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夢とテディベア
「たすけて……」
そう聞こえた方向へと目を向けると、ローブをまとった子どもがいた。表情は分からない。手にはテディベアを持っている。
「ど……?」
声を出そうとすると声にならない音しか出なかった。空気だけ出ていく感じがする。進もうとしても金縛りにあったかのように動けない。
「どうしてたすけてくれないの? ボクが××××だから? 早くしないとボクたち、存在ごときえちゃう。だから……」
子どもが何かを言いかけていた時、突然目の前が真っ白になった。
「うわぁ……って夢?」
バッと目が覚めると目の前は間接照明のついた部屋の天井。自分の寝室である。
目覚まし時計で時刻を確認すると午前4時20分。なんて時間に起きたんだ。奇妙な夢を見てしまった後だし、すぐには寝付くことができない。適当に眠くなるまで本でも読みながら時間を潰そうとベッドから起き上がる。
?
枕元に何か置いてある。間接照明によって色は分からないが、テディベアらしい。そこに物を置いた記憶がないのだが。いつの間に置いたんだっけ。触れてみるとふわふわとした感触だった。なんだか見覚えがあるような……。
それから何もかもどうでもよくなって気づいたら寝ていた。目覚まし時計の音で目が覚めた。枕元には謎のテディベア。明るくなった部屋でもう一度よく見ると夢の中で見たやつとそっくりだった。とても気味が悪い。起きるのが少し遅くなったけど驚いて大声をあげなかった分怒られずに済みそうだ。そっとサイドテーブルに置いて部屋を出る。
「おはよう、母さん」
「おはよう、いつもより起きてくるのが遅かったわね。休みだからってダラダラと寝ないでよ? 朝ごはん冷めちゃうから早く食べなさい」
「はーい、父さんもおはよう」
「おはよう、今日も事務所に行くのか? それならファイルを持っていってくれないか。所長にもよろしく伝えておくんだぞ」
「ハイハイ、持っていきますよ~」
変な夢を見たことは黙っておこう。心配をかけたくないし。朝の準備をチャチャっと終わらせて事務所へ行かなければ。
僕は探偵をしている……といってもまだひよっこだが。どうして探偵を始めたのかは別の機会にするとして、このテディベアをどうするかだよな。このまま家に置いておくのも怖いし、試しに事務所に持っていってみよう。所長さんに奇妙な夢についても相談したいし。何か手がかりになりそうなことがあるかもしれない。そう思ってバッグにテディベアと頼まれたファイルを入れた。
今日の予定をぐるぐると練りながら、玄関を開けると空は快晴。天気予報も一日中晴れなのだそうだ。