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第10話「砂の夜」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
「ついてくればわかる!」
ユンギはホソクの待つ方に勢いよく駆け出した。私達もキャリーバッグを転がしながら急いで追いかける。
やがて、急な崖にたどり着いた。そーっと首を伸ばし、下を見てみると…深っ!
「すごい…」
あまりの迫力に言葉を失っていると、ホソクが言った。
「僕らさ、ひょっとしてアメリカにいるんじゃない?」
「韓国から電車でアメリカに来たの?ww」
ジン以外誰も笑わなかった。ナムジュン、ジミン、テヒョン、ジョングク、そして私は、ただただ目の前の絶景に圧倒されていた。
果てしなく続く峡谷。ホソクが言ったことが正しいのかもしれない。写真でしか見たことがないけれど、ここはグランドキャニオンそのものだ。
ジミンが小石をとん、と蹴飛ばす。小石はころんころんと落ちながら、粉々になって落ちていった。私は自分がここから落ちてばらばらになるところを想像した。
「怖い…」
下を覗き込んでがたがた震えているのは何を隠そう、キム・テヒョンである。それに比べ末っ子はへいちゃらのようだ。口笛なんかふきながら「ヒョン、すごいものってどこ?」と無邪気に次男を見つめている。
「こっち」
ユンギは、私達を崖の脇道に引っ張ってきた。
「ここを下りるんだ。――テヒョン、頑張れ」
絶句している六男を振り返り、ユンギは同情するように言った。どうやら彼は、メンバー認知の高所恐怖症らしい。でも怖がるのも無理はない。右側は切り立った崖で、落ちたら終わりだ。しかも道幅はわずか1mほど。もしも踏み外したら、さっきの石ころちゃんと同じになってしまう!私は思わず首を横に振った。嫌だ。こんなところで死にたくない。
「よし、手をつなごう」
ジンが言った。全員が長男を見る。ジンは珍しくテキパキと指示を出した。
「荷物はひとまずここに置いとく。ホソクとユンギは道案内だから先頭。そこからは年齢順で、一列に並ぶんだ。いや、アーミーは誰かが挟んだほうが安心だから…」
みんなが私を見る。
「僕とテヒョンがアーミを挟むよ」
ジミンがきっぱりと言った。
「ぼくは?」
ジョングクの声が後ろから飛んできた。
「おまえは後ろから安全確認でもしとけ」
ジンが投げやりに言った。
「よし、それじゃ行くぞ。みんな緊張感持てよ」
ユンギとホソクがゆっくりと進み出す。続いてジン、ナムジュンがのそりのそりと進んだ。ジミンが振り返って私の左手をきゅっと握った。テヒョンも私の後ろにまわる。右手がテヒョンの大きな手に包み込まれる。男の人に手を握られるなんて初めてかもしれない。
なんだかどきどきする。
ゆっくり、ゆっくり。そうっと、そうっと。下は見ないで、前だけ見て。
「ああ…」
テヒョンの絶望したような声がした。ちらりと振り返ると、下を見てしまったのか、テヒョンはばっちり目を閉じていた。私は慌てた。ちょ、一歩踏み外したら落ちるっていうのに、目を閉じるなんて信じらんない!
「目を開けて!」
私が夢中で叫ぶと、テヒョンがぱちりと目を開いた。恐怖で顔がひきつっている。
「大丈夫だから、頑張って…」
ほんとに頑張れ。頼むから。
「ヒョン、もうすぐだと思うよ。ほらユンギヒョンが止まったじゃない」
ジョングクが後ろから励ます。テヒョンがあんまり強く握りしめるので、私は右手が痛くなってきた。
「え、なにこれ!!」
ジンのオーバーリアクションが聞こえる。
「なんでこんなものが…」
「すごいでしょ?」
自慢げなホソクの声。
「なんだろう…」
ジミンがウズウズしている。うん、気になる気になる。
そして、それがついに目の前に現れた。
「うわあ…!」
そこは、大きな崖のくぼみだった。奥行きは大体5mくらい。天井が高い。日陰なのでひんやりと涼しい。だが驚くべきものは、奥の壁にあった。
砂の壁にはりついている、真っ白のドア。現代風の玄関ドアだ。きれいな新築一戸建てにありそうな感じ。
でも、砂漠にはあまりにも場違いすぎる。なんでこんなところに!?
「僕の家のドアみたい」
まだ私の手を握ったまま、テヒョンが呟いた。
「ねえ、開けてみようよ」
ジョングクが兄たちにせがむ。
「もしもなにか出てきたら?」
ジミンが不安そうに言う。
「そのときは、そのとき」
「念の為後ろに下がっていたほうがいい」
「あんまり下がりすぎるなよ。落ちるぞ」
「ドアは誰が開ける?」
「やっぱリーダーでしょ」
「うん、代表が開けるべきだね」
「わかった」
ナムジュンはドアの前に躍り出た。みんなで半歩下がって、固唾をのんで見守る。
ナムジュンは金色のドアノブに手をかけ、カチャリとひねった。どうやら鍵はかかっていないようだ。キイ、と微かな音がして、ドアが開く。中から淡い光がこぼれてきた。心臓がバクバクしている。私は無意識にジョングクの腕を掴んでいた。
リーダーは私たちの顔をぐるりと見回すと、勢いよくドアを開けた!
今回短くってすみません💦
砂の夜、お楽しみいただけたでしょうか…?
次回は長編になる予定です😚
題名は、「これが初恋」です!❤
お楽しみに。