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魔法 中田愛編
魔法は特別なもので、たとえ存在しなくても、わたしたちの心を満たしてくれる。
キラキラした光。カラフルなビーム。
派手かつ綺麗なその見た目に、わたしの心は掴まれた。どんなことだって叶えてくれる。嫌なやつをやっつけて、宿題だってササッとやってくれて__
そんな魔法、存在するわけないのに。
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その日もわたし・中田愛は、図書室に来ていた。いつもの漫画コーナーに、見慣れないきらびやかな背表紙がある。魔法漫画の新刊だ。
わたしは他の本を見ず、さっと貸し出しコーナーにいって借りた。この新刊、誰にも取られたくない。
今回はどんなことが起こるんだろう?それを、どんな魔法でスパッと解決してしまうのだろう?
物語、たとえ空想上だとわかっていても、魔法は魅力的に見える。わたしたちを惹きつける魔法を、作者がかけているみたいに。
「あ、愛ちゃんだぁ」
嘲笑うように、くすくすと笑いながら指を指してきたのはクラスの1軍女子。指を人に向けて指すなんて、マナーを知らないバカなのだろう。
「何?」
「いや、子供っぽいなぁって」
子供っぽい?魔法が?
そもそも、これは漫画だが、魔法学校の学園生活を描いたものだ。かなりシリアスでダークな雰囲気で、絵がたっぷりの児童書を読んで「あたし、小説読めまーす」みたいに言っているあの子らが読んでいるものとはわけが違う。
「そう?あなた達の方が、子供っぽいと思うけど。何より、指を指すってマナー違反じゃん?普通に常識がないとか、バカとか、そんなふうに思う」
と言えたら、どれだけいいんだろう。
嫌なやつをやっつける魔法なんて、ない。
それは、今のわたしが証明している。
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それから、次第に学校に行かなくなった。何故かは知らないが。
小説投稿サイトで、魔法の小説を読んでみたり、チャットサイトでアップされた漫画を読んでみたり。一通り読み終わったあとは、チャットサイトで『オススメの魔法小説・漫画ありますか?』と募ってみたりした。ぽつぽつと読んだことのないものが出てきたが、だいたいは読んだことのあるものだ。
「うぉ?」
ある日、『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』というチャットルームを発見した。魔法に包まれたみたいに、それは魅力的に見えた。
わたしはあの日のように、さっとそのリンクをタップした。