立ち去った。
僕らはいつまでも名残惜しい顔をしていた。
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「あんた、どこ行ってたの。」
家に帰ると、お母さんが真っ先に聞いてきた。「彼女の所だよ」と答えると、何故かお母さんは悲しみと憐れみ、そして……ちょうど、今日見た学生とか、サラリーマンとか、お婆さんとかの表情が、混ざった顔をした。
「で、ずーっと交差点に突っ立ってた、って事なの?」
「突っ立ってたって。彼女と話してたんだよ。」
「……そっか。」
お母さんが、何でそんな深刻な顔をしてるのか。
よくわからない。
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やめて
僕に病名をつけて
白い部屋に閉じ込めないでよ
早く出たい
彼女に
会いに行くって、約束したんだよ。
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「……ごめんっ!!」
ようやく3ヶ月ぶりに彼女の交差点に向かう事ができた。
あの白い部屋から逃げ出すに、時間を取られてしまった。
彼女はいつもより、少しだけ悲しそうな顔をしていたけれど、
いつものように、そこで待っていてくれた。
「ごめんね……会いにこれてなくて。」
そして、僕は3ヶ月の空白を埋めるように彼女と沢山話をした。話をして話をして。
彼女は笑って僕の話を聞いてくれた。
そして、
えい、っと僕を突き飛ばした。
僕は後ろから来た傍若無人なトラックとぶつかって……
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もしかしたら。
あの時倒れたのは僕の痩せ細った身体が春風に押されただけで。
もう花すらも置かれなくなった事故現場で確かに佇んでいた彼女は
もしかしたら僕だけのものだったのかも知れないなあ。
彼女の横に立ちながらふと思った。
(それでも幸せだけど)
彼女に笑いかければ、ほら。
彼女は花が咲いたように、笑ってくれるんだから。
なんか前回に続きカップルものですね?
そんな気分なのかな…
まあリアルじゃ春なんて永遠に来ないであろうvllrです。
ま゛し゛め゛に゛小゛説゛か゛き゛や゛か゛れ゛い゛(投稿頻度ゴミカスでごめんなさい)