公開中
天使だった。
朝、目が覚めてカーテンを開ける。
窓から差し込む光に照らされながら、
目を擦る。
時計の針は6:30を指していた。
少し寝坊してしまった。
日課である夜の散歩が長引いたせいだろうか。
そんなことを考えながら、
着ていた寝巻きを脱いで制服へと着替える。
この制服に腕を通すのは何度目だろうか。
毎朝同じような事を考え、
同じような行動を起こす。
キッチンへ行くと昨日買っておいた菓子パンが目に入る。
それを手に取って口の中に入れる。
このパンだっていつもと同じ味。
パンを食べて支度をしたら8時まであと1時間。
リュックを背負って靴を履いて家を出た。
向かうのは学校。
この時間だと人はいない。
そして、私の通う学校は屋上が開放されている。
そこで授業時間まで時間を潰している。
家から数分、割と近所にあるその高校には
予想通りまだ誰もいなかった。
屋上へと繋がる階段を登る。
ドアを開ける。
そこには、1人、
ただ1人柵に寄りかかっている女子生徒がいた。
どうやら歌を歌っているみたいだった。
私には気づいていないみたいで、歌を歌うのを続ける。
とても、とても綺麗な歌声だった。
こんな、アニメみたいな現象が起こること自体
おかしいけれど。
そんなことは全て無視をして目の前にいる子の歌に集中する。
歌い終わってその子は坂を飛び越えた。
飛び越えた。
ふわっと、小さくジャンプして飛び越えた。
途端に周りの空気が凍てついてその子の周りを氷がふわふわ漂う。
さっきまで来ていた制服も、高校生くらいの容姿も、全て変わっていた。
目の前にいるのは天使だった。
純白の綺麗な羽に、白い服。
とても、とても美しかった。
それと同時に、どこか哀らしいような
マイナスな雰囲気も醸し出している。
「連れてって」
自然と口から漏れたそんな言葉。
その天使はようやく私に気付いたようで、
目を見開く。
どうやら見えていることを不思議に思ったようだ。
「それで後悔しない?」
その子はふわふわ浮いたままそう言った。
なんの変哲もないこの世界にいるなら、
綺麗な世界だけれど、憎くて、悲しくて、
どこか汚れているこの世界にいるよりは。
「それでもいいよ。君といたい。」
その子はふわっと飛んでこちらに来た。
と、次の瞬間私の手を引いた。
曇った空から光が差して、天使の梯子ができた。
そこに登っていく。
私は天使に身を任せて空へと登っていった。
IMAWANOKIWA/いよわ様