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SFな幻影夢
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いつものように階段を駆けあがり、君の待つ自室へ僕は向かう。
そして、僕は君に泣きつくのだ。
青く空のような優しさに包まれながら、喉の奥に押し込んだ嗚咽を引っ張り出す。
それを君は花のように笑って頭を撫でながら僕に言葉を返す。
やがて、僕を宥めながらも白く常に膨らんだ腹部のポケットに手を突っ込んで、とても便利で空想的な夢のような道具を手渡してくる。
僕をその青い狸のような猫の君の話に首を縦に振りながら、道具を活用しようとする。
その話が終わった頃に僕は部屋を飛び出すように出ていく。
後ろで君の怒る声と、赤い首輪についた丸い鈴が響いた。
その変わり映えのない日常は僕に安楽をもたらし、幻想の渦へと呑み込まれてゆく。
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いつものように病室へ入り、貴方の待つ部屋へ私は向かう。
そして、私は起きない貴方に泣きつくのだ。
黄色い向日葵のような優しさに包まれながら、喉の奥に押し込んだ嗚咽を漏らす。
それを貴方は穏やかな寝顔で眠ったまま、決して私に言葉を返さない。
やがて、私を宥める医師が白く常に膨らんだ腰のポケットに手を突っ込んで、幾度となく言ってきたはずの言葉を伝えてくる。
私はその白い悪魔のような医師の話に首を横に振りながら、懸命に貴方へ言葉を投げ掛ける。
その言葉が薄く小さくなるにつれ、医師は逃げるように病室を出ていく。
正面に貴方の安らかな寝息と、隣に立ちっぱなしの機械が激しく鳴り響いた。
その変わり映えのない日常は私に苦痛をもたらし、現存の渦へと呑み込まれてゆく。
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