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キスで私を狂わせて
「ついて来い」
私はそう言われて龍之助さんについて行く
(身長、高いな…)
それだけじゃない。私の数歩前を歩く龍之助さんはしっかりとした体格をしている
(もしかしたら鍛えられているのかもな…)
そう思っていると龍之助さんはいきなり立ち止まる
「ぐぇ」
止まると思っていなかったのでぶつかってしまった私を龍之助さんが振り返る
(やばい殺される)
そう思いダッシュで「ごめんなさい」と言おうとした時、
「乗れ」
と目の前にある車のドアを開けた
ぶつかった事に対しては何も思われていないみたいだった
内心安心しながら「失礼しまーす」と小声で言い、乗車する
そんな私を見て龍之助さんは少し微笑んだ様にして車のドアを閉めた
(そう言えば、家族以外の異性に車のドア開けてもらうのって何気初めてだな…)
何なら家族以外の異性の車に乗るのも初だ
そう思うと急に緊張しだす
(翔琉…元カレは運転免許も車も持ってなかったからな)
デートに行く際は必ず私の車で、私の運転で行っていた
それを「頼りない」と言って呆れる友人は多かった
それでも私は毎回嬉しそうに私の車に乗り律儀にお礼を言ってくれる翔琉の事が好きでたまらなかった
(…翔琉)
何で裏切ったんだろう、そう思い涙が出てくる
(緊張したり、泣いたり忙しいやつ…笑)
と我ながら呆れ苦笑を漏らす
それでも涙は止まらなかった
その内に龍之助さんが運転席に乗り出す
タバコを吸っていたのだろうか、ほのかに煙の匂いがする
(…この匂い)
元カレが…翔琉がよく吸ってたタバコと同じ匂いだった
それだけの事なのに胸が痛くなり、涙が止まらなくなる
きっと龍之助さんは私が泣いてるのに気づいてる。それでも
「着くまで時間かかるからちょっと寝てろ」
と言い気付かないフリをしてくれる
その内小さい音量でジャズが流れ出す
彼の気遣いとジャズの音が心地よくて私はいつの間にか眠っていた