公開中
GOD&HUMAN
読み切り、作っちゃいました。
世界を支配する神様のお話です。
※多少人間を蔑む描写があります。
──この世界では、人類、エルフ、獣人、鬼人、……そして我々、神々が共存している。
数々の大陸にはそれぞれの種族別々に暮らしており、その中でも一際大きな大陸が、我々神の大陸──『神ノ島』だ。
この|世界《ほし》は、この『神ノ島』を中心にしている。神々を中心にしている。
我々が、特別な『神』なのだ。寿命がなく、世界を創り、世界を破壊し、闇を創り、光を創り、時間を生み出し、世界を動かす……それが、我々の力なのだ。
---
神の誕生の歴史は、遙か昔まで遡ることになる。
昔々、光も闇も、ありとあらゆる概念も存在しなかった世界に、創造神が現れた。
無から有を生み出した訳では無い。その世界の空間を創った力に、自我が芽生えたのだ。
そこから、闇の神と光の神を創り、『この世界』という概念を創った。他の生命を創り、その生命たちのための住処となる星も創った。世界に物が溢れることを防ぐため、物体を破壊する破壊神も創った。
これが、生命たちのために時間の神を創り、時間という概念が生まれるまでの流れである。
この間の時間が、途方もない時間だったのか、それとも瞬きする間のことだったのか……それは、もう知り得ないことだ。
生命たちに目を向けた時に、生命の数が増えていることに気が付き、生命同士で争い出したことに気が付いた創造神は、生命を管理し、進化へと導く神をお創りになった。
それが、私である。
私は、生命たちの星に、争うことの愚かさに醜さ、助け合って共存することの素晴らしさ、美しさを教えた。
生命たちはあっさりと信じ込み、共存して暮らし始めた。
私は、創造神がお伝えになったとおり、生命たちに、元から存在していたものを別の物へと創り替え、進化させて行く方法を教えた。教え続けた。
その内、私は、あることに気が付いた。
この生命たちは、私が口にすることが正しいと信じて疑わない。私が言ったことに、一切の疑いを持たない。
特に、他よりも遅れて生まれた種族……人間には、もはや笑いが止まらない。私を含む神々の話を、あっさりと信じ込んでしまった。他の種族は、最初は半信半疑であったのに、だ。
しかも、私が伝えることには、『神様が仰ることだから』と、丸々鵜呑みにして信じ込んでいる。他の種族は私が伝えた技術を独自に工夫していることがあったが、人間にはそれさえも無い。私に従っているだけである。
──気分が良い。自然と口角が上がる。
段々、私は、自分の価値を自ら下げているような気がして来た。価値の低い生命たちと過ごしているからだ。では、私の価値を上げるには……?
……決まっている。価値の低い生命と離れるまで。私と同等の価値の者たちと過ごすまで。
私は、生命たちにはこれからは種族ごとに暮らすべきだと告げ、既に発見済みの中で最も大きな大陸へと移った。生命たちの中では反対の意見も複数あったが、人間たちは反対もせずに私を見送った。
──……神々は崇高な存在だ。他の生命たちは愚かでしかない存在だ。
私は、創造神に申し出て、私の他に神々をお創りになるよう伝えた。
---
あれから、他の生命たちも種族ごとに別々の島々へと移り住んだ。
私の他にも神々はこの星に住んでおり、私の考えを話し、今では全ての神々がこの島……『神ノ島』に住んでいる。時々他の島へと出掛けることはあるが、全ての神々は他の生命たちを愚かでしかない存在だと認識している。私が伝えたことを鵜呑みにしているのだ。
……そして、私にとっては、そんな神々も愚かに見える。
この星の外は、時間の概念があるようでない空間が広がっている。
その空間では、私には到底敵わないような、五大神……創造神、破壊神、闇の神、光の神、時間の神……が暮らしている。
そこから見たこの星は、とても鈍く見ることが出来れば、音速のように素早く見ることが出来るだろう。太陽と月だったか……それらがこの星の周囲を回っているのを、そして、この星が神々を中心に回っているのを、どのような顔をして見ているのだろうか。
この星の管理は、私が任されている。しかし、私にも出来ないものはある。
私は知恵の神だ。物と用途さえ決まっていれば、すぐに目的の物のイメージが浮かぶ。後は、そのイメージに近づけて行くだけ。しかし、思うままに対象を操ることは出来ない。
種族ごとに別れてからしばらく経った頃、種族別の争いが起こった。経緯も愚かなものだったが、放っている訳にもいかない。
仕方なく私が直接戦場に向かい、争いをやめるように伝えた。しかし、なんと生命たちは、そのまま争い続けたのだ。
自分のエゴを優先しただと?神の言葉ではなく、エゴを?
