公開中
めでたしめでたし
その後、何度も委員会は開かれた。
その度に、飼育小屋に出たゴキブリについて話し合われた。
それでもなかなか解決策らしい解決策は出ず———。
いくら奴らがマンホールの中にいて あまり外に出てこないからといって、さすがに大量のゴキブリたちの近くで活動するのは恐ろしい。
果ては、どうかウサギが奴らを全て食い散らかしてくれることを祈る始末だった。
それにしても、よくぞウサギはあのマンホールの中で暮らせるものだ。
奴らを嫌うのは、もしかしたら人間だけかもしれない。
そんなこんな考えつつ、とりあえずマンホールの蓋は開けてはならない禁忌となった。
---
飼育小屋のマンホールの中にゴキブリがいることが日常となり、数ヶ月が経った。
聞き分けがいいのか悪いのか、奴らはほとんど外には出てこなかった。
そういうことも相まって、皆いつも通りに仕事をこなしたり、(ゴキブリ騒動については伏せて)ふれあいイベントを無事に実施したり、委員会に参加したりとするうちに、誰もゴキブリについて気に留める者はいなくなった。
経った数ヶ月の間に、季節はとっくに冬も終わりかけていた。
「なぁ、あいつら、いんのかな」
ある日の仕事中、同じシフトの子がそう言った。
僕は出入り口から中を覗いた。———何もなかった。
ウサギらしき、白いものが見えているが。
「……開けてみる?」
聞くと、彼は黙ってマンホールの蓋に手をかける。
僕は息を潜めて、マンホールから離れた。
ガコッと音を立てて、蓋が開く。
———何も出てこなかった。
マンホールの中にいたウサギだけがそこにいた。
耳を背中に撫でつけ、紅い目で僕たちを見上げている。
「……いなくなったんだな、あいつら」
誰かの呟きが、ぽつりと空中に消えていった。
結局、何がどうなったのか訳もわからないまま、全てのゴキブリ騒動は終わりを告げた。
---
翌年度、4月。
「えーと、明日は……委員会決め?」
連絡帳に時間割やら宿題やら書き込みながら、一つの予定に目を留める。
何にしようか。
去年はできなかった、図書委員でも———いや。
(じゃんけんは恐ろしく弱いし……)
あまり人が集まらないようなところがいいだろう。
それに、———嫌々だったとはいえ、悪くはなかった。
だから、また。
———飼育委員にしよう。
〈後記〉
正直、この章のことはあまり覚えていないので、ほぼ創作です。
改めて思い出して書いてみると「ゴッキーが出た」以外 何もないですねw
それでも楽しんでいただけたら幸いです。