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【魔導院結界】伍
「あ」
ガチャリ。
不意に扉が開く。
「っ…?」
「ーーーッ」
リナーメルは、拘束されていた。
ルノアーーではなく、茶髪の男に。
「レヅサ…、ルィ…?」
掠れた声で、リナーメルが呟く。
リナーメルの腕は血に濡れていて、刃物のようや物が突き刺さっていた。
《魔抜の刃》。
刺しただけで対象の魔力や生命力を抜いていく禁忌の刃。
「やっぱり来ましたね〜?レベリアーの公爵レヅサ様〜?」
振り返ると、いつの間にかルノアが居た。
彼女はニヤリと笑みを浮かべて…、…片手で魔術片変換術の準備をしているらしい。
「こうなると、リナーメル様は要らないですね〜もう。…貴方を|殺《や》りますよ、レヅサ様?」
ルノアは淡々と続ける。
「困ったんですよ?私。ランという厄介な家来がいましたので…。まあ、今は眠ってますよ?
ーーーー永遠の眠りにね。」
それから、ルノアはしばらく高笑いを演じた。
狂気的な。
「ふぅ〜ん、出鱈目ですよ、人間以外の死なんて。…それに、嘘ですよね?」
余裕そうに話すレヅサをさらにルノアは笑う。
「あはははははは…__お腹痛い…っ!__…いくら大魔導士といえど、公爵といえど、超回復改は使えないでしょうよ〜?」
「君も人間のくせに、よくそんなことが言えますね」
レヅサはそれから小さく何かを詠唱して。
「キャっ!?」
ルノアの身体に、幻属性で造られた鎖が。
「公爵?間違いが酷過ぎますねルノア。僕はただの魔導士です。…王国の姫君はそちらのリナーメル様でしょう?」
「だったら…ッ!ーーー私が調べたのは誰なんです!!!?」
ルノアは半分泣きそうな顔で叫ぶ。
それを、レヅサは半笑いしている。
「贄灯の団の、リーダーじゃ無いですか?その人、読めない人だったみたいですし」
贄灯の団のリーダーは、とにかく冷静で。
男か女か分からないような背丈で、フードを深々と被っていて顔は見えなかった。
声のトーン的に…。
いや、若く高めだったが男っぽい。…という女性はいくらでもいるだろう。
リーダーは、魔力の腕が良かった。
自身の魔力を見せびらかして脅したり、とにかく良い盾にもなった。
「で、でも……。あの人と、レヅサ様の声は…似ていて…」
ルノアは、何かを理解しようとしていた。
「…僕の声に似ている他の方ではないので?」
ーーーー
「来ないのかい兄ちゃん?」
茶髪の男は、ルィに向かって挑発している。
しかし、ルィは何の表情も見せず。
無表情…だが、何故か楽しそうな顔に見える。
「おーい、聞いてまちゅかー? 勝負しよーぜ?俺最近魔術の腕磨いてねぇからさ〜?断ると殺すよ?この女の子。男は女を守るのが役目じゃないんですきゃ〜?」
リナーメルに刃を突き出して笑う。
「……そうだね」
ルィは仕方なく。
茶髪の男は、ルィを少し訝しむような顔で見る。
その瞬間、茶髪の男の動きがまるで静止画のように止まる。
ルィが詠唱したのは動封の呪。
「ーーッ!!?」
そして、次瞬きをすると、自分の腕で拘束していたはずのリナーメルは消えていた。
不意に横を向くと、レヅサがリナーメルに声を掛けている。
「お前ァ騙したなぁ!?」
「『…』」
ルィは黙ったまま。
茶髪の男は、何かを察して素早く魔力を手に集中させ防御の体勢をとる。
強い風が吹いた。
室内にいる為、自然現象で風が吹くことはないはずだ。
…ということは。
その前に、風は茶髪の男の腕を傷付ける。
切り傷が増えていく。
ルィは相変わらず無表情、でもどこか楽しそうな。
今思ったが、その表情…面影には、見覚えがあった。
「……りー……?」
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何だこの話。
ちょっといいとこ入ったな?って思ったら(泣)
終わるし!!!
「オレもう終電電車まで間に合わないかも!!」
「私も…続きが気になって…」
気になるな、気持ちを押し殺せ。
その気持ちは偽りの虚構で出来ている。
…愛着湧いてきた。
次も続けようかな