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お花見
わたしはいつもの公園へ向かう。なんだかイライラするときは、少し落ち着くことが大切だ。
今日だって、あの子がわたしに冤罪をしかけてきたのだし。
ベンチへ向かうと、すでに先客がいた。
艶やかな黒髪、制服のような、カチッとした服。お嬢様のように上品だ。まずここらへんの田舎では見かけない。
「すみません、ベンチ…」
「あら?どうしたの?わたしはレイ。寂しいの、お花見しましょ?」
「いや、その、えっと、わたしは|彩芽《あやめ》」
「お菓子もたっぷりあるのよ。さあ」
バウムクーヘン、エクレア、シュークリームといった洋菓子の他にも、たい焼き、大福、団子がある。
わたしは団子を食べてみる。
「むぅ!もおもー!(美味しい!)」
「ふふ、よかったわ」
レイはゆったり花を見ていた。ちらちらと散って舞う様子を楽しんでいるみたい。
わたしは団子をたっぷり食べる。完全に「花より団子」状態だ。
もちもちしてて、みたらしがたまらない!
「そろそろ帰ったら?」
「嫌。夜桜もいいんじゃない?」
「だめ。親が心配するでしょ?」
たしかに、暗くなってきた。
「でも嫌!」
「いい加減にして?」
レイの顔がゆがみ、醜くなった気がした。
「わ、分かった!」
わたしは怖くなり、帰った。
「ルールを守らない子供は、嫌いよ」
レイは後片付けをし、飛んで行った。
「守らない子には、どんなお仕置きをしていたかしら。ふふ。まあ、桜の花びらにしてあげてもいいのだけれど」
桜が、助けて、と叫ぶように風に揺られて音を立てた。