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ツンデレ男子2人恋は... 「上」
窓の外では、季節の変わり目を感じさせる風が木々を揺らしている。
放課後の教室には、西日が長く伸び、静寂の中に二人の息遣いだけが響いていた。
龍弥と春夜。
幼少期から共に育ち、互いの成長を最も近くで見守ってきた二人は、周囲からは「親友」あるいは「仲の良い幼馴染」として認識されていた。
しかし、その実態は、互いに譲れないプライドを抱えながら火花を散らす、奇妙な均衡状態にある。
龍弥は派手な身のこなしと軽薄な物腰で周囲を惹きつけるタイプであったが、春夜の前でだけは、その余裕の裏に鋭い独占欲を隠していた。
対する春夜は、常に冷静沈着で規律を重んじる秀才でありながら、龍弥に対してだけは、理性を揺さぶられるような苛立ちと執着を見せる。
「おい、いつまでここにいるつもりだ。いい加減に帰るぞ」
龍弥がわざとらしく肩をすくめながら言った。
その態度は一見すると無関心のようだが、視線は春夜の手元から離れない。
「……別に急ぐ理由はありませんよ。あなたが先に帰るなら構いませんが」
春夜は眼鏡の縁を押し上げ、淡々と答える。
しかし、その声には微かな棘が含まれていた。
彼は龍弥が自分を置いて去ることを極端に嫌悪していた。
「あー、そうかよ。お前って本当に真面目だな。そういうところが正直、見ていて飽きねえけどさ」
龍弥はニヤリと笑い、春夜の隣に腰を下ろした。
その距離があまりにも近く、春夜の肩がわずかに跳ねる。
「……そんなことではありません。私はただ、自分のやるべきことを遂行しているだけです。あなたの軽薄な言動に付き合っているだけだと思ってください」
春夜は顔を背けた。
しかし、その耳たぶが僅かに赤く染まっているのを龍弥は見逃さなかった。
「へぇ、俺のことがそんなに嫌いなら、もっと早く帰ればいいだろ? なんでわざわざここに残ってるんだよ」
挑発的な言葉とは裏腹に、龍弥の胸の内には焦燥感が渦巻いていた。
自分を拒絶するような春夜の態度に苛立ちながらも、彼が自分の側に留まり続けてくれることに安堵している自分がいる。
「……あなたがいないと、落ち着かないからです」
一瞬の沈黙の後、春夜は消え入るような声で呟いた。
それは自覚のない本音であり、同時に自分自身への裏切りでもあった。
「……あ? 今なんて言った?」
龍弥の声が低くなる。
彼の瞳に宿るのは、いつもの茶化すような光ではない。
真剣な、そして困惑した色だ。
「……いえ、なんでもありません。聞き間違いです」
春夜は慌てて言葉を回収し、視線を床へと落とした。
心臓の鼓動が早まるのがわかる。
自分の中に芽生えたこの感情は何なのだ。
ただの幼馴染としての親愛などではない。
もっと熱く、鋭く、胸を締め付けるような……。
龍弥もまた、自身の内面で沸き起こる激しい動揺に翻弄されていた。
(……なんだよ、これ。なんであいつの一言でこんなにムカつくのか)
春夜の言葉を聞いた瞬間、心臓を直接掴まれたような衝撃が走った。
彼を「ただの幼馴染」という枠の中に閉じ込めようとしていた自分の防衛線が、内側から崩れ去っていく感覚。
二人は互いに顔を見合わせた。
そこにあるのは、長年の友情では説明のつかない熱量と、正体のわからない感情への戸惑いだった。
「……お前、本当に変なこと言うよ」
龍弥は苦々しく呟きながら、春夜から顔を背けた。
その手は微かに震えている。
「……あなたが、異常なのです」
春夜もまた、自身の動揺を隠すように突き放すような言葉を投げた。
しかし、二人の間には先ほどまでとは明らかに異なる空気が流れていた。
互いを想う気持ちが、「友情」という名の安全なシェルターを飛び越え、制御不能な「恋」へと変質していく瞬間。
二人はまだその正体に気づきながらも、自分たちの心が激しく揺れ動いている事実だけは、否定することができなかった。