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名探偵と探偵-1
乱歩side
乱歩「福沢さーん、疲れたー」
トコトコと福沢さんの後ろをついていくこと半刻。
僕の足は、もう限界を迎えていた。
福沢「もうすぐ着く。この依頼が終わったら善哉を奢ってやるから━━」
乱歩「僕、凄くやる気が出てきた! 早く行こうよ、福沢さん!」
全く、警察は無能だね。
僕の『超推理』が無ければこんな事件も解決できないんだから。
着いて一分も立たないうちに依頼を解決して、僕達は甘味処へやってきた。
乱歩「おばちゃん、おかわり!」
味のしない餅だけを残して、お椀が積み重なっていく。
その塔を覗き込むようにしながら、彼は話しかけてきた。
???「少年、何故善哉の餅だけを残す?」
乱歩「……お兄さん誰?」
濃い青色の長髪をハーフアップにしている、黒い瞳の青年。
年齢は僕より五歳ぐらい上で、成人はしてない。
右手を腰に当てて重心が偏っているように見えるけど、何処からでも崩せないな。
Tシャツの襟から見える包帯的に、胴体に怪我をしている。
裏社会とも考えられるけど武装している様子はないし、福沢さんみたいに護衛業をしている人かな。
???「あ、急に話しかけて悪かったね。私の名前は|篠崎《シノザキ》。気軽に篠崎とでも呼んでくれ」
乱歩「君、あの殺人現場の野次馬にいたよね」
篠崎「まさか認知してもらえてるとは……」
乱歩「お兄さんみたいな人、一度見たらなかなか忘れないよ」
髪色も珍しいし、包帯を巻いている。
普通の大学生に見えるけど、どこか異常な雰囲気。
乱歩「それで、何の用? お餅を残す理由を聞きにきたわけじゃないでしょ、君」
篠崎「……流石は名探偵だ。実は少年に興味があってね」
乱歩「僕に?」
篠崎「先程の推理、実に素晴らしかった」
そこからお兄さんは、ペラペラとさっきの僕の推理について色々と話し出した。
着眼点やら、その推理に至った経緯とか。
どちらも、あの場では説明してないのにピッタリ言い当てられた。
こんなこと、初めてだ。
福沢「話の腰を追って済まない。篠崎と云ったな。一度座ると良い。立ち話は疲れるだろう」
篠崎「良いんですか?」
僕は福沢さんの隣に座って、引き続き善哉を食べた。
いつも以上に箸は進まなかったけど。
福沢「篠崎殿。貴君は何故、乱歩の推理内容か判ったか聞いても良いか?」
篠崎「あ、そういえばまだ云ってなかったか。私はこういう者です」
乱歩「……探偵?」
差し出された名刺には“篠崎探偵事務所”の文字。
篠崎「と云っても、この事務所はもう潰れたんですけど。今はフリーの探偵として日本を歩いている」
乱歩「ただの探偵にはさっきの事件は解けない。僕には及ばないけど優秀そうだね」
そりゃあ、ね。
篠崎は小さく笑った。
篠崎「君に敵うわけがないだろう。私はただの一般人で、君は“あの”異能力者だ」
乱歩「そう! よく判ってるじゃあないか!」
福沢「乱歩。声を落とせ」
福沢さんに云われ、僕は座る。
なーんか、久しぶりに褒められて嬉しいんだよね。
僕なら解けて当たり前って定着してるというか、なんていうか。
篠崎「あ、そろそろ行かないと。私なんかに時間をくれてありがとね」
乱歩「もう行くの? ま、話が通じるのが久しぶりで楽しかったよ」
篠崎「あ、最後に一つだけ。善哉は餅と餡で一つだ。少年が餡だとして、餅は置いて行かないようにね」
その名刺はあげる、とお兄さんは行ってしまった。
お金、置いていきすぎでしょ。
二倍ぐらいあるよ、僕の食べた善哉の。
福沢「悪い奴ではなかったな」
乱歩「そうだね。最後のやつは難しいけど」
福沢「……判らないのか?」
乱歩「多分、餅は福沢さんだけど……それ以上は判らないかな」
作者の一言
「台本書きのほうが楽」
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→探偵の電話が鳴る