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不思議な絵画とお客様 4
4話。
期間空きましたけどよろしくお願いします。
やっば…雨降ってきた…。傘持ってないのに…。びしょびしょになっちゃう…。
「わっ…ごめんなさい」
向かってくる人に気付かずにぶつかってしまった。謝って顔を上げる。
「…あぁ…いえ、こちらこそ不注意で…」
…でかいな。ぼくもそれなりに背は高いはずなんだけど。
「あ…濡れると風邪引きますよ。もし良ければ、うちの店で雨宿りしていきますか?」
「え、良いんですか?」
「はい…」
これが、事の始まり。
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「いやー、もう散々…欲しいものはなかったし、雨に降られるし…」
「…大変でしたね」
「ほんと!助けてくれてありがとうございました」
今日運悪いのかな。雨やむまで…曲作るか…。…紙持ってきてなかった。ほんと運悪いな。ここ…古本屋だよね。紙あるかな…。
「すみません、えーっと…お名前は?」
「…え?…夜屋怜です」
「夜屋さん!ぼくは笹氣萌華です!」
自己紹介になっちゃった。
「…萌華さん、ですね」
「はい!で、あの…紙ってあります?」
「…紙、ですか?…それは、感熱紙とかそう言う特殊な物ではないですかね…?」
逆にこの状態で感熱紙使うってのもおかしいけど。夜屋さん面白いな。
「普通のコピー用紙とか、何かの裏紙でも大丈夫です!」
「…あぁ。ありますよ。持って来ますね」
「ありがとうございます!」
感熱紙で何をするって言うんだこの人はってなっちゃうな。
「どうぞ」
…うん。差し出されたのはコピー用紙の束。分厚いなぁ…。
「…足りませんでした?」
「いや、足ります!ありがとうございます!」
天然かな?まぁ、良いか。曲作れれば。
「…~♪」
簡単な曲なら1分で作れる。ぼくの特技でもあるんだよね。
…お母さんに、お父さんに曲、弾いて欲しかったなぁ…。2人はいないんだから、曲作る意味なんて、あるのかな…。
いや、ある!あるからこうやって特技になったんだ!
でも…なぁ…。
「…お母さん、お父さん…」
やっぱり、弾いて欲しくて作曲家って言う道を選んだんだもんなぁ…。
「…あの」
「はい?」
隣に夜屋さんが立っていた。お皿を持って。
「これ…もし良ければ食べてください。作ってみたんですけど…」
お皿の上に乗っていたのはコーヒーと一口大のチーズケーキ。
「美味しそ~…!いただきます!」
見た目通り美味しい。店で売っている物と大差がない。
「めっちゃ美味しいです!ありがとうございます!」
「いえいえ…美味しいなら良かったです」
チーズケーキ作れるの?この人。すごいな。天然っぽくてお菓子作れるとか…すごいな。あとそんなに重くないからいっぱい食べられそう。
「みゃー」
「わっ」
白い猫が足元にいた。どこから現れたのだろう。奥にいたのか。
「…あ、こらワイス」
「へぇ…ワイスって言うんですね!」
可愛い。人懐っこいなぁ…。
「えぇ…あぁ、そうだ。少し、お時間ありますか?」
「へ?時間ですか?ありますけど…」
どうしてそんなことを聞くんだろうか。
「…そうですか。1つ、お願いと言うか提案、なんですけど。話し相手になって貰えません?」
「…夜屋さんのですか?」
この人暇なのか…?古本屋ってお客入らなそうなイメージあるけど…失礼か。
「あぁ、いえ…僕ではなくて…見てもらった方が、早いですかね」
そう言われ奥の部屋へ案内される。そこスタッフオンリーとかじゃないの?
「ナーノ、お客様だよ」
「あら、本当?」
壁の方から、女の人の声が聞こえる。その声の元をたどると、1枚の絵画があった。肖像画、なのだろうか。
「お話してくださるの?嬉しいわ」
にこっと絵画の女性が笑った。…確かに、笑顔になったのだ。
「えっ」
「どうしたの?」
夜屋さんの方を見ても平然としている。え、驚いてるのぼくだけですか?
「あぁ、私は動くのよ。ふふ、自己紹介が遅れちゃったわね。私は絵画よ。名前の無い、ただの絵画。ねぇ、貴方のお名前も教えて頂戴?」
「えっ…?えっと、笹氣萌華です。…なんて呼べばいいですか?」
「好きに呼んで頂戴。貴方は私になんて名前を付けるかしら?」
…黒いドレスを着た、青緑の瞳が印象的な女性。…黒いドレス…。
「じゃあ…クロさん、でどうですか?」
「あら、良いわね。気に入ったわ!」
良かった。安直すぎるかな、とは思ったけど…。
「ふふ、じゃあ何をお話しする?」
「うーん…」
何を、って言われても急に話題のテーマが出てこない…。
「あら、ワイス。そこにいたの?」
ワイス、と言うとさっきの白猫か?ワイスはみゃお、と返事をするように鳴いた。次の瞬間には絵の中にワイスがいた。
「えっ」
「あぁ、ごめんなさいね。ワイスは元々、私のお友達なの」
「へぇ…」
色々不思議なこともあるものだなぁ…。でも、楽しいから良いか。
「うふふ、貴方と喋っていると楽しいわね。いっぱい驚いてくれる」
「普通じゃないですかね…?」
それからいっぱい話していた。ぼくのこと、最近あった楽しかったこと、それからぼくのちょっとした悩み。悪夢を見にくくするにはリラックスしてから寝たり、ストレスの解消をしたりすると良いんだって。良いこと聞いたな、なんて思いながら窓の方を見ると、もう外は晴れて、空がオレンジ色に染まりかけていた。
「あら…もうこんな時間なのね。とっても楽しかったわ。ありがとう、モモカ」
そう言って、クロさんは微笑んだ。その笑顔はなんだか寂しそうにも見えた。
「ううん。ねぇ、クロさん!いつかぼくが作った曲聞いてね!」
「えぇ、もちろん。待っているわね」
「じゃあ、今日は帰ります。ありがとうございました、クロさん!夜屋さん!」
「…またのご来店をお待ちしております」
店を出て、空を見上げる。オレンジ色の空に腕を伸ばして、思いっきり伸びをする。また、ここに来よう。そして、自分が作った曲を、クロさんと夜屋さんに聞いてもらおう。
新たな目標が生まれた瞬間だった。
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後日談(おまけ?短い)
「夜屋さん!お菓子ください!」
それから、店の前を通り過ぎると作曲の片手間に、怜のお菓子が食べたいとねだる萌華の姿がよく見られたと言う。
なんか…ギャグ……?
迷走すると長くなります。よろしくお願いします(?)
書くの楽しくなっちゃったんです(言い訳)
ちょっと思ってたのと違ったらすみません…。