公開中
にげようね1
" 定期的に旅行に連れて行ってあげると、旅先の経験で何かが変わる。 "
_バッドエンド
数日前に、親戚の子供を預かってきた。親戚が去り際に残したいくつかの情報を元に、旅行を提案してみる。
「██ちゃん、旅行にいこう」
蝉ばかり鳴いていた静かな和室に急に叔父の呼び声が聞こえたから、驚いた様子で振り返った。
「…ああ、ごめんね?急に怖かったね」
敵意がないなんてことを示すために微笑んでみるが、どうにもそれが気持ち悪いという感想しか浮かばないでいる。
「今日は暑いけれど、いいかい?」
混乱した様子でこちらに揺れている赤い瞳は、やはり綺麗な色で見惚れるしかなかった。
「どこに行くの?」
隣に小さく座り込んで、控えめな古びた旅行雑誌を覗き込んでいる。
--- 廃工場を見上げる夜景が綺麗な恋夜市 ---
--- 365日咲き乱れる血桜が魅力の血丘市 ---
--- 仄暗い幻想的な水場を見渡せる幽霊岬 ---
--- 人や家、山に川もただ何もない命乱市 ---
この街は本当になにもないなんてことを、再度思い知らされた。
「██ちゃんはそういや水辺が好きなんだっけ?」
「私は水が好きなんじゃなくてこうするしかないから好きって言ってるんだよ」
悲しそうに、また元通りに和室に出かける準備をしに戻る。
---
灯台から見下した見渡す限りの岬には、酷く風が吹き荒れている。
「意外と寒かったね、██ちゃん」
「…そっか」
そう呟く██は酷く悲しい顔をしていて、何があったかなんて聞き出すことさえできなかった。
██
母親を水難事故で亡くしたばかりで、水が嫌い。それなのに固形物などが喉を通らず、水を基本とした生活をするしかない。
叔父
██のことを分かった気でいる