信じられなかったが、このまま争いが激化していくと、私も巻き込まれてしまう。慌てて創造神にこの旨を伝え、新たにこの争いを収められるような力の神をお創りになるよう頼んだ。
すると、私の目の前に、一人の女が現れたのだ。
女は瞬きする間に生命たちを鎮めさせ、争いの意思を無くした。
誰もいなくなった戦場で、女は私を見た。そして、こう言った。
「初めまして、知恵の神……ルードグロッド様。私は、節制の女神です」
それが、節制の女神の誕生だった。
---
「──……はぁああ……」
私は、問題という問題に直面していた。
節制の女神……ロラネフィカが、ある日突然、行方不明になったのだ。
ロラネフィカは、物事に制限を付けたり、ある程度物事を操ることが出来るようだった。それを知った私は、ロラネフィカを私の右腕とすることにした。いや、違う。肉体のある生命でいうと、私が『脳』で、ロラネフィカが『身体』なのだろう。
とにかく、ロラネフィカには、本当に助けてもらっていた。ロラネフィカが来てから新たに増えた制度も、助けられるものばかりだった。
生命たちの中でも能力・実力のある者に、この星の神と同等の力を授けよう。そう提案された時は、驚いた。そして、反対もした。
私が反対すると、彼女はじっと私を見て言った。
「私が誕生した経緯のように、緊急の事態になるたびに創造神にお頼みすることは、申し訳ないと思うのです。人材を蓄えておけば、緊急の事態でもすぐに対処出来るのではないでしょうか?」
その後、全ての種族の能力・実力のある者は、『神ノ島』に移り、『神格』という位を得て、神々と同等の立場になる制度に、何度助けられただろうか。
私が『脳』だとしても、『身体』を動かすのではなく、『身体』にむしろ助けられる『脳』だろう。
突然行方不明になった。それは、何者かに力を封印されたのか。それとも、存在自体を抹消されたのか。
──……私は、『身体』を動かす『脳』に、ならなければいけない。『生命』を管理出来る『神』に。
---
──……一体誰が、こんなことを予想出来ただろうか。
私の身体に、これでもかという程強風が当たる。これが『肉体』だったら、抵抗する間も無く吹き飛ばされかねない。
目の前の少女は、薄紺色の瞳で、私をじっと見つめていた。
道を歩いていた時、突如として異空間に飛ばされた。奇妙なことに、私の力……『神力』を使っても、脱出不可能なのだ。
そんな時に私の目の前に現れたのが、この少女だ。
一目見て、私にはある一つの確信出来るものがあった。
この世界の神は、命の危機を感じた時に己の魂を生命の肉体に宿すことが出来る。
ただ、既に生命の魂が入っていた場合……生命の魂の方が消えるか、生命の魂と一体化するか、どちらかになるらしい。
少女の魂は、ロラネフィカの魂と一体化しているのだ。
「っ……!」
攻撃しないようにしていたが、さっきから私にひたすら攻撃してきている。神を殺すことは不可能に近いが、流石に我慢の限界だ。少女には悪いが、肉体を戦闘不能にしてやろう。
私は、少女に向かって、神力を使った──《神術》|暗黒魔刃《ダーク・ナイフ》を最大限の数放った。
少女は、風と水の神力で打ち返そうとしていた。が、闇は殆どの属性の力を打ち消す。
──……これで、私の勝ちだ。
そう思った瞬間、少女は光の神力を自らを守るように展開し、全て無効化してしまった。
予想はしていたが、やはり全属性か。神は全属性であって当然だからな……。さて、どうするか。
……仕方ない。こうするしかないだろう。
私は、火と風の神力で作った爆弾を、少女に複数投下する。肉体に直接の被害は無いが、爆風で魂を肉体から引き出してやろう。
