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寄り道~みんなdeカラオケ~
「かなみ~ん、歌ってる?歌いなよ、楽しいから」
タンブリンをリズムにあわせて叩く私に向かって彼女はそう言った。
「えーっ私、音痴だよ? 」
「音痴でも歌えばいーんだよ! 」
「そうだよ歌いなよ~」
もう1人にもいわれてしまう始末。
こんな風に言われると歌うしかないか……
「ねぇ、帰りにカラオケ行かない?」
ことの発端はこの一言だった。
どうも、かなみんこと|野田 奏海《のだ かなみ》です。
午前授業で午後から休み、終礼のまえにそう誘われた。正直、私は人に聴かせられるような歌なんて歌えない。それどころかカラオケなんて家族で1回しか行ったことないのだ。それなのにどうして彼女は誘ってくれたんだろう? 疑問符がもくもくと頭の中でぐるぐるしている。
彼女は|保倉 芽吹《ほくら めぶき》こと芽吹ちゃん。高校の入学式で初めて話して何故か秒できた友達。
「どう? 行く? りんりんもいるけど」
りんりんとは|渡津 鈴《わたつ りん》こと鈴ちゃん。芽吹ちゃんと同じく何故か秒で友達になった。
仲良し3人組が揃ってしまっては断るのもしのびない
「分かった、行く」
こうして仲良し3人組はカラオケに行くことになった。母さんにはチャットで連絡を取り行く許可は取ってある。
カラオケに行ったはいいが、何を歌えばいいか分かんないし、先に2人が歌い出しちゃったからタンブリンを叩く。そして、冒頭に戻るのであった。
「何歌えばいいか分かんないしどうしよう」
「そーいえば、前カラオケ来たとき何歌ったの?」
「えーと、『映画の主役になれたら』かな~」
「いいじゃん、それ歌いなよ」
タブレットを操作しながらマイクを渡されとうとう曲が始まってしまった。
こうなれば歌うしかない。
「~|物語《ストーリー》の線をなぞる、日常のワンシーンみたいな、普通を混ぜこんで、映る正解はどれだろう~」
ひと通り歌いきる。音痴がどうかは別として歌うのは嫌いじゃない。
「そこまで音痴ではないと思うけどな~」
「そうかな~? 」
褒められてる気がしてお世辞でもちょっと嬉しい。
鈴ちゃんがいつの間にか注文してくれた烏龍茶とナゲットやフライドポテトがきたので食べながらわちゃわちゃと談笑していた。
「他に誰か歌う? 」
「りんりんももっと歌いなよ」
「そうならうちもまた歌おうかな~」
鈴ちゃんはタブレットを操作して
『恋する琥珀糖』を歌い始めた。
鈴ちゃんが恋愛ソング歌うのってなんか意外だなと思いながら聴いている。
「~君の姿を思う度、砂糖が溶けるぐらいに熱くなる。そんな想いを琥珀糖と一緒に、受け取ってくれるかな?~」
歌唱力がありすぎて引き込まれてしまいそうな歌だった。
「鈴ちゃんスッゴイ上手いじゃん! 」
「それほどでも~? 」
「りんりんって歌の練習とかってしてんの? 」
「カラオケに行くことか多いからかな~多分。あと、好きな曲だからスゴく聴きまくったからかも」
好きな曲聴きまくるのはすごく分かる。どうしてそんなに歌唱力があるんだろう。羨ましいな~。
「次は順番的にアタシかな? 」
「何歌うの? 」
「そりゃ~アタシの十八番でしょ! 」
芽吹ちゃんの十八番って何? って聞こうとしたらもう歌い始めてしまった。行動に移すのがとても早い。
部屋の画面に出たのは有名なアニソン
『トリック・パレット』
『絵術師の|奇術《マジック》』の主題歌である
「~パレットの上にはどんな色がのってる? 描くキャンバスに思いがけないトリックを見抜いてみせて~」
個性的な歌声だけどやっぱり上手かった。この曲音程の高低差が激しいから歌うの難しいのに。
「芽吹ちゃんも上手いじゃん」
「まぁね~」
「時間もあるしジャンジャン歌お! 」
なんだかんだで私も思いっきり歌った。歌うのはとても楽しかった。
盛り上がって思った以上に時間が経つのが早かった。気付けは夕方。そろそろ帰らないといけない。
「そろそろ帰らないと」
「確かに、時間経つの早すぎ~」
「それな」「わかる」
「それじゃあ、帰りますか」
片付けをして会計に行く。学生料金でどうにかなった。割り勘をして支払う。
「明日は休みだね~」
「そっかー休みだったね~」
「休み何する? 」
「いろいろ」「ゲーム」
「2人らしいっちゃらしいね」
「じゃあまた、学校で」
「バイバイ」「それじゃ」
駅で解散し各々の帰り道を辿る。
今度1人でカラオケに行って練習しようかな。またいつか3人で行ったときにあっといわせてやりたい。まず歌いたい曲の歌詞覚えなきゃ。
このお話で出てきた曲の歌詞は自分で考えたオリジナルです。(既存曲ではないはず……)初めてめてこのシリーズで女子が出てきましたね~。他にもシリーズでいろんなキャラが出る予定なのでこうご期待ください。
お読みいただきありがとうございました。