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女魔王に何故か好かれた件
咲良
批判とかはあんまり受け付けません
第一章 召喚ミスから始まる関係
俺、ユウトはごく普通の高校生だった。
部活帰り、いつもの帰り道を歩いていたはずなのに、次の瞬間、目の前に広がっていたのは巨大な玉座の間だった。
黒い大理石の床、紅い絨毯、両脇に並ぶ異形の魔物たち。
そして、玉座に座る一人の女性。
黒い髪に紅い瞳、漆黒のドレス、額から伸びる二本の角。それはどこからどう見ても、魔王だった。
「勇者よ」
「あ、違いますぅ〜」
即答した俺に、玉座の間がざわめく。
魔王は目を細め、じっと俺を観察した。
「…妙だな、召喚の術式は完璧だったはずだが」
「ミスですよね?」
「うむ…」
「あっさり認めやがったこいつ」
それが俺とリゼリアの出会いだった。
第二章 魔界での客人生活
「帰る方法を探す、それまでは客人として遇する」リゼリアはそう宣言した。
俺は豪華な部屋を与えられ、衣食住を完璧保証された。
…ただし、常に監視付き。
「監視じゃなくて護衛だ」
「目が三つありますよ?」
「優秀だろう」
怖い。
だが、リゼリアは意外にも律儀だった。俺に害を加える者はいないし、無理に働かされることもない。
むしろー
「ユウト、今日は政務に同席せよ」
「なんでですか」
「退屈なのだ」
完全に話し相手扱いだった。
だが魔界の政治は想像以上にシビアだった。
魔族の貴族たちは常に権力争いをしており、リゼリアは絶対的な力で抑え込んでいる。
その姿は冷徹な支配者そのものだった。
……なのに。
「ユウト、余は怖いか?」
二人きりになると、不安そうな顔をする。
「正直、最初は」
「今は?」
「……怖いけど、悪い人じゃない」
一瞬、彼女は目を見開き、そして小さく笑った。
「余を"人"扱いするのは貴様くらいだ」
その言葉の重さに、俺は少しだけ胸が痛くなった。
第三章 勇者の影
ある日、魔界に緊張が走った。
「勇者が現れた!」
側近の報告に、城が騒然となる。
勇者は魔王討伐のために選ばれた存在。つまり、リゼリアの命を狙う敵だ。
「出るのですか?」
「当然だ」
リゼリアは迷いなく答える。
だが出陣前、俺の前で足を止めた。
「ユウト」
「はい」
「もし余が敗れたら……」
その続きを、彼女は言わなかった。
代わりに俺は言った。
「負けないでください」
驚いたように、リゼリアは目を見開く。
「……ふっ」
小さく笑い、彼女は戦場へ向かった。
戦いは圧倒的だった。
勇者は強かった。だが、それ以上にリゼリアは強かった。
魔界を統べる存在の力を、俺は初めて目の当たりにした。
けれどー
勝利した彼女の表情は、どこか虚しかった。
第四章 孤独の王
「なぜ魔王になったんですか?」
ある夜、俺は尋ねた。
リゼリアはしばらく沈黙した後、静かに語った。
「余は元は王族では無い。力があった、それだけだ」
力を恐れられ、疎まれ、最後には担ぎ上げられた。
気付けば、玉座に座っていた。
「誰も本音を言わぬ、皆、余の顔色を疑う」
紅い瞳が揺れる。
「……退屈で、寂しかった」
その言葉は、魔王のものとは思えないほど弱かった。
「じゃぁ俺がいます」
「……何?」
「話し相手くらいならできます」
沈黙。
やがて彼女は小さく笑った。
「本当に、妙な男だな」
第五章 好かれている理由
魔界滞在も数ヶ月が過ぎた頃。
ーこれ、完全に好かれてる。
「ユウト、隣に座れ」
「距離高く無いですか?」
「気の所為だ」
いや近い。
だが、以前のような威圧感はない。
ある日、リゼリアは言った
「ユウト」
「はい?」
「余は貴様を好いている」
「知ってました」
魔王、固まる。
「……なぜ即答できる」
「態度で分かります」
彼女は顔を赤くした。
魔族たちが見たら卒倒する光景だ。
「だが、余は魔王だ」
「知ってます」
「いずれ貴様は帰る」
その言葉に、俺は少し黙った。
帰る方法は、まだ見つかっていない。
でももし見つかったら?
「……その時考えましょう」
曖昧な答えに、彼女は少し安心したように微笑んだ。
最終章
そしてついに、元の世界へ帰れる術式が完成したら。
玉座の間に魔法陣が描かれる。
「これで、帰れる」
リゼリアは淡々と言う。
だが、紅い瞳は揺れていた。
「ユウト、選べ」
帰るか、残るか、
俺は魔法陣を見つめ、そして彼女を見る。
孤独だった魔王。
不器用で、強くて、寂しがり屋の女王。
「……俺」
答えはー
「少し、保留で」
「は?」
「だって、まだ魔界観光してないですし」
一瞬の沈黙
そしてー
リゼリアは声を上げて笑った。
「本当に貴様は……!」
魔法陣は消された。
帰還は延期。
世界の運命よりも、今はこの時間が大事だった。
これは、
最強で孤独な女魔王と、
なぜか気に入られた普通の少年の、
少しずつ距離が縮まっていく長い物語。
そしてきっとー
この先も、まだまだ続いていく。