魔物が悪なんて誰が言いました？#18

マラ視点 裏から入るカリー達と別れ、一軒家の前に並ぶ。 クリス「ディー君」 ディーア「あぁ、開けるぞ」 警戒して扉の前に立ってドアノブに手をかける。 ガチャ マラ「…ん？鍵が開いてるのか？」 てっきり鍵は閉められているものだと思っていたが……。 ディーア「中も誰もいないっぽいな……」 ジェリア「気を付けてよ、ディーア」 イフリート「大分警備が薄いようだけど、絶好の機会な事には違いないね」 そのままディーアを先頭に中へ入り、探索を始める。 クリス「怪しそうなところは無かったよ」 カナタ「うーん…普通の一軒家やけど……」 寝室や台所、風呂や居間、荷物置き場までそろっていて、カナタの言う通り、一見すれば普通の一軒家だ。 ディーア「どうやらそうでは無さそうだ」 マラ「やはり、ディーアもそう思うか」 ディーア「ああ、どう考えてもおかしい点がある」 カナタ「ん…？………あー」 ディーアが気付いたあとに、カナタもこの家の違和感に気付いていた様子。 マラ「遠くとはいえ、歩けばすぐ小屋があるのに、なぜ荷物置き場が必要になるんだ？」 小屋にも置ける場所が無くなったのかもしれないが、この家には寝室は一つ、住めるのは少なくとも二人だろう。 しかし、荷物置き場には既に二人以上のものが置かれている。 クリス「……！あ、そっか！」 ジェリア「なるほどね…」 イフリート「きっと小屋があっても、この家には荷物置き場を作らなければいけない理由があった……」 カナタ「ほんなら、もう一回あの荷物置き場に行くか」 ジェリア「うん」 荷物置き場 ディーア「……やっぱりな」 マラ「見つかったか？」 ディーア「あぁ、狙い敵中だな」 たくさんの荷物をどかすと、そこには地下につながる階段があった。 ここを隠すための荷物置き場か。 ジェリア「…行くよ」 クリス「うん…」 俺達は少し暗い階段を下って行った。 --- イフリート「暗いし汚いし……掃除してないのかな？」 カナタ「それな、家くらい掃除しろや……」 クリス「……見張りいる」 ジェリア「そうみたいだね……」 俺達は咄嗟に見張りの死角に隠れて様子をうかがう。 「ふわ～あ、ねみ～」 マラ「…………」 この感じだと、見張りは一人のようだ。 ここは強行突破してもよさそうだな……。 マラ「俺が行く」 ディーア「…わかった」 俺は歩き出し、見張りへと近づく。 「ん？なんだ貴様＿＿」 マラ「｜絶対服従《シタガエ》」 相手の話に聞く耳を持たず、能力を発動する。 「…………」 俺の絶対服従は相手を従わせることが出来る。 今回は手短に終わらせたいし、あまり騒ぎを立てるわけにはいかないからな。 クリス「流石酒呑童子って言われてるだけあるね～」 マラ「そんなに言われる程ではないさ」 さて、こいつはピアの居場所を知っているか………。 マラ「白髪の女の子の居場所を知っているか？」 「……………」 マラ「…………」 答えない……つまりは知らないということか。 マラ「何も知らないようだ。とにかく先に＿＿」 「セイル…………様は……探して………あの方に…………処分……を……」 ディーア「………何？」 マラ「今なんと言った？」 「……………」 マラ「答えろ！！」 「ｯｯ…………」 くっそ……絶対服従が効かないとは………精神はそれなりに強靭なんだ。 こいつは今、処分と言った。 考えたくはないが、ピアの事も可能性としてあるだろう。 カナタ「おい！！」 「ｯｯ……セイ＿＿ぐｯｯ！？」 クリス「！なに！？急にどうしたの！？」 急に苦しみだしたかと思えば、口から泡を出し倒れた。 イフリート「……………亡くなってるね」 ジェリア「誰も攻撃してないのに……」 俺の絶対服従に即死性能はない。 なら、一体誰だ………？ ディーア「………考えていても仕方ない」 クリス「ディー君……？」 ディーア「そのあの方というのが誰かは知らんが、先にピアを見つけ助ければいい」 マラ「…そうだな。先に進もう」 ジェリア「道は………こっちに行こう」 イフリート「分かるの？」 ジェリア「先に眷属に行かせた。人の気配が多いんだ」 ディーア「分かった。行くぞ」 マラ「あぁ」 俺達は一つの死体を置いて、ジェリアのあとについて行った。