少女は私の攻撃に驚いたようだったが、すぐに冷静を取り戻す。しかし、次の手が思いつかないようで、手が止まっていた。
──……次の瞬間。
周囲が、暗黒に包まれた。
---
暗黒の中でも、爆弾の爆発音がそこら中に響いている。
少女は、爆弾に引っ掛かっているのだろうか。爆発音が響かなくなると、暗黒の中を静けさが包む。
次の瞬間、全てが動いた。
後ろから槍のようなもので突かれたと思ったら、全身が燃えるように熱くなり、身体が水の中に入ったと思ったら、全身に痺れるような痛みが走る。
周囲に光が戻ったことに気が付いた時には、私は死を感じていた。
神を殺す方法。
はっきりとは不明だが、同時に五つの方法で殺さない限り、神を殺すことは不可能とされているらしい。
この目の前の少女が本当にその五つの方法で私を殺そうとしていたのなら……。
恐らく、刺殺に焼き殺し、溺死、雷を落とす……五つ目は、恐らく毒殺だろう。
目的は分からないが、目の前の少女は、私を殺したいのだろう。
──……もう、この身体は駄目だろう。
しかし、…………素直に死ぬことは、癪に障る。
生きあがいてしまおう。
この時、ルードグロッドという神の命は尽きた。
しかし、魂は、まだ、尽きていない。
---
「……よくやりましたね、ロラネフィカ。彼は、神を……自らを、とてつもなく崇高なものだと信じすぎていたのでしょう」
「……いいえ。私は、私の魂の一部の……ロラネフィカの声を聞きながら、戦っていましたから。私のことをロラネフィカと言うのは、やめて下さい」
「あら、ごめんなさい。……それで、貴女はこの星の管理神を打ち破り、位としては、今は貴女がこの星の管理神なのですけど……。どうなさるのですか?この星の神々、そして生命たちを」
「……私は、こことは全く別の世界で過ごした記憶があって、多分ですが、その記憶のお陰で、彼に勝つことが出来たと思っています」
「……まぁ!どんな世界なのですか?」
「……神々は、あくまで伝説のような存在でしかなくて、この星のように神々と人が……いえ、その他にも、エルフや獣人、鬼人が存在しない世界なんです。その世界は、神々が人を見下して、人は神々を狂信しているような……そんなことがないんです」
「あら……!いい世界ね。もしかして……?」
「……はい。私は、この世界を、神々と生命たちの差がない、新しい世界にしたいんです」
「……いいわね。私も出来る限り協力するわ!」
「……!ありがとうございます、創造神様!」
---
その後、この星の島々は、近くの島同士が繋がった。
人々が驚いている中、新たな管理神が人々の目の前に現れ、これからの……新しい世界の方針を語った。
人々は新たな管理神を称え、全ての生命たち……神々も、協力態勢で生活するようになった。
すると、どうだろう。戦が起こっても管理神が牽制するようになり、いつしか管理神がなにもしなくても、争いは起こらなくなった。
管理神自身は、『あの頃から考えると、奇跡のようです』と語っている。
管理神は、世界に名前を付けようと考えた時に、昔管理神がいた世界の言葉を借りて──……。
──……『God×World』と名付けた。
---
全ての生命たちが管理神を信仰していた……と、思われた。
……ただ一人を除いて。
「……私が管理していた時には、争いが起きていたというのに……あの娘が管理すると、争いが起きぬのか!?ふざけるな!私より、あの娘の方が優秀だというのか!?」
「……そうだ。あの娘の地位を、乗っ取ってやろう。あの娘がやったのと同じように」
「今に見るが良い。私こそが、本当の管理神だ」
はい!どーも、蒼葉です!
この読み切り……そのうち、シリーズ化して連載しようと思ってます!
ではでは!
追伸:自主企画に参加させて頂いています!